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茜色のグラデーション⑥

第十二話

(ユリ)

気づくとそこに、君がいた。

「デザート、何か食べますか?」

君はそう聞いたけれど、私は今にも帰りたい。あの子たちが私に気がつく前に。この席からは見えないけれど、早くこの場所を去りたかった。

「お小遣い足りなくなるし、もう帰るから大丈夫…」

そう答えると、俺が奢るからと言う。その時、カランと音が鳴り、誰かが出ていくのが見えた。

あっ、と合点がいく。今出て行ったら、見えるのか。

そして君がよく気づく人だということもあの時から知っていた。私の考えがバレていたのかと思うと恥ずかしかったけれど、同時に嬉しくも思う。

気づくけど、心の奥に触れないでいてくれる。
少しこの居心地の良さの理由がわかった気がした。

黒糖プリンがおすすめされている卓上メニューがふと目に入る。カフェでは今まで一度も食べてこなかったデザート。この際食べてみようかな。

甘さの中に隠された苦さ。
見かけの甘さだけに惹かれて、私はつい選んでしまった。

隠された苦さの存在力を忘れていたから、この時私は選ぶことができたのだ。でもその複雑さを知らなかったから、私は苦さを後で強く感じることになった。もし甘さと苦さの相乗効果を知っていたら、私はどんな選択をしていただろうか。

そんなこと考えたって意味がないことは、わかっていた。

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