こんなところで。
世界から隔絶されたところで、
ひとり、私は溜め息している。
わかりあえないのではなく、
わかろうとしなかった。
わかってもらおうとするのではなく、
わかればよかっただけ。
喋るのをやめて、
黙ればよかった。
疲れ目に活字を飲ませ、
そのあとで、
痛みがひいた腹に、
酒を飲ませようとしている。
人の痛みがわかるように、
腹の痛みがわかればいいのに、
人の渇きがわかるように、
疲れ目のかわいた加減が、
わかるといいのに、
人は人の痛みがわかるような顔をして、
わからないことが多い。
「わかるよ」
などと軽々しく言わないことだ。
「わからないからおしえて」
とすぐに言おう。
実はみんな、
世界の果てにいる。
世界の果てで、
途方に暮れる。
途方に暮れながら、
道をさがしている。
ここが本当に果てなのか、
たしかめながら、
またあるく。
私は今、
溜め息している。
ひとり、
こんなところで。