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豪雪地帯の雪中で寒締めを繰り返し越冬させた爽やかで甘い春の青菜〜あきた伝統野菜「ふくたち(結球しない白菜)」

先週横手市を訪れた際、駅前のスーパーに立ち寄ると、初めて目にする名前の青菜があった。「ふくたち」或いは「ふくだち」。

まだ昼過ぎなのに残り少なく、「ご来店感謝価格」と言うが青菜としては割と高額。人気の高い品種だから?
気にはなったが、その時は荷物が多く、またやや淡い色の感じからあまり長時間持ち歩かない方が良いかと思い購入を見送った。

だが秋田市のホテルにチェックイン後、改めて「ふくたち」について調べると、白菜の種を敢えて冬前に蒔き、雪中で何度も寒締めさせて甘くなった結球させない白菜のとう立ち菜で、その味わいや食感は白菜とはまるで違うという。

白菜なのに白菜とはまるで違う…
それは是非食べたい!!!

しかし、ホテル近くのスーパーでは「ふくたち」は見当たらなかった。
「ふくたち」は主に横手盆地の豪雪地帯で育てられたらしい(現在はハウス栽培も)。雪の少ない秋田市では見ないのも当然かも知れない。近郊で育った私も知らなかったくらいだ。

付近で見つけられるとすれば直売所、秋田駅の1階にある「産直市場」で買えないかな?と翌朝早くに行ってみると、あった!10時過ぎで2袋しか並んでなかった、買えてよかった…

ちゃんと「はくさい」と書いてあります

生産者は秋田市内の方のようだが、下新城は野菜の生産が盛ん。この形状はまさしく「白菜とは違った白菜」!やった!!

という訳で、帰宅後さっそく調理。
改めて見ると、青みが濃くて幅広な茎の感じが白菜というより青梗菜を思わせる。葉の厚みはキャベツっぽい。つまりアブラナ科の青菜により近い。白菜の種も育て方次第でこんなに青菜になるんですね。

横手の辺りは私が子供の頃はメートル単位で積雪があり、昔はもっとあったという。半年近くに及ぶ長く厳しい冬を越し、春を迎えて最初に出会う青菜。「ふくたち」は「福立ち」と書く、その名からも喜びが伝わる。

洗った感じ、茎の辺りはそこそこ硬かったので茎と葉に分けて時間差で湯がき、主に葉の部分は和えものっぽいサラダに、茎に近い方は煮びたしにしてみる。

まずはサラダ。

◆ふくたちのあっさりツナごまサラダ

美味しかった!ごまの味が合います

生の葉っぱをかじってみて、白ごまの味が合いそうと思った。シャキッと茹で、ツナと合わせてサラダにしたら美味しそう。
味付けは醤油をちょっぴり、コクを補うマヨもほんのちょっと。味を際立たせるため、梅の風味もちょっとだけ入れたら美味しいかな?と考えながら進め、ほぼ狙い通りに仕上がった。

①ふくたち半束(主に葉の部分)はさっと湯がき、冷水にとって色止めし、水気を軽くしぼって食べやすい長さに切る。

② ①にすりごま大さじ1程度をまぶして水分を吸わせ、水っぽさを防いでから微量の醤油で下味をつけ、ツナ大さじ1(ノンオイルを使いましたが普通のでも)、マヨネーズに梅酢を混ぜたもの少々、こしょう、ちぎった梅干し1個分を加えてざっと混ぜる。

③器に盛り、白ごまをふりかけて完成。

シャキッとした食感と、口に広がるふくたち特有の風味と甘さが美味しい。確かに白菜とも違うし、見た目の似た青梗菜やキャベツとも違う。爽やかで、ちょっとだけサラダ菜に似て、その意味では春らしい野菜だ。白菜の種からこれができるのか…不思議。

続いては煮びたし。
あっさりした味なので油やコクのある食材との組み合わせが良いだろうと厚揚げと、加えて蒸しあさりも使った。特にあさり正解!シーフードミックスでも良いと思う。

◆ふくたちと厚揚げ、あさりのあんかけ風煮びたし

①ふくたち半束(主に茎の部分)は硬い部分を切り落とし、根元近くは火が通りやすいよう切り目を入れて茹で、食べやすい長さに切る。
厚揚げは熱湯を回しかけて油抜きし、食べやすい大きさに。

②深めのフライパンにだし汁1カップほどを温め、①と蒸しあさり1/3パックを入れ、酒大さじ1、みりん大さじ1を加えて全体がなじんで柔らかくなるまで煮、醤油大さじ1程度で味を整える。ここで完成としてもOK。

③(お好みで)仕上げにおろし生姜少々を加え、水溶き片栗粉でとろみをつけてできあがり。

とう立ち菜なので、根元に近い方は繊維を帯びてそれなりに硬い。その辺も白菜ではなく菜っ葉だなあと思う。
そして、美味しいけれど煮ると他の青菜や白菜との違いがわかりにくくなるので、持ち味を活かすならおひたしやサラダ、和え物等の方が良いかも。

煮た時の味はかき菜にも似ていると思った。不思議なものだ。ひとつの野菜でいろんな味がする。それもふくたちが珍重された理由のひとつかも知れない。

表記通りに「ふくたち」と書いてきたけれど、私の脳内では「ふぐだづぃ」に近い発音で再生されている。おそらく秋田の人はこう呼ぶから。

私は秋田育ちではあるが、今では横浜が最も長く住む街になった。この先も二十年ほどは横浜にいるだろうし、老後秋田に帰ることもないかも知れない。
そんな私でも、ベースとなる地方の肌感みたいなものを持っているのは強みというか、人生を豊かにする感覚かもと、ここ数年で思うようになった。特に食をとらえる際、どの地方のどんな食べ物で育ったかは重要だ。理解の仕方や深さに反映してくる気がする。

その意味では歳をとるのもあながち悪くはない。近年味覚が広がっている自覚があり、この先も新たな味覚との出会いが楽しみだ。

ともかく、「ふくたち」は珍しくて美味しい春野菜。見つけたら是非味わってみてください。栄養価も高いそうです。

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