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佐藤智恵/早川書房編集部編(2013)『世界最高峰ビジネススクールの「人生を変える言葉」』株式会社早川書房

簡潔にまとめられたビジネス訓

わたしも英国のビジネススクール出身だけど、在学中は本当に貴重な体験をしたと思ってます。皆さん感じるところは同じような気もしますが、そこで語られる人生訓などを上手くまとめられた本だと実感した次第。

一番最初に「嫌なことはやるな」という内容を持ってきたところがとても良いですね。時間を無駄にしないことって本当に重要です。わたしも時間が無駄にならないように色々と心がけているところです。

本書では、人生、成功と失敗、リーダーシップ、行動、思考、知恵という切り口で章立てしてあり、各々取り上げている内容を厳選してると思う。人生では夢や幸せ、仕事とプライベート等、取り上げている内容はユニークだが、なかでも「優等生になるな」という内容で、多くのことに優れている人は一つのことに突出している人に負けてしまうという記載はまさに人生訓でもあり、苦手なところを克服してまんべんなく教養を高めるよりも、他者よりも得意な分野や簡単にできてしまう自分の長所を伸ばした方が、結果的にお得な感じがする。

同様に成功と失敗ではリスクヘッジなど、リーダーシップでは成功の弊害、リーダーの条件、行動では即決について、人間とは自分の意見を正当化しようとするもので「何かおかしい」と思ったら立ち止まって考える勇気が必要と説いている。特に「保身を考えるな」という項目で、「教授は言う。正しいことを貫いた先には、時に困難が待ち受けることもある。もしかしたらキャリアの階段を転げ落ちあり、仕事を失ったりするかもしれない。それでもハーバードの卒業生は、勇気を持って不正を告発する義務がある。リーダーが自分の保身のために不正を見過ごしたら、その時点でその人はリーダーではなくなるのだ」と。実はわたしもこれで不正を警告しそれを正せなかった組織に嫌気がしてそのキャリアを捨てた経験があり、この文章には感動すら覚えた。また「すべてのリーダーシップの基本」という項目もリーダーたるものの清廉さを説いている。

思考については、物事は目に見えることが本質とは限らず、常に核心を追求し続けることが肝要と説く。また倫理的なジレンマなどにも触れている。知恵については、コアコンピタンスについて、答えが一般的であればあるほど、その企業は本当のコアコンピタンスを理解していない傾向にあるという。確かにわたしの経験でも本当にコアコンピタンスを理解しているのか疑うところも多いのが実情である。

本書はひとつの項目が見開きで完結しているため、仕事の休み時間などに読むには適していると思う。個人的には今かかわっているビジネススクールでも同じようなビジネス訓を出版したい思いがしたところである。

さて、それにしてもこの著者の本は、ご自身がコロンビアのMBA出身なのにハーバードを本題にした出版が多いのは気になるところ… 日本で出版するにはハーバードのネームバリューがある方が本としても売れるのかも知れない。この著者出身のコロンビアのMBAって、確か2年では無かった気がするので、MBAで論文までは書いていないのかも… とはいえコロンビアMBAに関する著作を出版すればよいのにとは思うものの、既にMBAそのものが、かつての人気を失い今はデザインスクールの台頭や生成AI等を含むサイエンスの方に人々の関心が流れて行ってるのが現状かも…

今はMBAを修了しても冷や飯を食っている人たちが多い時代になってきたのかも知れない。そんな時に思い出そう、もう一度人生を変える言葉を。

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