世界最凶の国は世界最高の国へ変わっていた
「エルサルバドル」
この国名を聞いて、
私はこの国を旅することを恐れていた。
現在は情報が簡単に手に入る時代。
「エルサルバドル」と検索をかけると
殺人率世界1位
などの恐ろしいワードがヒットする。
私は本当にこんな国に足を踏み入れていいのだろうか。
そんな不安な気持ちを抱えたまま、
エルサルバドルの国際空港に到着した。
空港での入国審査に並んでいる間、
小娘はとても緊張していた。
ジョブズと2人で入国審査のスタッフの元へ行くと、笑顔が素敵な女性スタッフが、流暢な英語で色々と質問をしてきた。
私たちの関係性を聞いて、
「そんなに長く付き合っているのに、結婚はまだなの???(小娘を見ながら)応援してるわよ。」と笑いながら会話をする。
そして彼女は最後に
「いらっしゃい。私たちの国へようこそ。素敵な滞在を!」
と思いっきりの笑顔で送り出してくれた。
会話の中で、私たちは10日間しか滞在しないということを告げていたのにも関わらず、彼女は180日の滞在許可を出してくれた。
入国審査室から退出する際に、警備の方にパスポートの滞在許可を見せる必要があるのだが、警備員の方もとても驚いていた。
あれ?
私が恐れていたエルサルバドルという国は、
本当にあの治安が悪い国なのだろうか…?
私の中にふと疑問が湧いた。
その後、SIMを持っていない私たちは、
空港のフリーwifiを使って、本日のホステルまでの行き方を調べることに。
チキンバスで私たちの向かう
La Libertadまで行ける事がわかり、
早速空港から徒歩でバス乗り場を探すことにした。
反対側から歩いてくる空港スタッフさんに話しかけて、バス乗り場の場所を聞くが、正確な情報が得られない。どうやら旅行者は、シャトルと言って、チキンバスの数十倍の値段の観光客向けのバンを使うのが主流らしく、チキンバスはここまで来ないらしい。
私たちは公共交通機関で移動をしたいため、
それが見つからない場合は徒歩移動。
とぼとぼ歩いていると、
青いSUVが私たちのとなりに停まった。
運転手の男性が、「どこまで行きたいの?」
と声を掛けてくれたのだ。
「最終目的地はLa Libertadだけど、そのバスに乗るためにComalapaという街に行きたいんだ。」
と伝えると、
「乗りな!俺もそっち行くから乗せていってあげるよ!」
一瞬戸惑う我ら。
(この人を信頼しても大丈夫なのではないか。という反面、このまま拉致されたらどうしよう。という気持ちもあった。)
彼を信じて乗ることに。
すると彼は限られた英語を使って色々と話をしてくれた。私たちがアメリカからずっと旅して来たことを知り、なんだか嬉しそうな顔をしていた。
「ようこそ。エルサルバドルへ。」
そういって、私たちの乗りたかったバスを見つけ、運転手さんに引き継いでくれた。
あれ?
世界最凶の国にいるんだよね?私たち?
どんどん私の中のエルサルバドルという国の皮がペリペリと剥がれて落ちていくような感覚になった。
私たちが乗ったチキンバス、
運転手さんはとても笑顔が素敵で、
中国から来たのかい?と話しかけてきた。
いや、日本から来たよ。と伝えると、
そうかそうか、日本か!
日本は素敵な国だと聞いたよ。
わざわざ日本からようこそ!
と嬉しそうに話していた。
途中でフードスタンドの横にバスを横付けして停車した運転手さん。
「ここのユカフリータス(ユカというお芋を揚げたオヤツ)、めちゃくちゃ美味しいんだよ。しばらく休憩で停車するから、買っておいで!」
それを聞き、荷物を座席に置いたまま、外に出てユカフリータスを買う我ら。
そしてそのユカフリータスが美味しいのなんの。他に乗っている乗客や、運転手さんと、美味しい!美味しい!って言いながら、笑い合った。
バスが走り始めると、色んなところでバスが停まり、その度に学生や赤ちゃんを連れたお母さんが乗ってくる。
ある1人の女子学生が、小娘の存在に気がつき、バスの降り際に、小娘の肩をポンポンとたたき、小娘の手に何かを置いた。
なんだろう?と思い手のひらを開けると
1枚のポストイットと美しい貝殻のブレスレットが…
そしてそのポストイットには
“Welcome and enjoy El Salvador”
と書かれていた。
小娘は、Muchas gracias!と何度も伝えて、
バスの車窓から彼女に手を振った。
すると、
気づくと私の眼には熱いものが溜まっていた。
人前で涙を流したのはいつぶりだろうか。
誰だかわからない人の口コミを信じ、
勝手に危ない国と決めつけていたのは、
この私だった。
そんな無知で、臆病な小娘を
エルサルバドルの方たちは、
ありったけのおもてなしで迎えてくれた。
軽率で、安直で、情報を鵜呑みにしていた自分に対する恥ずかしさと
エルサルバドルの方々の優しさに
涙があふれた。
世界最凶の国と思っていたエルサルバドルは、
世界最高の国エルサルバドルに塗り替えられた。
ありがとう。
エルサルバドル。
私たちにとって、
エルサルバドルはとても大切で
大好きな国の一つになりました。
これをいつかスペイン語に訳して、
エルサルバドルのたくさんの方々に読んでもらうことが、私のバケットリストの一つに加わりました。
ありがとう。
エルサルバドル。
写真は沢登りツアーに参加した時の美しい滝。
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