このnoteについて/フェムテックとは/FemHealthとは
このnoteでは、世界のフェムテック・女性ヘルスケア関連の記事や最新ニュースを中心に情報発信していきます。
💡フェムテックとは?
フェムテックとは、テクノロジーを用いて女性の健康課題を解決しようとする製品やサービスを指します。この言葉は、"Female(女性)" と "Technology(テクノロジー)" を組み合わせ、ドイツの月経管理アプリClueの創業者であるIda Tinによって造語されました。
月経、生殖医療、妊娠・出産、更年期など、女性特有の健康課題は数多く存在します。加えて、男女両方に関係があるけれど女性に多い疾患(例えば、アルツハイマー病は男性よりも女性に多いです)、症状の現れ方に性差のある疾患もあります。
しかし、女性の健康課題はこれまで十分に注目されず、研究投資も不十分でした。医療(に限らず現代社会のあらゆる分野)は、白人のシスジェンダー男性を規範として発展してきた経緯があります。
さらに、社会に存在するジェンダーギャップを背景として、投資家や政治家などといった意思決定者の多くを男性が占めており、彼らが女性特有の健康課題について深く理解していないために、これらの課題を解決するソリューションの必要性が十分に理解されてきませんでした。
あるいはもう少し日常レベルでは、月経や更年期についてオープンに話すのは難しいと感じる人も多いかもしれません。そのような状況を打破するための解決策として、フェムテックが注目を集めているのです。
ちなみに、フェムテックのさまざまな定義についてFemtech Community Japanの記事で説明されていますので、詳しくはそちらの記事に譲ります。
近年、フェムテックは成長市場として注目を集めています。Statistaによれば、2023年のフェムテックの市場規模は、全世界で520億米ドルに達し、2029年には1,170億米ドルに成長すると予測されています。
また、Fortune Business Insightsのレポートによれば、世界のフェムテック市場は2023年には67億米ドルで、2024年には78億米ドル、2032年には2962億米ドル規模にまで成長すると推測されています。
何をフェムテックに含めるかによって市場規模の数字は大きく変わりますが、いずれにしても市場規模が拡大しており、今後も拡大すると見込まれているのに間違いはなさそうです。
📌FemHealth Bridgeについて
FemHealth Bridgeは、日本と世界のフェムテック市場をつなぐ架け橋のような存在になることを目指しています。日本に海外のフェムテック・女性ヘルスケアトレンドを、海外に日本のフェムテック・女性ヘルスケアトレンドを伝えることで、フェムテック市場を活性化することをミッションとしています。
このnoteでは、日本のみなさんが世界のフェムテック・女性ヘルスケア事情について知ることができるように、世界のフェムテック・女性ヘルスケア関連の記事や最新ニュースを中心に情報を発信します。
筆者は日本在住で日本語を第一言語としているので、取り扱うニュースにはどうしても偏りが生まれてしまいますが、できる限りバランスをとり、グローバルな動向を把握できる記事を目指します。
筆者の言語的背景や、そもそもフェムテック企業がアメリカとイギリスに偏在している現状から、「グローバル」と言っても英米が中心となるものの、非英語圏の出来事に関しても可能な限りお伝えできればと思っています。
補足:FemHealthとは
FemHealthは、フェムテック・ヘルスケア分野で「女性の健康」を意味して使われることがある、(おそらく)"Female(女性)" と "Health(健康)" を組み合わせて作られた単語です。フェムテックに関するリサーチレポートやコンサルティングサービスなどを提供するFemHealth Insightsなどがこの用語を使用しています。
FemHealth Bridgeは、「フェムテック」より広範囲に女性のヘルスケアやウェルビーイングに関連する話題を扱うために、FemHealthの語を使用しています。
何が「テック」とされるのかは曖昧です。例えば、フェムテックとして取り上げられる吸水ショーツやデリケートケア用品は「テック」なのか?と話題になりますが、一方でそれらが健康やウェルビーイングの向上のための選択肢を増やしたのも間違いないでしょう。
また、必ずしもテクノロジーを取り入れていなくても、ヘルスケアやウェルビーイングに関係する重要なトレンドもあります。
以上の理由から、"FemHealth" がnoteの内容をもっとも的確に表現する言葉であると判断しました。
もうひとつ補足:言葉の使用について
ところで、「女性の健康」を言い表す際に最も一般的な言葉は "women's health" ですが、なぜ耳慣れない "FemHealth" を使うのでしょうか? この単語が使われる経緯について明確に説明している文章を見つけることができなかったため筆者の推測になってしまうのですが、「女性の健康課題」に関係する人が多様であることが背景にあると考えられます。(もし、"FemHealth" が使われる理由について詳しい方がいらっしゃれば、ご教示いただけると幸いです。)
まず、"women" は、社会・文化的な性別 (gender) が女性である人を指して使われます。「女性の権利」と言う場合の「女性」はwomenです。
一方、"female" は、身体的特徴に基づいて割り当てられる性別(sex; 身体の性・生物学的性と呼ばれたりもする)が女である人を指します。
genderとsexは必ずしも一致しません(genderとsexが一致する人がシスジェンダー、一致しない人がトランスジェンダーと呼ばれます)。
「女性の健康課題 (women's health issues) 」と簡単に呼ばれることも多い、フェムテックが対象とする健康課題を経験するのは女性 (women) に限りません。例えば、月経を例にとってみると、トランスジェンダー男性やノンバイナリーの人々をはじめとする、ジェンダー・アイデンティティが女性ではない人々にも生理はあります。一方で、トランスジェンダー女性や、子宮を摘出した人など、女性でも月経や月経関連の健康問題とは無関係の人もいます。
このように、女性 (= woman) であることと「女性の健康課題」とされるものを経験することは、必ずしも一致しません。それに対して、身体的特徴に基づいた性別 (sex) は出生時に外性器の特徴に基づいて割り当てられる、生物学的特徴と関係の深いものです。そのため、身体的特徴に基づいた性別が女 (= female) であることと「女性の健康課題」を経験することは重なりが大きそうです(ただし、こちらも完全には一致しません)。
こうした背景からFemHealthという言葉が使われているのではないか、と筆者は推測しています。
ちなみに、シスジェンダー女性のみならず、彼女たちと同様の健康課題を抱えるノンバイナリーやトランスジェンダーの人々を包摂することを目的として、Rock Healthが "women+ health" という単語を造語したのですが、残念ながらほとんど普及していないようです。
追記:
一方で、社会・文化的な性別 (gender) を理由とした健康課題が存在するのも確かです。食習慣や運動習慣、ストレスなどは健康を左右しますが、習慣やストレスの原因(労働環境や育児・介護など)はジェンダーに基づいて期待される役割によって異なる傾向があります。(例えば、男性のほうが喫煙率は高いですし、女性は育児や介護の担い手になることが多いです。)「男らしさ」を重視する男性は、その「男らしさ」によって相談や感情の表出がしにくく、メンタルヘルスに問題を抱えやすいです。あるいは、医療の場において、女性は感情的であるというステレオタイプによって、女性は痛みを大げさに訴えていると捉えられ、結果として治療までにより長い時間待たされるとする研究結果もあります。
また、「(生物学的)女性の健康課題」を社会的文脈に位置付けるならば、(生物学的)女性の生殖の健康や権利が蔑ろにされる(例:日本では低用量ピルの承認が遅れたのに対し、勃起不全治療薬のバイアグラの承認は迅速でした)ことや、前述した「意思決定者の多くを占める男性が女性の健康課題を理解しない」ということも、社会・文化的な性別 (gender) に基づく問題です。
「フェムテック」が対象とするものはfemale(生物学的女性)の健康ですが、women's health((社会的性が)女性の健康)の話とも密接に関係します。そのため、このnoteでもジェンダーを理由とした健康課題を多く扱っています。
このnoteにおいては、文字数や簡潔さ、わかりやすさを優先し、主に「女性」という言葉を使用しますが、「女性のヘルスケアの課題」とされるものを経験する人が女性に限らないこと、そしてすべての女性が「女性の健康課題」を経験するとは限らないことを無視しているわけではありません。
また、より正確な言葉が使用できる文脈においては、引用の場合を除き、「生理のある人」「妊娠可能性のある人」など、対象となる人の範囲を正確に表せる言葉を使用します。
📎おわりに
本記事を最後までお読みいただきありがとうございました。
このnoteの内容は自由にご紹介・掲載いただけますが、出典・記事へのリンクをご明記ください。内容に関するお問い合わせや修正依頼は、メール(femhealth.bridge@gmail.com)までお願いいたします。
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