2024年6月後半の読了本+感想と、活動報告
こんにちは。
梅雨ですね。最近、本で読んで空梅雨という言葉を知りました。
今年も雨少なかったら良いのに!
そして梅雨が空ければ最高の夏がやってくる楽しみすぎる!
地元・徳島県のタウン誌『CU』さんで書評コラムを書かせていただくことになりました!
コラムタイトルは『やっぱり読書はやめられぬ』。
最新号では中前結花さんの『好きよ、トウモロコシ。』を紹介しています! 徳島県の本屋さん、コンビニで発売中(一部、淡路島も)。
お近くの方、ぜひゲットしてください^_^
そして、今月の読了本の感想を綴る前に
なんと「ほんのひととき」さんが取材してくださったので、ぜひこちら読んでいただきたいです!!
第一芸人文芸部のこと、文学フリマのこと中心にたくさんお話しさせていただきました↓↓
それでは、6月後半に読んだ本です〜!
2024年6月後半に読んだ本
①『724の世界 2023』吉本ばなな
あまりに素敵な日記帳。装丁が手帳の質感なのも良い。
吉本ばななさんの日常をただただ綴っているんだけど、ふとハッとさせられる一行がある。
『若いって不器用ということなんですね。』
『大事にしているものが似てる人なので気が楽だった。』
『あまりにも美しい人って、世界を周りにぎゅっとあつめることができるんだな。』
『映画館にいた人たちが出る時すごく譲り合ったり、笑顔で会釈していたり、少しいい人になってるのがいい映画の証拠。』
こんな一行を描けるようになりたい。
そして創作のことを、仕事のことをを無理に書かなくても、日記ってもっと気軽に書いて良いということを思い出させてくれる。かと思いきや、いつの間にか「ゲラをチェック」という日が定期的におとずれ、いつの間に書いたんだ!となる。
素敵な店をたくさん知っていて、色々な美術館や展示、舞台、お笑いや音楽のライブに月に何度も足を運ぶばななさん。ずっと自分の体や機嫌と真剣に向き合っているばななさん。自分と周りへの向き合い方のバランスが絶妙で、そういった日常があのいつまでもお洒落で瑞々しい感性を保っている秘訣かもしれない。
いくつもの店をGoogleマップにメモした。
『本のじかん。』の収録に来てくださった日の日記。僕の名前を出してくださっているのも、とても嬉しかった。
②『令和元年の人生ゲーム』麻布競馬場
タワマン文学の第一人者・麻布競馬場さんの2冊目。
第171回直木賞の候補作にも選ばれている。
「Z世代の働き方」をテーマに書かれた短編集で4本の短編が収められている。全話に登場し、各回の合間に何かしらを経験し性格や立場が毎回変わっている「沼田」というキャラクターがいることで連作短編集の性格も持ち合わせている。重要なサブキャラ沼田の成長譚とも読む事ができて面白かった。
恥じらいを捨てて何かに夢中になる若者。自分の考えを持たずトレンドに翻弄され続け、言動の全てがファッションの域を出ない若者。そのような意識高い系、あるいは意識高い風に見せたい系を冷笑する若者。ただの観察者・傍観者。
各話の主人公の立ち位置、沼田の立ち位置がめくるめく変わるのも楽しめるポイント。
物語で描かれている感情を追うと、「自分らしく生きる」「理想的な生き方」「自己実現」を求めるがゆえの悩み、僻み、妬みが凝縮されていた。
何者かになりたい、何者にもなれない、そもそも自分は何者か、何者かになる必要があるのか——朝井リョウの『何者』に令和要素をまぶし、アップデートし、個人的な脱成長(成長ばっかり求めて何になるの? 仕事ばっかして人生楽しいの?)的な価値観も盛り込んだ作品だと感じた。
個人的には文脈の違う世界にいるせいか、あまり感情移入できなかった部分もあるけれど、かなりの良作だと思う。
③『屋根裏の散歩者』江戸川乱歩
1925年に発表された江戸川乱歩の短編探偵小説。明智小五郎シリーズの5作目。
いや〜面白い。
倒叙ミステリー(犯人視点でストーリーが進行する)は、魔力がすごい。
犯人の心情、殺人を犯すことになった理由の他にも、犯行時や犯行後の一瞬のためらい、犯罪への憧れ、私生活のうまくいかなさまで事細かに綴れられていて、めちゃくちゃダメなことをしているのに主人公を応援してしまう。
反対に犯罪を解き明かそうとする探偵・明智小五郎を、敵扱いしてしまうから不思議だ。
これぞ物語の“主人公”がもたらす力だと思う。
あらすじ、簡単に。
学校を出ても定職に就かず、親の仕送りを受けて暮らしている主人公・郷田三郎。酒、女をはじめあらゆる遊戯に興味を持てず、退屈な日々を送り、下宿を転々としていた。ここで郷田は友人の紹介で素人探偵の明智小五郎と知り合い、「犯罪」に興味を持つようになる。
明智と知り合ってから一年が過ぎたころ、郷田は下宿屋「東栄館」に引っ越す。ある日偶然に、押し入れの天井板を外して屋根裏に入れることに気付き、その日から「屋根裏の散歩」が始まった。
そして気に食わない遠藤という男の屋根裏に、部屋がのぞける隙間を発見した郷田は……。
屋根裏、というのがドキドキする。誰にも気が付かれず、誰かの私生活を垣間見られる空間。バレたら終わり。
僕も幼少期、近所の友達の家で「家かくれんぼ」なる遊びをしていたとき、友達が1階と2階の間の天井裏に隠れていた。この話と同じく、押入れから侵入して。
「それ、ありなんかよ!」
そう思った僕も、それから天井裏に隠れ始めた。すぐに見つけられたが、友達の家の天井裏にいると思うとドキドキした。ダメなことをしている気分。真っ暗闇のなか、わずかな隙間から光がさす空気の澄んだ空間を今でも覚えている。
「家かくれんぼ」はだんだんエスカレートし、しまいに友達は牛小屋の屋根裏にまで隠れていた。見つけられるわけがない。「どこで遊んどんな!」と父に怒られ、最終的に農家の大きな冷蔵庫の中に閉じ込められ、叱られていた。時代。
④『瓶詰地獄』夢野久作
1928年に発表された夢野久作の短編。
冒頭の公文書に続き、三枚の手紙で成り立っている。
この手紙は瓶に詰めて流され、とある島に漂着し、同時に発見される。
その内容が、小説の本文となる。
題名から想像するのと全く違った、センシティブな内容で驚いた。大勢の人間が瓶の中にぎゅうぎゅうに詰められて出荷される話かと思った。
手紙は第3→第2→第1の瓶の内容の順番で書かれたと解釈するのが一般的だそうだが、僕も時系列的にそう読んだ。しかしよく考えると矛盾点が多く、別の解釈もあるらしい。
あらすじ。
幼いころに漂流し、無人島にたどり着いた兄妹。兄は11歳、妹のアヤ子は7歳だった。持っていたのは、一本のエンピツ、ナイフ、一冊のノートブック、一個のムシメガネ、水を入れた三本のビール瓶、小さな新約聖書だけ。
言葉も漢字もわからない二人が、聖書を通じて難しい言葉や漢字を理解し、手紙を書けるようになるまでの成長を感じ取ることができる。
一通目。
救助船が来たにも関わらず、二人は身を投げてしまう。なぜ、助けに来たことがわかったのに、心中してしまうのか。それがこの小説の最大の謎として与えられる。
二通目。
無人島での生活について兄の一人称で綴られている。漂着して10年たったようにも感じている2人。その間に妹の発育が始まり、二人きりで過ごしているうちに、男女として意識し始めてしまったことが書かれている。悩みまくる兄、様子がおかしい妹。禁忌の物語に拍車をかけたのは、2人が熟読したと思われる新約聖書かもしれない。
そして三通目。漂流した直後に書かれたと思われるカタカナだけの一行。
かなりむごい話にも、作為的に、わざと読んだ人が混乱するように書かれた話にも読める。面白い。
⑤『あばばばば』芥川龍之介
芥川龍之介が1923(大正12)年に発表した短編。タイトルがあまりにも特徴的で、芥川の代表的な作品の一つになっている。
『あばばばば』とは何を指すのか、何を意味するのか全くわからずに読み進め、最後の最後で腑に落ちた。ここをタイトルに持ってくるセンスがすごいわ。面白い。
主人公は堀川保吉(ほりかわ・やすきち)。保吉が出てくる小説は「保吉もの」と呼ばれ、シリーズ化しているそうだ。彼は海軍の学校で英語を教えているのだが、芥川自身も実際に海軍機関学校で英語を教えていて、保吉は芥川自身を表わしていると言われている。私小説に近いのだと思う。
あらすじ。
舞台はタバコ屋。保吉がマッチを買いにくるシーンから始まる。店番をしているのは若い斜視の男。
この後しばらく店の描写が続くのだが、ここが素晴らしい。あまりにも光景が眼に浮かぶ。
そしてある初夏の朝、店番をしていたのは西洋風に髪を結った19歳くらいの少女だった。対応のたどたどしい様子が微笑ましい。話すたびに、顔を赤らめる素振りをされ、主人公は自分に気があると思った。
それから彼女に会うたび、小さいいたずらやからかいを仕掛け、自分に気があることを少し弄ぶようになる。
(ココアを買いに行った日ヴァンホーテンが出てきて、100年前にすでにあったのかと伝統を感じる)
しかしある日から、ぱったり少女は姿を見せなくなってしまう。初めは物足りなさを感じていたものの、やがて少女の存在すら忘れてしまう。
数ヶ月後、久しぶりに姿を現した彼女。その両手には赤ん坊を抱いていて……。
*読み終わって解説を色々と読んでわかったのだが、玄米コーヒーはノンカフェインらしい。おしゃれな伏線。
⑥『貨幣』太宰治
そんなふうに始まる短編小説。
『貨幣』は太宰作品の中で一番好きかもしれない。一人称貨幣視点なんて面白すぎる。
夏目漱石は『吾輩は猫である』で猫を主人公に人間社会の悲喜交交をコメディタッチで描いたが、太宰治の『貨幣』は百円札を主人公に人間の浅ましさと戦争の愚かさをシリアスに綴った。
ちなみに『吾輩は猫である』は1906年、『貨幣』は1946年。
歴史は繰り返すじゃないけど、表現は螺旋を描くように昇華していくんだなと思う。漫才もコントも当時は「斬新」と言われたものの認知がしだいに広がって「ベタ」になり、それを前提として、新たな「斬新」が出てくる。
『貨幣』の舞台は戦前〜戦時中。くたくたになった紙幣が、その半生を振り返る構成で、散々、戦争や人間社会を風刺したあとの最後のエピソードはグッとくるものがあった。
あらすじ。
刷りたての百円札である「私」。当時高価だった百円札は銀行から大工さんの手に渡り、家の神棚に祀られる。それから質屋、医学生の財布の中、瀬戸内海の小さな島の旅館……と、5年間四国・九州の中で行ったり来たり。東京に戻ってきた時にはボロボロの紙幣になっていた。
さらに戦争が始まり、闇商売をしている人の間を行き交う。主人公は闇市をめぐり皺だらけになっている自身の境遇に自己嫌悪を感じる。
そんな中でも、辛くて暗い戦時中でも、“忘れられぬほのかに楽しい思い出”があった。最後にその時のことを思い返す……。
今後の予定
① 7/4 BSよしもと 『第一芸人文芸部 俺の推し本。』公開収録
BSよしもとでオンエアされた特番『第一芸人文芸部 俺の推し本。』をたくさんの方々が見てくださったおかげで、レギュラー化が決定!
こちら第2回の公開収録です!
場所:下北沢B&B
時間:2024/07/04(火)19:00〜
メンバー:ピストジャム、ファビアン、バイク川崎バイク
ゲスト:アキナ・山名、石井ブレンド、つぼみ大革命・糸原
こちら3本撮りで、各回ごとに特別ゲストが登場し、4人で推し本について話すイベントです!
『第一芸人文芸部 創刊準備二号』もチケットについてきます。ぜひ!
② カレー出します!
カレーと文学が融合したおもしろ企画に参加させていただきます!
本屋が仕掛ける“ココでしか買えない”読書体験「華麗に文学をすくう?」
赤坂に店舗を構える「双子のライオン堂」さんと、神保町・秋葉原などで「書泉」「芳林堂書店」の2つの屋号で「アタマオカシイ本屋」を展開する株式会社書泉さんの共同企画です!
小説を書いて、その中に登場するカレーがレトルトカレーとして実際に発売します!
執筆メンバーはこちら
・尾崎世界観(ミュージシャン・作家)
・高山羽根子さん(作家)
・青木杏樹さん(作家)
・オルタナ旧市街さん(作家)
・浅生鴨さん(作家)
・第一芸人文芸部:ピストジャム(芸人・作家)ファビアン(芸人・作家)
豪華執筆メンバーに入れていただいて光栄です!
リリースはこちら↓↓
第一芸人文芸部の活動報告
① 毎週水曜22時〜 stand.fm生配信
「今週の推し本」コーナーでは本の紹介、そのほか文学ニュースについて語ったり、活動報告も行なっています!
お便りコーナーもあるので、質問等お待ちしております!
ぜひ聴いてください!
第一芸人文芸部の活動のベースとなっております!
② 毎週日曜16時30分〜BSよしもと『俺の推し本』
こちら7月7日から、毎週レギュラー放送が始まります!
放送後にYoutubeでも公開されると思います!ぜひ見てください!
♯1 村上健志(フルーツポンチ)、さすけ(滝音)
♯2 村上健志(フルーツポンチ)、小野(ダイヤモンド)
♯3 村上健志(フルーツポンチ)、赤嶺総理
文芸誌『第一芸人文芸部』の発売店まとめ
『第一芸人文芸部 創刊準備号/創刊準備二号』ともに一般流通していませんが、以下の本屋さんで取り扱ってくれております。
自信作です!ぜひゲットしてください!
※在庫は各店舗にお問い合わせください。
拙著について
① 『きょうも芸の夢をみる』
2023年3月に発売した“芸人”をテーマにして書いたショートショート&短編小説集『きょうも芸の夢をみる』について、こちらに発刊への想いを綴っています。
そして以下のリンクから芸人の解散をテーマにして書いたショートショート『エルパソ』を無料公開しているので、ぜひ読んでみてください!
② 小鳥書房『本屋夜話』(「小鳥書房文学賞」詞華集: とりをめぐる12話の物語)
こちら小鳥書房さん主催の小鳥書房文学賞を受賞させていただき、その後発売されたアンソロジーです。
“とり”をテーマにした12作。僕の『私・芸能人・鳥』という作品も掲載していただいています!
小鳥書房さんのページはこちら↓↓
過去のアーカイブ
① 特別番組「第一芸人文芸部 俺の推し本」
② Amazon Audible 『本ノじかん』
2023年10月〜2024年3月までの半年間、パーソナリティを担当させていただきました!豪華なゲストと本や創作について語っているのでぜひ!
また番組内の『クチヅタエ』という企画で、バイク川崎バイク(BKB)、しずる・村上、3時のヒロイン・福田、ニッポンの社長・辻、レインボー・ジャンボたかおのリレー小説の連載が完成し、第23回では全員集まって反省会をしています!各回の朗読は、声優の白井悠介さんです!
登録30日間は無料なので、ぜひ聴いてください!