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書評『思考停止という病理(やまい)』
■いつの間にかの『思考停止』にご注意を!
基本情報
著者:榎本博明
出版年:2023年5月15日初版第1刷
出版社:株式会社平凡社
ページ数:全221ページ
読書のきっかけ
日常生活を送る中私達は
「大勢の人がそう言ってるから/そうしてるいから」
などから
つい一つの意見に賛成したり
商品を購入したりなどしています。
しかし果たして
大勢が賛成/良いなどと言っていることは
本当に正しいものなのでしょうか?
みんな「良い」って言ってるけど
自分は違う、こうじゃないかと思っても
周りの目が気になってしまい
自分の意見を言い出せない…
という人は多いのではないでしょうか?
日本社会は元々
「以心伝心」を重んじ
他者を敬う姿勢を大事にする社会。
「以心伝心」を重んじるゆえに
アイコンタクトや空気を読むこと
などといったことが求められ
共通言語・共通認識が土台となる
ハイコンテクスト文化が特徴です。
また日本人は
「相手を信頼すべきで疑うべきではない」
という性善説の精神が刷り込まれています。
相手に疑問を持たず素直に従い
何でもお任せにしてきたことが
グローバル化の影響で
人を疑うことを基本とする
「性悪説」の考えが入ってきたことや
これまでのモラルを裏切るような事件も
多発するようになってきました。
本書は
思考停止しやすい日本社会の構造に
警鐘を鳴らしています。
気づいたこと・感じたこと
Ⅰ.日常に潜む『思考停止』の問題
日常生活を送る上で
実は至るところに
『思考停止』の問題が隠れています。
例えば天気予報。
天気予報を見ながら
「今日は雨が降るかもしれないから、折り畳み傘を持って行こう」
「明日は大雨が降りそうだから、早めに家を出発しよう」
など予想して天気に対処します。
ですが、最近は予報の後に
「傘を持って出かけた方が良いでしょう」
「今日のうちに洗濯を済ませると良いでしょう」
「交通機関に遅れが生じるかもしれないので早めに家を出ましょう」
など親切丁寧なアドバイスが
増えてきています。
天気予報だけでなく
電車のアナウンスや
パッケージに書かれている注意書きも
丁寧な説明が多いです。
私自身も日頃
通勤に電車を使いますが
親切丁寧に案内する電車のアナウンスは
時折「うるさいなぁ」と感じます。
親切丁寧に説明する
その背景には
「自分の頭で考えることをしないで何でもお任せにする」
という風潮が根強いことが挙げられます。
親切に教えることは
悪いことではありませんが
あまり過保護過ぎると
自分で考える力を失うという
デメリットがあります。
またスマホやインターネットも
便利な反面
思考停止に繋がりやすい
という大きなデメリットがあります。
元々ネット空間は
相手に配慮する必要性が低いことや
自分は何でもできるという
「幻想的万能感」を抱かせ
さらに匿名で書き込める影響から
衝動性を刺激させ増長させやすいのです。
昔はパソコンしか
ネットに繋がれませんでしたが
現在はスマートフォンの普及で
外出先でも気軽にSNSなどに
書き込むことができるようになったことから
一旦
頭を落ち着かせることができなくなり
より攻撃的になりやすくなったのです。
親切丁寧なアドバイスや
気軽に書き込めるネット空間の発達などは
かえって
考える力が奪われつつあることを
意味しているのです。
Ⅱ.日本人はなぜ思考停止しやすいのか
他人を敬う精神が強い
私たち日本人は、ともとすると相手を疑うのは失礼だといった思いに縛られ、きちんとものごとを検討せずに相手の要求を受け入れてしまいがちである。
日本人はなぜ
思考停止にハマりやすいのでしょうか?
そこには
「他人を疑ってはいけない。相手を信じるべきである」
という性善説が刻まれている影響から
相手の期待を裏切りたくない
という心理が働いています。
動機づけについて
日本人は
「両親や先生を喜ばすため」
と他人のためという心理が強いそうです。
日本人の場合、特に
「母」との絆が
深層心理に根付いていることから
他者の目を特に意識しやすいのです。
日本社会は『空気』が支配する社会!
戦争の最前線における戦略策定のような重大な局面においても、「空気」の力が猛威を振るい、言葉よりも空気でものごとが決定されてしまう。それは非常に恐ろしいことであり、無謀なことであるわけだが、そんなときでさえも、いわば思考停止に陥り、理屈抜きに空気で動いてしまう。
それは、私たち日本人が日頃から相手の気持ちや立場に配慮するコミュニケーションにいかに慣れ親しんでいるかを証拠立てるものと言ってよいだろう。
例えば会議や話し合いの場において
「それはおかしい」
「それはまずいんじゃないか」
と感じる発言や提案がしばしば出てきます。
ですが、「おかしい/まずい」
と頭の中で思っていても
誰も反対や異議を通さず
すんなり通ってしまいます。
そこには
「空気を読んで行動する」
という日本的コミュニケーションの
特徴が影響しています。
じっくり考えることが
必要な場面でも
結局「空気」の力で
間違った意見が通ってしまいやすいのです。
Ⅲ.スキル重視は思考停止のもと?
また学校教育自体
「実用性重視」になったのも
実は思考停止に影響しています。
「学校で習ったことが社会に出た途端、全く使わないものばかり」
と言うのは
昔から度々言われていたことです。
その影響からか
実用性を重視する教育に
シフトされつつあります。
しかし「実用性重視」の教育には
以下の落とし穴が存在しています。
実用性重視の流れのなかでとくに目立つのが、「理屈はいらない、どうすればよいかを教わればよい」とでもいうような教育の仕方である。「どうしてそうするのがよいのか」といった理論的背景は棚上げして、「こうすればうまくいく」という実践的スキルを叩きこむのである。
これは、言ってみれば、「頭はいらない、指示通りに動いてくれればそれでいい」という感じで、言いなりに動く、使いやすい人材を量産する教育であり、生徒・学生を思考停止のロボットに仕立てるものと言える。
実用性重視は
「こうすればうまくいく」
というやり方を教えるだけで
自分で物事を考えることが
軽視されがちになってしまいます。
物事を考えるには
「なぜそうするとうまくいくのか」
について考え
自分なりに納得することが大切になります。
実用性ばかり重視するようになった影響で
知識・教養の吸収が軽視されて
国語の読解力や思考力の低下が
問題になっているという
デメリットが生まれています。
Ⅳ.思考停止にならないためには
知識ばかり詰め込んでも
それを自分でしっかり考えて
自分の中に落とし込んでいなければ
意味がありません。
現代はインターネットの発達で
情報過多社会に突入しているので
より情報をうまく取捨選択して
考えることが求められます。
ものごとをじっくり考えるには、自分なりの視点をもつ必要がある。視点がなければ、情報に踊らされるばかりで、情報を評価したり、消化したりすることができない。ただし、自分の視点に凝り固まって、違う視点から検討することができないのも困るので、絶えず新たな情報に心を開きつつ、自分の視点も更新していく柔軟性が求められる。
そこで
思考力を高めることが大切になってきます。
思考力を高める上で
✅読書をする
✅新聞やテレビのニュースで様々なジャンルに触れる
✅まずは吸収力を高める
✅考える時間を作る
✅何事に対しても疑問を持つ
この5点が大事です。
特に読書は知識を吸収し
語彙力が豊かになるだけでなく
異なる知識やモノの見方・考え方に出会う
などの様々なメリットがあります。
また現代は
ゲームをプレイしたり
音楽を聴いたりなど
刺激性に満ちたものが多いです。
これらは衝動に身を任せがちになり
じっくり考える余裕を失わせる
デメリットが存在します。
最近は
「ネットデトックス」が流行っているように
スマホやネットから離れて
じっくり考える時間を意識的に作り
様々なことに疑問を持つことが
大事だと感じます。
まとめ
日本社会とは「空気を読む社会」。
空気を読んで行動する
目上の言うことは絶対
などといった空気が漂っています。
こう言う部分が
思考停止にはまりやすいんだろうなあ
と感じます。
なぜなら思考停止とは
結局「他人任せ」で
「○○さんがそういってたから〜」
と無意識に他責思考になりやすいです。
本書を読んで
✅「考える」ことを放棄せず、自分で考えることをクセづける
✅何が自分にとって重要か・大切かを自分で考えて取捨選択することが大事
と感じました。
私もメンターの方から
「変化に常に向き合っていくか」の姿勢が
大事だと言われ
本書を読んで今の自分はどうなのか
見直すきっかけになりました。
時代の流れや
様々な価値観の流入を前に
大切な姿勢は
『従来のやり方に囚われず、流れを取り入れてどう向き合っていくか』
だと考えます。
今の時代は
「風の時代」と言われており
古い価値観などが
どんどん淘汰されていき
様々な方面で
二極化が進んでいる状況です。
本書は
二極化が進みつつある時代を生きるために
意識するべきことが書かれているので
ぜひ一読してほしい本です。