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マルクス・アウレリウス著、佐藤けんいち編訳(2021)『超訳 自省録 エッセンシャル版』株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン

自分を律するためにどう考えるか

『自省録』の原文は、本書の「はじめに」でも触れられている通りマルクス・アウレリウス本人のために書き綴られて「瞑想記録ノート」的な位置づけのものである。

そのご自身に向けた自分を律するために記録されたものが現代にも息づいていることに凄さを感じる。人間の内面に関することは、長い時代を経ても、そうそう変化しないものだと感じるとともに、重要な考え方は時代をも超えるものなのだと理解できる。

そして「人生は短く、いつ死ぬかわからない」故に現在を精一杯生きることが寛容であり、それが本書を貫くメッセージであると翻訳者も述べている。

本書の最初の言葉は「時は過ぎ去り二度と戻ってこない」から始まる。個人的には大病を患ったことがあり、現在もその後遺症に悩んでいるが、五体満足の日々は流石に戻っては来ない。だからこそ時間が貴重であり、わたしにとっては最初から考えさせられる言葉だった。今、この瞬間の重要性である。

本書ではそれら時間も俯瞰して「それでも一瞬のできごとにすぎない」と捉える。確かに人の寿命も宇宙から見ると小さく一瞬の出来事かも知れない。そして自分がコントロール出来るのは現在だけなのである。また未来を予見するには過去を知るという観点も必要であると説いている。

ユニークな観点としては「魂が自らをおとしめるとき」や「「内なる精神」よりも重要なものはない」、「しっかりするんだ、自分!」というタイトルの解説文が素晴らしい。ここでは解説までは触れないが、是非読んでみてほしい。

同様に「心を乱す原因は自分にある」、「印象だけで判断しない」、「あたえられた環境に適応せよ」などは、その言葉を変えて、色々な自己啓発本の多くにでてくるフレーズでもあろう… 人間の内面というのは、ギリシャが栄えた時代とそんなに変化するものではないようだ。

本書は最後に「五年生きても百年生きても本質はおなじだ」と説いている。その意味するところを考えながら、マルクス・アウレリウスの考えに同化する時間を共有した。

このシリーズは、仕事の昼休みの時間に丁度よい分量であり、短い時間に色々と頭のなかでイメージを働かせるための起点としても丁度よい。まだまだこのシリーズを読み進めてみよう。

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