見出し画像

「1冊の本」3選 FIKAのブックトーク#34

こんにちは、FIKAです。
毎回1つのテーマで数冊の本を紹介しています。

今回のテーマは「1冊の本」。
1冊の本がここではない別の世界に誘ってくれる、そんな魅力的な本を描く小説を3冊紹介します。




「三月は深き紅の淵を」 恩田陸

なんとも謎めいたタイトルですよね。

たった一人にだけ、たった一晩だけ貸すことを許された本。
素晴らしく面白いけれどとても一晩では読みきれない、この世にたった一冊しか存在しない本。

そんな本があったら読んでみたいと思いませんか?
誰が書いたのか、なぜ一冊しか存在しないのか、どうして奇妙なルールがあるのか。
全てが謎に包まれた本をめぐる4つの物語です。

第一話「待っている人々」
読書が趣味という理由で会長の別荘に招待されたサラリーマンの鮫島。招待客たちは「三月は深き紅の淵を」という謎に包まれた本の魅力を嬉々として鮫島に語るのだが…

第二話「出雲夜想曲」
出雲行きの寝台列車に乗り込んだ二人の女性。目的は謎の本「三月は深き紅の淵を」の作者に会うため。三人に絞られた候補のうち本当の作者は誰なのか。推理合戦の果てに二人が見た景色とは。

第三話「虹と雲と鳥と」
小さな城下町で二人の女子高生が転落死した。美しく成績もよく人気のある生徒だった二人の死に隠された秘密とは?

第四話「回転木馬」
「三月は深き紅の淵を」を執筆中の作者のとりとめのない雑感が、いつの間にか「三月」の物語世界に入り込み、虚構と現実が入り混じっていく…

4つの物語を読み終わると、どこか宙を彷徨っているような、自分がどこにいるのか分からなくなるような感覚に陥ると思いますよ…



「その本は」 又吉直樹/ヨシタケシンスケ

本の大好きな王様がいました。
たくさんの本を読んできましたが、年をとって目も悪くなり自分で本を読むことができなくなりました。

そこで二人の男に「世界中を旅していろんな本の話を聞いてきて、その話を教えてほしい」と頼みました。

二人の男は旅に出て、1年後に戻ってきました。そして世界中で聞いたいろんな本の話を一晩ずつ交代で王様に語って聞かせました。

そんな設定で、又吉直樹とヨシタケシンスケが「その本は」という書き出しでいろんな本について語るショートストーリー集です。

すごい速さで走る本。
警察に追われている本。
「若い頃はモテた」が口癖の本。
四分の一が齧り取られている本。
一冊三億円の本。
いつか返すつもりの本…

本から始まる友情もあれば、本に救われた人も救われなかった人もいる。
誰かにいつかメッセージが届きますようにと信じて作られていく様々な本たちの話を読むうちに、いろんな人生を一緒に歩んでいる気がしました。

笑いあり、涙あり、最後のオチまでお楽しみ下さい。



「彼の名はウォルター」         エミリー・ロッダ

打ち捨てられた不気味な屋敷で夜を明かす4人の生徒と1人の先生。
田舎道でバスが故障し立ち往生していたら嵐がきて、やむなく避難することになったのです。

荒れ果てた屋敷で、コリンが机の引き出しから見つけた本には美しい手書き文字でこんな書名が書かれていました。

「彼の名はウォルター」

退屈しのぎにコリンたちはその本を読むことにします。
それは孤児院で育ったウォルターという少年の成長と冒険を描く物語でした。

ところが読み進むうちに、空想的なおとぎ話だと思っていた本の内容が現実世界とリンクしていることに気づきます。
さらには、本を読むのを妨害する幽霊まで現れます。

なぜ幽霊は本を読ませまいとするのか?
ウォルターの物語に秘められた真実とは?

ゴシックホラーのようですが、予想外の展開と結末を迎えます。
人を信じること、愛すること、勇気をもって恐れすに行動すること、そして「物語」が持つ素晴らしい力を教えてくれる温かな物語でした。



以上、3冊の本を紹介しました。
本ってやっぱりいいですよね…

読んでくださってありがとうございました。

(おまけ)これにて読書週間の連続2週間投稿を終了します。(我ながら頑張った!)
来週からは週1の通常運転に戻ります。これからも読んでくださったら嬉しいです。




いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集