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演奏会時の昼食

 演奏会時の昼食は、人によっては特別のものかもしれないし、緊張でそれどころではない人、開演前の準備に忙しくて食事をとる暇がない人も存在する。団によっては人数分お弁当が用意されることもあるし、各自で準備する場合もある。オーケストラの仲間と一緒に食べる機会が少ない人もいるので是非本番前の食事を楽しんでもらいたい。一方で、裏方を担っている人にとっては食事どころではないという状況であることも知っておかなければならない。

 スクールオーケストラの場合、夜公演ではなく昼公演の方が多い。その場合、本番当日のタイムスケジュールは9時集合、10時練習スタート、12時休憩、1時半開場、2時開演というタイムスケジュールが一般的である。そのようにすれば、5時までにホールから完全撤収できるからである。裏方の役割を演奏する団員が兼務している場合、12時に練習が終わって、それから受付のセッティングという場合もある。早いお客さんは開場時刻の1時間前からゲート前に並び始める。1時半開場だとすると12時半からはお客さんの整列等を行う予定でいなければならない。昼食を食べる時間が無くなってしまうのである。ステージの方は、練習終了後の12時から照明チェックやステージのマイクチェックや影アナと呼ばれるアナウンスのチェックが始まることが多い。そのチェックを担当する人も昼食時間を削られることになる。裏方の人数が豊富にいて、演奏者と裏方の役割を完全に分業制にできれば問題はないが、そうはいかないオーケストラも多いだろう。裏方をOBや保護者に頼めれば裏方の人数は確保できるが、裏方の経験があるOBや保護者がいるかどうかの問題と、学校や顧問が学外者の手伝いを認めるかどうかの問題も存在する。

 昼食を食べる時間がなくなりそうな人は昼食のメニューを工夫するといい。お箸を使って食べる弁当ではなく、片手で食べられるおにぎりやパンにするだけで、食べることへのハードルは下がる。

 多くのホールでは、食事をした後のゴミは持ち帰るように指示をだしている。ホールにゴミ箱があっても食事のゴミを捨てて帰れないのである。その辺も考えて食事を選ばなければならない。意外とゴミの持ち帰りに困るのが、コンビニのサラダである。ドレッシングが残ってしまうので、それをこぼさないように袋に入れ鞄に入れるというのは難易度が高いと感じている。カップ麺の汁と違い、飲んでしまえばいいというわけにはいかない。

 個人的なことで恐縮ではあるが、私の本番当日の食事はいつもパンである。特に一口サイズのアンパンが多い。理由は、いつでも食べられるのと、万が一こぼしても汚れが少ないからである。長い時間まとめて休憩をとれる保証がないことも多々あるので、一口サイズのものを複数個準備している。アンパンにこだわっているわけではないが、汚れにくく、片手で食べられて、食べかけでもいつでも食事を中断できる、といった条件の物を選ぶとなるとアンパンが多くなってしまう。同じパンでも、パイ生地やデニッシュ生地、ケチャップやソースがかかったハンバーガーやサンドイッチは選ばない。ゴマやノリのついたおにぎりもできる限り避ける。食べた後のゴミを持ち帰らなければならないホールが多いので、その点、アンパンならごみ処理も楽である。飲み物も、万が一こぼしてしまった時のことを考えてコーヒー、コーラ、ブドウジュースは選ばず、お茶か色の薄いジュースを選ぶようにしている。

 プロの音楽家の中にも本番の日の食事について色々考えている人もいる。私の知り合いの歌手は、食事の他に、一口サイズにカットした果物に爪楊枝を刺したものを保冷バックに入れて必ず持ってくる。喉を潤すために、水分だけでなく果物を利用するためとのことである。リンゴやナシがお勧めだそうである。水ばかり飲んでいるとお腹が膨れてしまうしトイレも近くなってしまうが、果物ならそうならないという理由があるらしい。余談ではあるが、ナシは東洋医学的には咳、喉の炎症、声がれ、痰のからみに効果があるとされている。薬膳料理でもそのような効果を狙って使うことがある。オーケストラの人からすればもっと余談的な話であるが、「響声破笛丸」という漢方薬がある。「笛の音よりも声を響かせる薬」という名前の漢方薬である。歌手や俳優で使用している人はたくさんいる。カラオケによる声がれにも効果がある。

 管楽器の人は、昼食直後に楽器を吹くことを考えて、辛い物や匂いの強いものを選ばないようにしている人が多い。余計なお世話と言われるかもしれないが、辛い味のカップラーメンやカレーを本番の日の昼食に選ぶのは避けた方がいいと思っている。

 演奏会は特別な日なので、楽しく過ごせるように色々工夫している人もいる。緊張の緩和やご褒美と称して好きなお菓子をいっぱい持ってきて、みんなに配りながら食べている人もいる。パート全員でユンケルやリゲインなどの栄養ドリンクを持ってきて本番直前に乾杯している人もいる。小さい子供が多いジュニアオーケストラでは、お祝いのお菓子がたくさん届くこともある。裏方の事は他の人に任せて、演奏者は演奏を楽しむために一日を使ってもらいたい、と思うが全員がゆっくりと昼食を楽しむことはなかなかに難しいことなのではないだろうか。

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