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旅館のことをたくさん


思い出せるだけ細かく書いたら、6,800字程になってしまいました。
自分の頭の中を整理するために書いたのですが、興味のある部分だけでも読んでもらえたら嬉しいです。

また何か思い出して、付け足したくなったら編集します。



前回、旅館の問題点を少し書いてみて、自分の中で心の向いているところが変わったように思った。


大学の研究は高校生の時に関心を持ったホームレス問題を扱おうかと思っていたのだけど、大学生活で私の中で燃えているのが旅館であることと、前回書いたように、何か力になれないかと思うことがあり、研究内容を旅館に絡めた何かにしたいと思うようになった。


よし、じゃあ調べるぞ!


とはなれなくて、私は旅館の何に関心があるんだろう?ということを明確にしなくてはいけない。


だから、整理ついでに細かくいろんなことを残していこうと思う。


立地



旅館は和歌山県田辺市の湯ノ峰温泉にある
『旅館あづまや』

JR紀勢本線(きのくに線) 紀伊田辺駅からバスで2時間、自家用車・タクシーなら1時間半くらい。


バスは1時間くらいしたら一旦休憩所がある。
といってもトイレしかないし、あまり綺麗な場所ではないので私は降りない。


旅館の目の前がバス停になっているから、観光する際に乗り遅れるとかはあまりなくて助かる。でも本数が少ないので、一本逃すと1日の予定が全て狂う。


紀伊田辺駅からは、川や山を眺めながらきれいねえ、なんて考えていれば割とあっという間に旅館に到着。


湯ノ峰温泉に着く手前は結構細い山道で、免許取り立てで行った時は、田舎の車の速さと道の狭さにだいぶ怯えながら進んでいた。今では大声で歌いながら山道を登ることが可能に!もはや都会の車の多さと分岐の多さの方が、何か間違えているのではないかと思ってしまって不安になる。


・周辺施設

旅館の周りは宿がちらほらあり、目の前には90℃近い温泉が湧き出ているのを利用して、温泉卵や芋を蒸すことのできる「湯筒」。

温泉はほんとにあっちいから大注意💦

上から流れてくる冷たい水と湧き温泉が合流してあったかくなっている川。
この川は映画「溺れるナイフ」で小松菜奈ちゃんが落ちた川。映画の話はまた後で書こう。

冬は猿が入りにくるらしい

世界遺産に登録されている、岩から温泉が湧き出ていて、2人くらいしか入れない狭さの「つぼ湯」。1組30分までと決まっていて、お客さんの多い時期は夕方の時点で予約が締め切られてしまったりする。

1日の最初の方に入ると熱すぎるので
一生懸命加水しないといけない。

旅館のお向かいは公衆浴場になっていて、普通に入りに行くこともできるし、つぼ湯に入ると薬湯か一般湯のどちらか選んで入ることもできる。

周りにスーパーやコンビニはなく、最寄りのコンビニは車で40分。旅館の下にあった売店は7月に閉店してしまったみたい。。。よくアイスを買いに行っていたからとても残念。

こちらこそお世話になりました、、、


駐車場はあづまや専用の所もあるし、誰でも駐車OKの広い場所もある。そこで駐車の練習をしたりした。




・熊野古道


熊野三山に通じる参詣道のことを指す
「熊野古道」


湯ノ峰温泉はその熊野三山のうちの1つである、熊野本宮大社の近くにあります。

狛犬のマスクがやっと外れてた


車で行けば10分、山を越えるなら1時間前後。
本宮大社前の大通りにはいろいろなご飯屋さんや、病院、薬局、ホームセンター、ガソリンスタンドなど、必要最低限のものは揃っています。
三軒茶屋の梅ソフトが大好きなのだけど、今回私情は長くなるからカット。


湯ノ峰温泉のつぼ湯の奥には「大日越え」という、大日山を超えて熊野本宮大社の近くに出る比較的お手軽コースの熊野古道(といっても結構傾斜があって、私みたいに山を軽くみてワンピースで登ったりするのはオススメしない。)があり、ゆっくり歩いて1時間半ほどで山を越えることができる。


旅館のおじいちゃんおばあちゃんもよく登る(登っていた?)みたいで、70代のおばあちゃんは昼ドラが見たいがために本宮大社の方から走って45分で湯ノ峰温泉に出たと言っていた。


もう一つ、「赤木越え」という、三越峠を越えて発心門王子に至る手前にある船玉大社付近から、湯の峰温泉へと向かう道がある。こっちの道は歩いたことがないのでどんな感じか知らないけど、3.4時間程度で歩ききれると聞いている。




旅館について


旅館は江戸の中後期から200年の歴史のある、階段しかない古い旅館。

あづまやのフロント


新館と本館、旧館に分かれていて、客室があるのは新館と旧館。旧館にお客さんが入ることはほとんどなく、繁忙期に新館で空き室がなかった場合のみ使用される。
段違いで新館と旧館が建っているので、従業員が3,4階と言ったらそれは旧館を指していることになる。


大広間と中広間もあって、今はあまりないけど、昔はよく宴会をそこでやっていたらしい。今は別部屋食の際に使用している。


・お部屋

全室和室で、全部で22室。その内、特室(広さがあってお風呂がついている。食事も少し内容が異なったりする。)が4室。


昔はどのお部屋にもお風呂があったらしく、4階の1部屋だけその名残が残っている。今は温度の管理をする湯守りさんもおらず、埋めてしまったそう。残っている部屋はトイレが併設されているために埋められなかったのだと言っていた。


お部屋の名前は全て木の名前になっていて、それはその部屋の床柱に使われている木の名前になっている。

こくたんの部屋
さくらの部屋


お客さんが入る時は当番さんがお花を生けてくれる。


・お風呂

横に広く造られている旅館の端っこに温泉があり、一般的な温泉、冷まし湯(加水をせずに温泉の温度を下げた湯)と露天風呂、蒸し風呂がある。
広い方と狭い方に分かれているが、夜中の12時に男女を逆にする。
広い方は何年か前にきれいにしたらしいが、浴槽は変わらず槙風呂が残っている。

広い方のお風呂
昼間で電気ついてない


広い方露天風呂


一度、私が滞在していた時に槙風呂に穴が開いてしまってお湯がたまらなくなってしまったことがあって、お客さんが利用できなくなってしまったことがあったのだけど、温泉に入りに来た料理長がその話を聞いて直してくれたことがありました。


仕事が休みの日だったのに、広い浴槽の中を手が吸い付くところが見つかるまで探してくれて、上がったときにはお酒でも飲んだかのように顔が真っ赤になっていたな。


・その他

チェックインは13:00
チェックアウトは10:00


ボリュームが満点すぎる夕食と、ボリュームが満点すぎる朝食を
朝でも夜でもとっても元気でおちゃめな料理長がとってもおいしく作ってくれる。お水を使用する料理は基本的に温泉水を使用していて、朝の温泉粥は最高においしい。余って3食温泉粥の日もあったけど全く飽きなくて、幸せだった。オススメは結局醤油!


天皇皇后両陛下も宿泊されたことがあったり、上記した映画「溺れるナイフ」で使用されたりもしている。


しかし、あづまやにはここに記せることよりも謎の方がはるかに多い。
毎回訪問するたびに不思議なことが見つかって、長年炊事場で働いている人、仲居さん当番さん、フロントさんに調理場、社長に聞いてまでもわからないこともある。


そもそも江戸時代の何年に建てられたのかすらわからないのだ。

この中輪に三本並び扇の家紋は旅館のものではない。
旅館に近い場所で使われてるわけでもなく、
誰もなぜここにあるのか知らなかった。




従業員

従業員は全部で30人前後だと思う。


繁忙期だけ来る人とかが結構いるから、正確に何人かと言われるとわからない。


役職は以下

・フロント
・当番
・仲居
・調理場
・炊事場
・夜警

あとお風呂掃除とトイレ掃除もある。これに社長と女将を足してだいたい30人前後。別館(あづまや荘という民宿)にももう少し従業員がいるはずだが、入ったことがないのと、あまりそちらの方と会ったことがないので割愛。別館足したら40.50人くらいなのかな???また今度聞いてみる。


私のような大学生や派遣さんは基本的に仲居の仕事のお手伝いをする。
アルバイトが多いときは当番の仕事を手伝っている場合もあった。


田辺市五味地区にある山奥ニートと称して複数人で廃校を利用し、シェアハウスを営む「共生舎」というところからも、たまにお手伝いに来てくれる人がいる。


働いている人はだいたい50~70代。平均年齢はすごく高い。
どのくらいの頻度で求人しているのかはわからないけど、社長は年中いつでも歓迎と言ってくれているくらいには人が足りないのだと思う。


働いている人はみんな趣味や特技が豊富。
元和裁師、自衛隊、給食のおばちゃん、焼き物を作っている人、サックスが趣味のおじいちゃん、フランス語がわかるフロントさん。


出身もばらばら。


田辺育ちの人もいれば、お隣りの県や九州の方からきている人もいる。
みんななんでこんな山奥で働いているのかは知らない。
方言もいろんなところの言葉がちらほら飛び交っているようだけど、標準語で育ってきた私にはあまり違いが分からない。


夫婦や親子で働いている人も何組かいる。
そうでなくても、旅館はみんな家族みたいな感じで仲がいい。
冬には誰かが段ボールいっぱいのミカンを持ってきて、みんなで食べたこともあるし、誰かが何か失くせばみんなで探すし、待っている時間に間違い探しをみんなで回して頭を抱えることもある。

裏がポコポコしてるやつが甘くて
美味しいよと教えてくれた


旅館のいたるところに飾っている花や、一部の料理に出すものも従業員で持ち寄って補ったりする。


誰かができないならできる人が助けて、自分にできることはやってあげる。みんなとても親切で、世話焼きだと思う。
高齢者が多いから余計に助け合いの輪が大切なのだと思う。



気になっていること



少し前に、仲居の働き方が変わっていた。


・休日のこと

基本的にお客様1組を、仲居1人が担当して夕と朝の仕事をする。
お客さんが夕方からくるので、夕方から1日と数えるのだけど、そうすると休みの日は昼から次の日の昼過ぎまでになり、丸1日自分のために使うことができない。2日間休みになるとやっと丸1日休みができる。


そのシステムの関係で主戦力であった仲居が旅館業を辞めたいと言ったらしく、今は翌日に休みの人がいる場合は引継ぎをして、朝から違う人が担当する形を導入してみているらしい。働き方改革だと言っていた。


前回の記事

にも書いたが、旅館は人手不足で長期間休みをもらうのは難しい。


難しいと言っても、社長が休まないでくれと言うわけではなく、
周りに負担がかかるのが分かっているから言い出しにくい
というのが大きいと思う。


・お金のこと

仲居は普段は5人で回している。
その中で準社員は2人と聞いている。あとはアルバイト?なのかな。
そこもよく知らないな。本当に足りなかったとき、女将が仲居として出た時もあった。


アルバイトは日給で7000円だったはず。
時給換算すると7時間20分労働で950円かな。


他の仲居さんも一緒なのかどうかは知らない。
自分の場合は、お給料は繁忙期で一番多くて11?12万くらいで、自分は旅館にいたらほとんどお金を使う場所がないから貯まっていくけど、旅館の外で自分の生活がある他の従業員さんたちからしたら、十分なのかどうかもわからない。


もし、それが足りていなかった場合、アルバイトとしてたくさん人が来ると、休める時間が増える代わりに給料が減ってしまう。
今年の夏は人が多くて、1週間程仕事が無くなった仲居もいた。
彼女にとってそれはよかったのか、それとも。



・福利厚生のこと

旅館はサポート体制はかなり固い方な気がしている。


保険とか詳しいことは知らないけど、前に、旅館を辞めようとしていた人に
ここにいればとりあえずは困ることもないし、助けてくれる人がいるから。
と、引き留めたのだと、言っている人がいた。


アルバイトとしては、住み込み期間に1か月2000円、水道代&光熱費込みの寮費がお給料から引かれる。あとは特にお金もかからなくて、基本的にご飯に困ることはないし、社長にお願いして軽トラを借ることもできるので、何か必要なものがあれば買い出しに行ける。


お風呂は温泉に入っていいので、心配ないし、むしろ質のいい温泉に毎日入り放題なので体温まりまくりで健康になる。(朝晩入ってた)


昼間のお客さんがいない時間帯に空いてる部屋を借りて昼寝をする人もいたし、炊事場のコンロや電子レンジ、トースター、冷蔵庫も使って大丈夫。
蛇口から温泉も出るので、旅館内で温泉卵も作れる。


私が生活していて困ったことは今のところあまり思いつかない。
虫も生活するうちに存在に慣れてしまったし。


生活するには全く問題ない環境だけど、なんせ山奥。
都会の生活に慣れてしまっている人には物足りなさや、少しのお出かけの範囲が狭まること、流行りは届かないこと、簡単に人に会いに行けないことなど、+αの娯楽を求めるのであれば満足はできないかもしれない。


川とか山とか、自然の遊びはたくさんできるけど。



・人手不足のこと

やっぱり一番気になっていることは人手不足かなと思う。


人手不足にって出てくる問題はいくつかあって、

・長期休暇を取りにくいこと
・退職しずらいこと
・一人当たりの仕事量が多いこと
・代わりがいないこと(代われても負担が多い)


など。


まだ若い仲居で自分のやりたいことがある人がいる。
でも、若さ、生真面目で丁寧な性格と、お手本のような接客。お客さんでちらほらファンもいるくらい、旅館に欠かせない人物。
今の人手不足の状況ではどうしてもいなくなってしまうと困ってしまう。


多分、それは旅館の皆、そして本人もとてもよくわかっていて、我慢するしかない状況が作られてしまっているのではないかなと思っている。


おばあちゃん仲居さんの

「(里帰りを)人が足りないから言い出しにくいんや。」

若い仲居さんの

「私もいつ辞めるかわからんしな。」


たまに、ふとした会話から出てくる仲居の本音。


「彼女もやりたい事があるみたいだしなあ。」


話は聞いているけど、今やめられてしまうと回らなくなってしまうから、
どうしても尊重してあげられないことを嘆くような社長の一言。


みんな、仕事は嫌いじゃないんだと思う。
じゃないとこんな体力仕事続かない。


階段しかない旅館なので、そもそも普通に働いていても疲労は蓄積されやすいと思う。仲居以外の仕事ではどんな負担がかかっているか知らないけど、仲居の場合はたくさんの食事を持ち上げてもっていかなければならないので結構体力が必要。


みんな長く働いていて慣れているので普通に運んでいるけど、若者でも最初はしっかり筋肉痛になるし、仕事の後はちゃんと疲れる。汗もかくしかなりの運動量だ。


再び前回のnoteに書いたように、高齢の方が多いのでいつだれが働けなくなってもおかしくない。そして、本当にやりたいことがある人の背中を気軽に押してあげることができない。


私はこの部分が心に引っかかるんだな。


長期休みに手伝える学生や派遣さんは長く滞在できても1か月程度。
共生舎の人も長く滞在するわけではなく、お盆や年末をすぎると普段のレギュラーメンバーだけになってしまう。


外から期間限定で人を呼ぶのは、長期的な目で見ると人手不足解消にはつながらない。


私が休学中に滞在していた時に社長に言われた言葉もよく覚えている。

「めいちゃんが要るおかげで普段よりお客さんが取れるから、本当に助かってるよ~。」

普段は予約がたくさん来ていても働ける人の数が少なく、休ませてあげられなくなるから、客室が空いていたとしても満室にできるとは限らないのだという。


そうすると、旅館に最大限の利益が上がらない。


こちらこそこんな小娘を受け入れてくださってありがとうございます、と思っていたけど、人1人が持っている力はかなり大きいのだろうなと今考えると思う。




ぽつり思っていること



私、力になれる????


考え出した今ではとにかくスタートラインが見当たらなくて、とりあえずいろいろ書き出していればなんとなく、先が見えるかなと思ったけど、研究なんてできるのかな。


このテーマにしたいと思ってから、まとまらないままにゼミの教授にメールを送った。


「大事なのは学生の時に自身が関心を持ったことに対して自分なりに調査・研究することだと思っていますので、まずは自身の気持ちに従ってください。」

来年度からお世話になるゼミの教授


という言葉と一緒に、とても丁寧に、参考になりそうなことをコメントしてくださった。


「力になりたい」
という今のこの気持ちに、私は従うのが、きっとこの引っかかりを解きほぐすスタートラインなのかもしれない。


とりあえず、いつもの行動力に身を任せつつ、自分の感性といなくなりがちな集中力を注ぎ込んで、少しづつ形を見出していこうかと思う。

夜のあづまや

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