2024年12月前半の読了本+感想
こんにちは!
こんばんは!
おはよう!
年の瀬ですね。
12月1日に文フリ、12月2日・12月26日に「俺の推し本」収録、連載「ショートショートトーキョー」があるおかげで、なかなか慌ただしい執筆&読書ライフを過ごしております。
今年はあと6冊読む予定ですが、間に合うかヒヤヒヤです。
この読書記録と、途中から始めた日記を継続できたことに関しては自分を褒めたいです。特に読書記録は、書評やコラムを書く上でかなり自分の支えとなりました。日記はこれからどうしていこうかな〜と考えています。創作の方が良いのか〜と思ったり。
そして、コツコツと書いていたこちらのまとめが完成したのでぜひチェックして欲しいです↓↓
それでは12月前半の読了本です↓↓
皆さんも年末まで走り抜けましょう!
——2024年12月前半に読んだ本——
①『禁忌の子』山口未桜
すごすぎる。夢中で一気読み。
現役医師が描く医療×本格ミステリー。第34回鮎川哲也賞、満場一致の受賞作。
設定。
救急医・武田の元に搬送されてきたのは、自身と瓜二つの溺死体。
「うーーーーーわ。俺やん」と驚愕する。
顔が似ているだけならあるかもしれないが、全く同じ。
そのほか体毛の生え方まで全く同じで、一卵性の双生児かクローンしかありえない。
彼はなぜ死んだのか、なぜ同じ顔をしているのか。
自分の知らないところで何が起きているのか。
こいつは誰だ。そして「俺」は誰だ?
「キュウキュウ十二」と名付けられた身元不明の遺体の謎に、旧友で医師の城崎と共に調査を始める。
自らのルーツを辿った先にある、思いもよらぬ真相とは――。
感想。
面白すぎる。
一章、二章で武田は自らのルーツを辿っていくのだが、二章の終わり、手がかりを持つ人物が密室で死体で発見される。
うーーーわ。このあとどうするの?と八方塞がりになってからが最高。全く予想できない着地の仕方に「すっげえ〜」と「やられた」が同時に来た。
後半に行くにつれて「禁忌の子」のタイトルの意味が変わってくるのにも度肝を抜かれる。
おそらく途中までは、小説家を志す医師であれば思いつく設定かもしれない。いわゆるベタの範疇かもしれない(僕からしたら違うけれど)。後半に物語の根幹をひねってくれたおかげで本当に思いもよらぬところまでつれて行ってくれた。「こうだったら面白いと思ってくれそうだな」で満足せず、その一歩二歩先まで行くことの大切さを教えてくれた作品。なおかつ家族や夫婦、愛情というものについて考えさせてくれる。
力強くて、緻密で、繊細で、それでいて大胆で、メッシのドリブル見てるみたい。
途中で蘇生シーンがあるのだけれど、ここの描写すごかった。現役医師が綴る臨場感と緊迫感が文体に現れていて、頭の中に映像が浮かび手に汗握りながら読んだ。
②『宙わたる教室』伊予原新
青少年読書感想文全国コンクール課題図書であり、NHKでもドラマ化されたお話。
定時制に通う生徒の成長譚であり、教師・藤竹の想像も超える結末が待っているのが最高だった。登場人物は違うけれど、話の大まかな流れが実話に基づいているというのもグッとくる。
舞台は東京・新宿にある都立高校の定時制。さまざまな事情を抱えた生徒たちが通っている。
・かつて不良で、負のスパイラルから抜け出せない21歳の岳人。
・子ども時代に学校に通えなかったフィリピン人、アンジェラ。
・不登校になり、定時制に進学したものの保健室に登校する佳純。
・中学を出てすぐ東京で集団就職し、病床の妻の世話をしながら通う70代の長嶺。
今なら通信制もあるが、あえて定時制を選んだ生徒たちには“学校へ通う”こと自体への憧れや、かつての自分へ打ち勝つことなど、それぞれ意味を見出している。
担任は理科の教師の藤竹。冷静沈着なキャラクターがまた良い。
昼間は地球科学の研究に勤しむ一方で、夜は定時制の教師として働いている。
藤竹は生徒に寄り添いながら、科学部を結成し、学会で発表することを目標にさまざまな実験を始める。
話の展開としては、特に定時制と全日制の生徒の溝が埋まっていくのが良かった。全くない視点だったが、あーそういうこともあるか〜と思わされた。
また、ただの良い話だけで終わっていないところも良かった。藤竹にも科学部を立ち上げる個人的な目的がちゃんとあって、生徒を思う気持ちだけじゃなく、ただのエゴもあるのが人間っぽくて最高。
科学的な部分で印象に残ったのは、一人ぽっちでの火星探索を14年間も行ったオポチュニティの話。感動した。
「人は、その気にさせられてこそ、遠くまで行ける」
「正解の扉というのはたぶんありません。入った部屋で偶然に誰かと出会い、あれこれ手を動かしてみて、次の扉をえいやと選ぶだけです」
この二文が印象に残ったパンチライン。
③『ふなふな船橋』吉本ばなな
ばななさんが書く、船橋を舞台にしたご当地小説。
ばななさんの代表作を検索しても本作は出てこないけれど、本当に面白くて、心に染みて、隠れた名作だと思う。うわあーと唸るほど、自分と主人公に似た部分があり、共感と発見が多かった。ハッとさせられるパンチラインもたくさん。ぜひ読んでほしい。
主人公は花。冒頭は15歳のシーンから始まる。
花の家族は一家離散することになり、母と新しい旦那さんと一緒に暮らすかどうか考え、船橋で母の妹と暮らすことを決意する。なんとなくその方が良い気がして、その芽生えた感情の芽を大事にしたのだった。
母との別れ際、買い物に行き「梨の妖精・ふなっしー」のぬいぐるみを買ってもらう。「これをお母さんだと思って」と言われ、ずっと持っておくことを約束する。
それから20代のシーンへ。書店員として働きながら、夢の中に出てくる花子、彼氏、友達の幸子、母の妹との関係性の中で暮らしている。さまざまな事件を経験しながら。
感想。
何が良かったって、主人公の境遇は、第三者から見ればかなり特殊で不幸なものかもしれないが、あくまで本人はポジティブに考え行動していること。ほんと読んでいるだけで元気をもらえる。
そんな花が彼氏にとつぜん振られるシーンもすごく良かった。現実感がまるでないまま街を歩き、悲しいのかどうかもわからない。それから数ヶ月かけて、人との関わりや生活を通して、まるで水がタオルに染み込んでいくように、ジワ〜っと喪失を実感していく。あるなあ〜!
④『ハサミ男』 殊能将之
すっごいな。極上のミステリー。色々な人がおすすめしていたから読んでみたけれど、こりゃすごい!
冒頭「ハサミ男の三番目の犠牲者は、目黒区鷹番に住んでいた。」から始まるんだけれど、もう二人死んでるやん!とツッこみながら読んだ。
少し読み進めると、まさかの主人公「わたし」こそがハサミ男だとわかる。
残虐なシリアルキラー“ハサミ男”の目線で読み進める話だとは思わなかった。
それからハサミ男は第三の殺人のため、ターゲットをある女子高生に定め、色々と計画と立てる。ターゲットの街や学校を物色し、どうやれば目的を達成できるか試行錯誤しながら、ついに計画を実行に移そうとするも……なかなかターゲットがやってこない。
諦めて帰ろうとした時、公園で発見したのはターゲットの死体だった。
しかも首元にはハサミが刺さっている。ハサミ男と同じ方法で事件を起こす模倣犯が現れたのだった。
ハサミ男はこのままでは自分が濡れ衣を着せられてしまうと考え、真犯人を見つけるべく奔走する。そう、ハサミ男はここから探偵役も担うことになるのだ。
ここまでは物語の第0章のようなもの。ここから第1章が始まり、「ハサミ男」「警察官」の二つの目線から物語が進んでいく。
感想。
ミステリーなので下手はことは書けないけれど、はーーーーーー、恐れ入りました。そんなところから伏線仕込んでたなんて!完全に、あっけなく、騙されました。
真相を知った時は混乱して、え、え、どゆこと、あ、まさか、うおおおおーーーーーーーーー。みたいな感じ。とにかく面白かった。
⑤『一駅一話! 山手線全30駅のショートミステリー』 柊サナカ
山手線全駅分+ひとえきの書き下ろし短編集。
長編より短編集の方が読むのに時間がかかるのは、毎度毎度、設定と登場人物を理解しないといけないからかも。
その分、読み応えはすごかった。
一気読みは大変だけれど、1日に少しずつの読書にはかなりおすすめ。面白い。
僕も「山手線」をテーマにショートショートを書きたくて設定を出していたのだが、こちらが先に出たので断念して、テーマを東京にすることに。
さらに設定などが被らないように、読む必要があった。
ショートミステリー集なので、毎回そこには違った謎と伏線がある。一つ一つの話が、本の中の他の話と被らないように書き分けるのはかなり大変だっただろうな〜。
お気に入りは
・江戸川乱歩「押絵と旅する男」から着想を得て書かれた『推し絵と旅する男』(浜松町)。
・SNSで誹謗中傷する息子を発見し、それを諌めるためにアカウントを作った母の話『ドロシーちゃん』(駒込)
・大きな仕事が決まった女優が、スキャンダル対策として過去のいじめ加害を清算する話『過去の代償』(代々木)
・五十代女性と全身タトゥーの女性と出会いを描いた『わたしの桜吹雪』(五反田)
特に『わたしの桜吹雪』は最高だった。
野球で例えるならストレート、スライダー、カーブ、フォーク、チェンジアップ、ナックルなど、本当に作風が豊かで、30本も似通わないストーリーを紡ぎ上げたのがすごい。
——今後の予定——
① 『華麗に文学をすくう? 第3弾』
カレー出します!!
さまざまなストーリーを、カレーにのせてお届けする新企画「華麗に文学をすくう?」に参加させていただきました!
こちらピストジャムさんとの共作で、書き下ろし小説『Lemon』+作中に登場するオリジナルレトルトカレーのセットで販売します。
オンラインのほか『双子のライオン堂(赤坂)』『書泉グランデ(神保町)』『書泉ブックタワー(秋葉原)』『芳林堂書店 高田馬場店』でも購入できます。
めちゃくちゃ面白く&美味しく仕上がっています!!!
② 第一芸人文芸部『俺の推し本。』公開収録
なんと
NHKドラマ『宙わたる教室』の原作小説を執筆し、『藍を継ぐ海』が直木賞候補作に選ばれたた伊与原新さん
グラフィティアートをテーマに書いた小説が松本清張賞に輝いた井上先斗さん
面白いと話題のエッセイを上梓した小原晩さん
がきてくださります。
作家スペシャル回ですね。色々なお話を引き出したいと思います。
③『ZINE FEST TOKYO』出店します!!
日時:2025年1月11日 12時-17時
入場料:500円(当日入り口・現金のみ)
場所:東京都立産業貿易センター 台東館(浅草駅徒歩5分)
レギュラー活動
① 毎週水曜 22時〜 stand.fm生配信
今週の本紹介、文学ニュース、活動報告などを行なっています。
お便りコーナーもあるので、質問お待ちしております。
第一芸人文芸部の活動のベースです!
② 毎週日曜 16時30分〜BSよしもと『俺の推し本』
放送予定
12月22日 BKB(バイク川崎バイク)、ダイタク・大
12月29日 BKB(バイク川崎バイク)、ヒューマン中村
1月12日 吉本ばなな、又吉直樹、BKB(バイク川崎バイク)
1月19日 吉本ばなな、又吉直樹、BKB(バイク川崎バイク)
ダイタク・大の回はM-1直前のオンエアになりましたね。めちゃめちゃ応援します。
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出版中の本について
※)Amazon、読書メーター、ブクログなどで感想書いていただけたらめちゃくちゃ喜びます!!
寄稿(WEB)
どれでも良いので読んでみてください!!
・現在連載中の「ショートショートトーキョー」
・「きょうも芸の夢をみる」からショートショート『エルパソ』を無料公開!
・「シゴトゴト」というサイトで過去に連載していたときの自信作。