たとえば夜は、左利き
バイトが終わってから、カラオケにでも行って、大音量で音楽をかけて、土曜の夜に一人で部屋占領すんなと、ひんしゅくされても、めげず、カラオケの中で、原稿書いて、泣こうと思ってたのに、バイト先をでた瞬間に、桜が、モノクロで光っていたし、商店街の桜は、大体満開で、今日は、バイトでは、グラスも割って、要領もあいかわらず悪くて、すぐにでも、この地球にむかって、ド阿呆、情けなく泣いてしまおうと、コンジョナシ、まるで、世界と空っぽの決闘している気分、意気地無し、泣かずに歩く、酔客の声だけ道路まで落ちてくる、見送るタクシーに、ハイヒールの女の残像、カラオケはとおいし、まるで、彼岸だったから、また、うちのごく近所の、深夜までやってるレストランに避難している、わたしは、心身被災者だから、家にかえるのが、しごく、こわい、頼んだものは、コーヒーパフェ未満のもの、ゼリーと、ソフトクリーム、まんなかに、白いうずまいた島、コーヒーゼリーの海、きっと泳いだら溶岩みたいあっついんだろうけれどさ、一口食べたら、体がゆるんだ。
うまい。
甘いものばかり、最近食べてる。
体質のあれこれで、タンパク質は、肉をやめて、魚と卵と、大豆製品からとるようにしているのだ、だからなのか、甘いものへのハードルが低すぎいくなっててさ、生クリームとか、アイスとかと、熱愛中。
それにしても、しこたま今日は、忙しかった訳じゃないから、アルバイトの帰りにまとう、臓物のにおいは手にあんまし、ついていない、ついていても、わたしは、ここにきただろう。
さすがに、泣けない、レストランでひとりでなく、初老の女なんて、エモくない、むしろ、通報案件、なぜにあんたは、そんなに泣きたいんだって、泣きたいよずっと、だって、うまくいかないことばっかだもんよ、でも、それを乗り越えて、いかなけりゃならんどうやってよどどっどっどどっ
家族のことをかきたいと思う。
なにか、家族になにか、なにか、わたしの家族に、きっと、なんか、ごく小さい、綻びがあって、あると仮定して、そんなら、それ、どうやって、縫うの、わたし、ミシンの糸だって通せないし、ぎっちょで、針仕事も嫌いだから。
深夜のレストランで、ハン・ガンを読もうと思っている。それに、辺見庸を持ってきた。月。夜のレストランは、土曜で、恋人と、友情と、なれ合いの関係が、まるで、フルーツグラノラみたいに、ごちゃついている、バカみたい、みんな、なにが楽しくてしゃべってんの、わたしは、タッチパネルとしか喋ってない。
気持ちの不調が続くと、自分の体に対するイメージが悪化して、もう、自分の欠点や、気味の悪い部分ばかりが気になって、それはもう病的で、どっかに風穴があくくらいに、悩み続けて、欠点は消えないのに、なんかひとつでも、いいことがあったら、いつのまにか消えてたりする。
わたしを取り囲むつらさを分類すると、外見と、家族、ということに収まるだろう。
家族のことを、書くわけには行かない。
家族を守らなければならない。
わたしは、いわゆる、大黒柱(うちがわは、たぶん、しろあり被害、要見積り、へちまのように脆弱)
この一家を支える、要だろ、あんた。
なんだから、自分が決めた道を、黙って、行軍しなければならないのにさ。
気持ちの記録になるから、現在の感情の手触りを、わたしは、絶対にしるさにゃならん。
このきもちを、小説に書いて、そうじゃなくちゃ小説が完成しなかった小説を書いて、小説に、勝手に救われて、わたしも、わたしの小説を救いたい、おこがましいけれど、わたしの小説よ、どうか応答してください、夜は、どうせ、左利きだから、星が消えて、人たちの涙が、空に登るから、肌と肌でできた旋律が、夜の帳をやぶって、わたしの口から忍び込むから、ああ、苦い、コーヒを追加で頼む、あくびがでる、退屈ではない、なにかにいっつも終われて追い回されて、削れてる、鉛筆の削る機械みたいに、眠い。
かえって、シャワーするときに、泣いて、きっと、春とか、季節とか、あたたかい風とか、気味の悪い日常とか、排水のスカムにひっからまって、なくなってしまえと願う。
さて、帰るか。ハン・ガン、少し読んで、傷跡を、えぐったり、なめったりしながらね。