市場規模が小さくともニッチに攻めるべきか?
結論
ニッチ市場を攻めるべきだ。だが、無闇に進出するのではなく、既存事業の強みを定量的に評価し、競合状況や市場動向を慎重に分析した上で、自社が優位性を示せる領域を選定する必要がある。
市場選択のポイント
ニッチ市場を選定する際に考慮すべきポイントは以下の通りだ。
既存事業とのシナジー
自社の強みを活用できる市場を優先すべきだ。例えば、既存事業の技術力や製品の特徴を新たな形で活用することで、競争優位性を維持できる。市場規模と成長性
ニッチ市場は小規模でも急成長しているケースが多い。市場の成長率や潜在需要を調査し、長期的な収益ポテンシャルを評価する。競合分析
競合が少なくとも、自社が優位に立てない市場では戦えない。競合製品との違いや、自社が提供できる価値を明確化する必要がある。参入障壁の高さ
参入障壁が高い市場では競争が少ない可能性がある。ただし、その障壁を自社がクリアできるかどうかを事前に確認する必要がある。顧客ペルソナの明確化
ニッチ市場では、狭いターゲット層に向けた商品開発が求められる。顧客の具体的なニーズや行動パターンを深く理解することが不可欠だ。
先行事例
GoPro
初期参入市場
アクションスポーツ市場(サーフィン、スキー、スカイダイビングなど)。
市場選定理由
未開拓市場: 当時、大手カメラメーカーがアクションスポーツ分野に特化した製品を提供していなかったため、競合が少なかった。
顧客の特化ニーズ: アクションスポーツ愛好者が求める「防水性」「耐久性」「ハンズフリー撮影」などの特性を満たす製品が市場に存在していなかった。
コミュニティの力: 特定のスポーツ愛好者の間で口コミやレビューが広がりやすい環境だった。
市場拡大展開STEP
製品改良とラインナップ拡充: 初代GoProはシンプルな防水カメラだったが、その後、HD対応やワイヤレス機能を追加し、製品の競争力を強化。
ターゲット層の拡大: スポーツ愛好者から一般消費者(旅行者、家族、Vlogger)へとターゲットを広げた。
エコシステム構築: アクセサリーや専用アプリを開発し、顧客ロイヤルティを向上させた。
グローバル展開: 海外市場でのプロモーションを強化し、販売チャネルを拡大。
想定売上高推移
初期 (2004–2009): 年間売上数億円規模
ニッチ市場での成功により、徐々に知名度を拡大。
成長期 (2010–2014): 500億円規模へ成長
HDカメラとアクセサリーの売上増加に伴い、一般市場への進出が加速。
ピーク期 (2015–2017): 1,000億円以上
グローバル市場での大規模展開に成功。
Dyson
初期参入市場
高価格帯コードレス掃除機市場
市場選定理由
未充足ニーズ: 従来の掃除機市場では、「吸引力」と「デザイン性」を両立した製品が不足していた。
プレミアム志向の市場: 高価格帯市場にはブランド価値を重視する消費者が多く、差別化しやすかった。
技術優位性: ダイソン独自のサイクロン技術による吸引力が他社製品を圧倒していた。
市場拡大展開STEP
製品改良: 初代製品の課題(バッテリー寿命や重量)を改善し、使いやすさを向上。
製品ライン拡張: コードレス掃除機以外にも空気清浄機、ドライヤーなどの新カテゴリへ進出。
プレミアムブランディング: スタイリッシュなデザインと高価格を維持し、ブランド価値を強化。
グローバル展開: 高所得層が多い市場(欧州、北米、アジアの都市部)を中心にプロモーションを展開。
想定売上高推移
初期 (1990年代後半–2000年初頭): 年間売上数十億円規模
英国市場を中心にコードレス掃除機が浸透。
成長期 (2005–2015): 数百億円規模へ成長
国際展開が加速し、掃除機市場での地位を確立。
ピーク期 (2016–現在): 1,000億円以上
空気清浄機や美容家電を加えた多角化戦略が成功。
ケーススタディ
冒頭のケースにおいて、具体的にどのように新商品開発を進めるかイメージしていく。
期間と検討プロセス
1. 調査フェーズ (0~3か月)
目的: ターゲット市場の選定とニーズの把握
活動内容
市場調査: 海外市場の動向や競合分析
顧客インタビュー: ターゲット顧客層(高所得者層)への聞き取り
自社リソース評価: 技術、ブランド力、過去の成功事例の分析
成果物
ターゲット市場レポート(例: 欧州高所得層向け、ギフト用高級食器市場)
プロダクトコンセプト草案
2. コンセプト確定・試作フェーズ (4~9か月)
目的: プロダクトコンセプトの具体化と試作品の作成
活動内容
デザインプロトタイプの作成(外部デザイナーを活用)
素材選定と試作品の製造(国内陶器職人と協力)
高価格帯に見合うパッケージングの設計
成果物
試作品(3~5パターン)
コスト構造分析レポート
初期マーケティングメッセージ
3. マーケティング準備・最終製品化フェーズ (10~15か月)
目的: 商品の最終調整とマーケティング施策の実行準備
活動内容
海外展示会への出展準備
ブランドロゴ、ストーリーブックの作成(例: 「日本の伝統とモダンデザインの融合」)
小規模のターゲット市場でのテスト販売
成果物
完成品(製造ロット1,000個)
マーケティングプラン(SNS広告、展示会戦略、ターゲット国でのPRイベント計画)
初期流通契約
4. ローンチフェーズ (16~18か月)
目的: 商品の市場投入と初期フィードバックの収集
活動内容
展示会での正式発表
海外ECサイトや高級百貨店での販売開始
初期顧客レビューの収集
成果物
初月売上レポート
顧客フィードバックに基づく改善案
人員構成
社内メンバー
プロジェクトマネージャー (1名)
全体スケジュールと予算管理
社長への定期報告
マーケティング担当 (1名)
海外市場の調査と展示会の出展準備
ブランドストーリーの策定
生産管理担当 (1名)
試作品製造の監督
本製品の製造工程管理
外部リソース
市場調査会社
初期市場調査を委託
デザイナー
ハイエンドパッケージの製作
マーケティング・物流パートナー
海外輸送と販売ネットワークの確保
データアナリスト
ECサイトやSNSマーケティングのデータ蓄積・分析
ポイント
5,000万円の予算は限られているため、特にデザインとデータにおいて外部リソースを効率的に活用する必要がある。
試作品製造や展示会出展の段階で初期フィードバックを積極的に収集し、方向修正を柔軟に行うことが成功の鍵となる。
最終的には、自社の強みである「日本製陶器の品質」と「高級感」を最大限活かした商品で、競合との差別化を図るべきだ。
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いかがだっただろうか。
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ではまた次回のコンテンツで。