岸恵子著(2005)『私のパリ 私のフランス』株式会社講談社
パリの街を散策した気分に
わたしは何故かNHKのBS放送が始まった頃に、欧州からの時事レポートを岸さんがやられていたのを見てからの岸恵子ファンです。「ウイークエンド・パリ」という番組でした(本書の70ページにこの話題が触れられています)。わたしよりも上の世代だと、映画女優としての岸さんのファンの人が多いのだろうけど、その意味ではわたしは映画女優としての岸さんを知らない方です。
丁度パリ五輪も終わり、熱気が冷めた頃ですが、個人的にはパリには一度個人的に旅行で行きましたし、フランス人とは仕事でご一緒したこともあって、かれらのわがままぶりに大変な目にあったけど、それでも何故かパリの街並みは好きなんですね…
本書は岸さんのフォトを通じてパリの魅力が満載なエッセイ集です。パリの街並みの魅力と言っても、本書の出版が2005年ですので、少し前のパリの景色といったところかも知れません。
パリの街並みを、いきいきと颯爽と歩く岸さんのフォトも良いですし、そこに生活感もにじみ出ていて、あたかも自分がその場にいるような感覚を持ちながらエッセイを読んでいました。
38ページにもルーブル美術館の話が出てきますが、3大美術館も展示の量と質で圧倒しますね~♪ わたしはルーブル、エルミタージュは行きましたので、後は大英博物館のみです。
面白いのは62ページで、野外市場の話題での娘さんの言葉「ママン、マロニエの葉っぱが錆びてきたわ」と、めっぽう詩的なことを言ったという行で、流石にパリで育つと、なかなか粋な言葉が出てくるものなのかと、微笑ましく拝見させていただいた。なんとなくのパリの日常がイメージできる光景と、挿入されている楽しそうな写真でした。
140ページにリヨン駅の紹介がありますが、とても美しい駅ですね。わたしもリヨン駅からTGVに乗りましたが、当時はパリの公務員ストの時期で、本当に列車が動いてくれるのかヒヤヒヤしながらリヨン駅であたふたしたことを思い出しました。
本書を読み進めるにあたって、岸恵子という人はパリの街がとても似合う人なんだとあらためて感じ入った次第です。今は日本におられるそうですが、まだまだお元気でいてほしいですね。
フォトを通じてパリの街並みの空気感を感じられた良いひとときでした。