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バターサンドとのWA
共通テストの翌日、新聞に掲載される問題を、毎年なんとなく眺める。
月日とともに「かろうじて解ける」から 「かろうじて見える」に変化してきた。
字が小さすぎやしないかね。
センター試験から共通テストに名前が変わっても、国語の問題構成はまったく変わっていない。
「傍線部に該当する漢字を含むものを選べ」という現代文冒頭のお決まりの問題は、目を細めながらなんとか突破。
同じ読みでこんなに複数の漢字が存在するのか、とあらためて辟易する。
粉飾決算のフンが紛ではなく粉なのは、じつに紛らわしい。
受験生でなくても、頭を使ったら糖分の補給が必要だ。
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瓦せんべい発祥の店、神戸の老舗和菓子屋・亀井堂総本店が手がけるバターサンド《TONOWA(とのわ)》。
常設店は神戸市内のみだが、数年前から各地の催事で見かけるようになった。
少々不思議なブランド名が気になっていたし、たいていはオリーブと、淡路島なるとオレンジが並んでいる。
先日立ち寄った東京駅の催事では、いちじくと青森りんごも並んでいたので、迷わず手を伸ばした。
こういう柄のテーブルクロスやブランケットがあったら思わず買ってしまいそうな、やさしく上品なパッケージデザイン。
ちょっとした進物にも使えそうな体裁である。
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淡路島なるとオレンジ、神戸いちじく、青森りんごを選んだ。
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ピアノの鍵盤よりひとまわり大きいくらいのサブレに、ごろごろ具入りのクリームがぽってりとサンドされている。
上のサブレはちょこんと腰掛けている、という感じだ。
ひとつひとつ厚紙のトレーに乗せられており、真ん中にキリトリ線が入っているので、手を汚さずに食べられるのがとてもいい。
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しっとりさっくりのサブレと、食感のあるしっかりしたクリームは、どの味も食べ応えがあった。
淡路島なるとオレンジは、300年前から淡路島で生育され、今ではほとんど市場に並んでいない幻のオレンジだという。
そのピールと、ほのかにシナモンとスターアニスが効いたチョコレート風味のクリームは、甘すぎずキレのよい爽やかさ。
神戸いちじくは、神戸市西区で栽培されているが、ほとんどが市内で消費されているという。
ドライではなく、荒くカットされた蜜漬けのいちじくが入っているので、やわらかくみずみずしい甘さ。
ホワイトチョコレートクリームの甘さがそれを引き立てた。
青森りんごは、2023年末に発売されたばかり。
青森県産りんごのプレザーブだけでなく、りんごのお酒も使われているという。
ホワイトチョコレートの甘みと、北海道産バターの濃厚さに負けないりんごの爽やかさがはじける。
ところで、一番人気はオリーブなのだそうだ。
圧倒的に小豆島のイメージが強いし、なぜ果物シリーズのなかにオリーブが?と思い、ホームページを見てみた。
いわく、日本で初めてオリーブの栽培に成功したのが神戸だそうだ。
その知られざる事実から、この商品の開発は始まったのだとか。
オリーブといえば、平和の象徴。
だから《TONOWA》=との和、なのか!?と思い読み進めたら、「わ」の一文字に込めている思いと、掛けている意味の多さに驚いた。
まず「和」。
なかよくする、合わせる、まぜるといった意味合いを持つ漢字。
150年前の神戸で、せんべいと欧風菓子を結びつけるという和魂洋才の精神で始まった亀井堂。
その系譜から誕生したのがこのブランドだという。
そして、神戸で日本で初めてオリーブが栽培されたという歴史をオマージュするという、今と昔の融合。
平和の和、については特に言及がなく、深読みだったようだ。
パッケージが和紙っぽいのもなにか掛けているのかと思ったが、たぶん深読みだ。
つぎに、「環」。
めぐる、めぐらす、輪のかたちを意味する漢字。
オリーブや淡路島なるとオレンジのほかにも、丹波栗や瀬戸内レモン、めっきり生産量が減った女峰いちごがある。
産地とひとびとを輪のようにつなぐ、という思いがあるのだそうだ。
遠く離れた産地の自慢の逸品を、味覚でめぐることができる、という意味も勝手に付け足しておきたい。
最後に、「話」。
淡路島なるとオレンジは、亀井堂の5代目の方が実際に産地に赴き、生産者と対話をしてその魅力を再発見している。
《TONOWA》というシンプルな響きに、「との和」「との環(輪)」「との話」と幾重もの物語を重ねたバターサンドである。
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同じ読みで複数の漢字が存在し、知っておくべき理由は、こういうところにあるのかもしれない。
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