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レトロでモダンな魅力 杉浦非水がデザインの基礎とした写生の精神とは
日本のグラフィックデザインの先駆者であった杉浦非水の図案と精神を、現代の暮らしの中で楽しめる「マルチクロス」にしました。
みなさまこんにちは。ミュージアム部 mitu.です。
江戸時代の浮世絵から大正・昭和の広告デザイン、そして現代にいたるまで「グラフィックデザイン」にめっぽうトキメク私ですが、みなさまにぜひ知っていただきたいデザイナーがいます。
それが、明治後期から昭和初期にかけて「図案家(グラフィックデザイナー)」として活躍した杉浦非水です。
2021年にも展覧会「杉浦非水 時代をひらくデザイン」とミュージアム部とのコラボ企画によりご紹介した杉浦非水ですが、今回は新たに企画したグッズの紹介とともに、さらなる杉浦非水の魅力をご紹介します。
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モダンデザインのパイオニア・杉浦非水“先生”
明治9年(1876)愛媛県松山市生まれ。本名、杉浦朝武。
東京美術学校(現・東京藝術大学)日本画科を卒業し、明治、大正、昭和にかけて企業広告やポスター、装丁などを多数手がけ、モダンデザインの先駆者として活躍しました。
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当時は、まだグラフィックデザイナーという職業のない時代。いわば非水こそが、日本最初のグラフィックデザイナーとして、その道を切り拓いていきました。
特に27年も長い期間在籍し、ポスターやPR誌の表紙など様々なデザインを一手に引き受けた「三越呉服店(現・三越)」での仕事は有名で、近代日本における“ブランディング”の最初の成功例とも言われています。
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出典:国立国会図書館「NDLイメージバンク」
さらに、非水は図案についての、普及者・教育者でした。
帝国美術学校(現・武蔵野美術大学)の教授をつとめた後、多摩帝国美術学校(現・多摩美術大学)の初代校長兼図案科主任教授に就任。後進への指導にも力を入れていました。
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出典:国立国会図書館「NDLイメージバンク」
非水先生が大切にした写生の精神
モダンなグラフィックが印象的な非水ですが、独創的な図案は自然をよく観察することから生まれると考え、自然の写生を重んじ、デザインの基礎と位置付けていました。
そんな彼が自然界に咲く花を題材とし、原画担当した木版画集が『非水百花譜』です。植物図譜のような写実性ながら、観る人を魅了する芸術性にもあふれています。
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左下:『非水百花譜 第17輯』もくせい 右下:『非水百花譜 第4輯』つばき
出典:国立国会図書館「NDLイメージバンク」
非水の優れたデザインの根底には、写生で培われたデッサン力と観察力がありました。自然を愛した彼は、動植物をモチーフにした数多くの図案を残しています。
2冊の図案集から植物と鳥の図案を選出
今回「マルチクロス」のデザインには、非水の2冊の図案集から「植物」と、動物の中でも特に非水が好んだと言われている「鳥」の図案を選んでいます。
この「図案集」というのは、多くの企業の仕事を請け負っていた非水が、自らのスタイルを世の中に発信する方法として、企業からの制約を受けない形で作品を発表する場としてとった方法です。
『非水花鳥圖案集』平安堂書店 大正6年(1817)
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出典:国立国会図書館デジタルコレクション(参照 2024-11-20)
巻頭の言葉として、非水は 「自然に対する興味が自分の生活の大部分を占めて」おり「自然の理に息づいている私たちは、自然を離れて自己表現する方法がないのは当然」と述べています。
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出典:国立国会図書館デジタルコレクション (参照 2024-11-20)
そんな『非水花鳥圖案集』からは、前後をセットで描いた孔雀や、アシンメトリーの植物などを選んでいます。
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出典:国立国会図書館「NDLイメージバンク」
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出典:国立国会図書館「NDLイメージバンク」
『非水創作図案集』文雅堂 大正15年(1921)
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出典:国立国会図書館デジタルコレクション (参照 2024-11-20)
そして、非水がヨーロッパ留学後に刊行した『非水創作図案集』。
『非水花鳥圖案集』をはじめとする非水の図案集が関東大震災で絶版となったことを受け、これらを補うべく少しずつ図案を描きため、制作された一冊。より大胆な構図や新しいモチーフの採用など、ヨーロッパでの留学の成果が反映されています。
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出典:国立国会図書館「NDLイメージバンク」
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出典:国立国会図書館「NDLイメージバンク」
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出典:国立国会図書館「NDLイメージバンク」
そんな非水の進化が見て取れる『非水創作図案集』からも、より多くの図案を採用しています。
モダンな魅力あふれるマルチクロス
どちらの図案集も今から100年以上前のもの(!)にもかかわらず、レトロ感漂いつつも、現代においても古さを感じさせないモダンな魅力があると思いませんか? そんな時代を超えて魅力を発揮する非水図案をマルチクロスにプリントしています。
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デザインは〈PURPLE〉〈YELLOW〉〈GREEN〉の3種類。
〈PURPLE〉
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〈YELLOW〉
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〈GREEN〉
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綿100%のやわらかな素材に、非水図案をプリント。元作品の“かすれ”や色の重なりなども感じていただけるように表現しています。
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大判サイズなので、スカーフのようにコーディネートに取り入れたり、エコバック代わりに風呂敷遣いにしたり、ランチョンマットや一人用レジャーシートなどの敷物として使うのもおすすめです。
このマルチクロスをもって、非水のように写生に出かけてみませんか?
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ミュージアム部 杉浦非水図案がモダンなマルチクロスの会
月1枚 ¥1,350 (+10% ¥1,485)
※1枚だけ(1ヵ月だけ)の購入も可能です。
※詳しくは「初めての方へ・お買い物ガイド」をご確認ください。
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非水の故郷「愛媛県美術館」
東京で活躍した杉浦非水ですが、その生まれは愛媛県松山市です。
東京美術学校(現・東京藝術大学)に入学するために上京する明治30年(1897)までは、松山の自然に囲まれて過ごしました。非水は、幼少期から絵を好んで描いていたそうです。
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松山市にある愛媛県美術館。松山城のお堀の中。広い芝生広場開けた空が気持ちいい、城山公園(堀之内)の中にあります。
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モネ、セザンヌ等の海外作家の作品や、近代日本を代表する安田靫彦、中村彝等の作品だけでなく、収郷土出身作家である、柳瀬正夢、野間仁根、真鍋博、畦地梅太郎、そして杉浦非水の大規模なコレクションをお持ちです。
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右:《三越呉服店 新館落成》大正3年(1914)愛媛県美術館蔵
コレクション展の中では、膨大な非水コレクションの一部を見ることができます。ぜひ、この機会に非水の故郷で非水の作品を鑑賞しませんか?
愛媛県美術館
〒790-0007 愛媛県松山市堀之内
開館時間:9時40分~18時(入室は17時30分まで)
休館日:月曜日 (祝日及び振替休日に当たる場合は、その翌日)
ただし毎月第一月曜日は開館、翌火曜日が休館。
(年末年始 12月29日~1月3日)
※詳しくは公式HPをご覧ください。
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