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クリムトの世界に魅了される色えんぴつ 20/500 COLORED PENCILS

500色の色えんぴつから、新しいテーマで20色を選んでお届けする「20/500 COLORED PENCILSシリーズ」に画家・クリムトバージョンが登場!

みなさま、こんにちは。ミュージアム部・アートナビゲーターのなりちゃんです。今回は、フェリシモの「500色の色えんぴつ TOKYO SEEDS」とミュージアム部が一緒に企画した、20/500 COLORED PENCILSシリーズの第4弾「クリムトの世界に魅了される色えんぴつ」をご紹介します。

クリムトの世界に魅了される色えんぴつ 20/500 COLORED PENCILS

20/500 COLORED PENCILS
シリーズ累計12万セット、世界55ヵ国で愛されているフェリシモの「500色の色えんぴつ TOKYO SEEDS 」。その名の通り圧倒的な色数と、日本製のたしかな品質、そして創造性を刺激するユニークな色名が人気。
この500色の色えんぴつの中から20色をセレクトして【新しい20色での表現】を生みだすのが「20/500 COLORED PENCILS」シリーズです。「塗って楽しめるアート」をモットーにしています。
これまでに「増田セバスチャン STUDIO COLOR PALETTE」・「江戸をぬりつぶせ!HOKUSAI色えんぴつ」「チョコレートバイヤーが選んだ チョコレートを描くのにぴったりな色えんぴつ」などをリリース。

官能の画家グスタフ・クリムト

オーストリアを代表する画家、Gustav Klimt グスタフ・クリムト(1862-1918)について、まずは簡単にご紹介します。

「数百年前からの画題を、伝統的な技法で描く絵画こそが素晴らしい。独自の解釈や革新表現は必要ない」――そのように19世紀末のウィーン画壇を支配していた保守的な美術家組合クンストラーハウス から分離し、新しい芸術をめざす芸術革新運動が「ウィーン分離派」です。
クリムトは分離派の初代会長となり、オーストリアのユーゲント・シュティール(アール・ヌーヴォ―)を代表する芸術家として活躍しました。

Photographic portrait of Gustav Klimt 1914 Josef Anton Trčka (1893–1940)

特に女性を描いた作品を多く残しましたが、その官能的な表現はときに厳しく非難を受けながらも鑑賞者を強く引きつけ、作品は現在も多くの人に愛されています。

クリムトの黄金様式

そんなクリムト作品の中でもよく知られているのが、金箔を使って描いた1900年代の黄金様式の作品たち。尾形光琳をはじめとする日本の琳派りんぱや、ラヴェンナ旅行でのサン・ヴィターレ聖堂のビザンツモザイク画など世界の美術から受けた影響、20代の頃の装飾画家としての活動など、さまざまな経験を礎にして花開いたクリムトならではの表現です。

グスタフ・クリムト 《接吻》1907–1908年
ベルヴェデーレ宮殿 オーストリア・ギャラリー

黄金様式で描かれた作品たちは、きらびやかで絢爛豪華。しかしその向こう側に生と死を感じさせる奥行きもまた持っているのではないでしょうか。
工芸品のような存在感をそなえながら、象徴的ですらある。永遠のような刹那のような、現実と非現実のはざまのような……。死の気配によって閃光のようにきらめく生が、現世の私たちを刺しつらぬく。ひとことで言いあらわすことのできない、くらくらするような唯一無二の引力を感じます。

クリムトの世界に魅了される20色

そんなめくるめくクリムトの世界を、ミュージアム部が「500色の色えんぴつ」の中から20色を選んで表現しました。黄金様式を中心としたクリムトの作品、彼の信念や交友関係にまつわるエピソードも交えて、新たな色名を名付けています。

20色すべてにクリムトをめぐるストーリーがありますが、ここでは5色をピックアップしてご紹介します。

1.時代には芸術を。芸術には自由を

クリムトといえば、やっぱり欠かせないゴールド。まずはクリムトの活動と交えてご紹介したいのがこちらの金色です。

クリムトたちが設立した「ウィーン分離派」は「活動発表の場を用意すること」からはじまりました。もちろんインターネットなどない時代。展示や雑誌が発信メディアとして重要な役割を果たしました。

そこで彼らが1898年に展示会場として建てたのが「分離派会館 (セセッション)」。「総合芸術」を志向した分離派には、絵画・彫刻・工芸など多分野の若手芸術家が参加していました。メンバーの建築家、ヨーゼフ・マリア・オルブリッヒ(1867-1908)が設計したのがこの分離派会館です。

2010年にウィーンにて撮影した分離派会館

ここに掲げられたのが、"DER ZEIT IHRE KUNST,DER KUNST IHRE FREIHEIT"(時代にはその時代にふさわしい芸術を、芸術には自由を)という分離派の信条。

神殿のように重厚な歴史主義建築が立ち並ぶ街並みで、ひときわ目立つこの前衛的な建築は賛否両論。「黄金のキャベツ」とも揶揄やゆされましたが、「伝統にとらわれている場合ではない。新たな時代にふさわしい、新たな芸術表現をここから発信するのだ」という芸術家たちの意欲の表れだったのでしょう。現在はクリムトの壁画「ベートーヴェン・フリーズ」が地下に展示されています。

この精神をイメージして選んだのが、こちらのゴールド。色を実際に塗ってみると、しっとりつやめくメタリックな金色です。

2.「ぼくの真実は絵の中にある」

話すことも書くことも得意ではなかったクリムト。自ら芸術論を語ることをせず、「絵画や文字による私の自画像はない。自分を知りたいと思うなら絵を注意深く見て欲しい」という意味の言葉を残しています。

© Moritz Nähr, Gustav Klimt mit Katze, 1912, Leopold Privatsammlung

猫好きだったクリムトのアトリエには8~10匹の猫がいたそう。ここで抱きかかえられている猫は、カッツェ(Katze:ドイツ語で猫の意味)と呼ばれていたのだとか。

いかにも芸術的で、官能的な作品たち。どんな芸術家が描いたのかと思えば、レスリングで相手の骨を折ったことがある(!)ほどの筋肉マッチョ&禿げ頭といういかつい見た目。一方で、貧乏な後輩や困ったモデルたちを放っておけない、気前と面倒見のよい人情家。「猫がデッサンを破いたりしわくちゃにしたって、また別のを描くだけさ」という言葉も残っています。
そんなクリムトの深みのある人間性を表すのに、あたたかみのあるこのやさしいニュアンスグレーを選びました。私はこの色がいちばん好きです。


続いて、今回のパレットの中でひときわ鮮やかな、コバルトブルー、明るい赤、ピンクパープル。クリムトを取り囲む女性たちをイメージした3色をご紹介します。

3.エミーリエのモダンドレス

クリムト生涯のパートナーと言われる、エミーリエ・フレーゲ。ウィーンでモード・サロンを営んだ先進的な女性です。ウェストを締め付けない自由で美しいドレス「改良服」をデザイン・販売し、ウィーンのファッション文化にも影響を与えました。

グスタフ・クリムト《エミーリエ・フレーゲの肖像》1902年,
ウィーン・ミュージアム・カールスプラッツ


この肖像画は、パトロンからの受注ではなく自発的に描いた作品。ところがエミーリエは、この絵は気に入らないと売ってしまったそう。なんでも言い合える仲、そしてクリムトにとっての彼女は今風に言うところの「おもしれー女」だったのかもしれません。

クリムトの最期の言葉「エミーリエを呼んでくれ」も、ふたりの深い人間的な結びつきを示唆するエピソードです。しかしクリムトの没後、彼女はクリムトと交わした手紙を燃やしてしまったため、ふたりの物語は灰になった手紙だけが知っています。

4.赤毛のヒルダ

黄金時代の傑作《金魚》や《ダナエ》は「赤毛のヒルダ(Red Hilda)」がモデル。エミーリエに次いで、クリムト作品のモデルをつとめています。代表作《接吻》に描かれたのは、エミーリエともヒルダともいわれています。

グスタフ・クリムト《ダナエ》1907-1908年, ヴュルトレ画廊

ヒルダがモデルをつとめた絵は、どこか挑戦的・官能的な印象を受けます。そんなイメージから、どこか勝ち気ではすっぱな魅力のある赤色を選びました。

5.モデルたちのおねだり

クリムトは生涯で2~3,000点の素描を描いただろうと言われています。手が慣れてしまわないように右手と左手を交互に使って、素早くモデルをデッサンしていました。
たくさんのモデルが出入りしていたというクリムトのアトリエ。モデルが「家賃が・出産費用が・葬式代がちょっと足りなくなっちゃった」と言えば、クリムトは「5クローネで足りるかい」などと手渡していました。あれは嘘だと友人に注意されても、クリムトは笑って肩をすくめました。クリムトが存命中から多くの人に愛され囲まれたのは、そんな人柄もあってのことに違いありません。

グスタフ・クリムト《希望 I》(部分) 1903年, カナダ国立美術館

お気に入りのモデルのひとり、ヘルマ。妊婦をモデルとしてアトリエへ呼んだことや、妊婦の裸体表現については多くの批判を浴びましたが、作品にはすぐに買い手が付きました。

そんなモデルたちのエピソードから、小悪魔的でコケティッシュなピンクパープルを選びました。

残る15本についても、それぞれの色と名前をじっくりと味わっていただけたら幸いです。黄金の古都ウィーンの伝統とモダニズム、クリムトの言葉や人間関係、作品に込められた哲学……。色名からその先を知りたくなる、知れば知るほどにクリムトの世界に魅了される、そんな名付けを目指しました。

「クリムトの世界に魅了される色えんぴつ 20/500 COLORED PENCILS」20の色名

「アッタ―湖畔でのサマーバカンス」「ゲオルクの額縁」「クリムトのカッツェ(猫)」「手紙だけが知るふたりの物語」という色名の由来についても、本noteにてエピソードをご紹介しています。

20/500 COLORED PENCILSのスペシャルセット

クリムトの世界に魅了される色えんぴつ 20/500 COLORED PENCILS」では、パッケージやお届け内容も、クリムトらしさにこだわっています。

お届けセット内容

専用スリーブには、 代表作《接吻》に金の額を箔押しプリント。さらに、金の箔押し装飾をほどこしたメッセージカードをセットでお届けします。

セットでお届けするメッセージカードとの相性は抜群!

そして、色えんぴつとしての品質も、「500色の色えんぴつ」こだわりのメイド・イン・ジャパン!

※写真は今回のセット内容とは別色です。

芯は、日本唯一といわれる山梨県甲府市の色芯工場でつくったもの。私も実際に手に取って何度もためし描きをしましたが、約3.5mmの太しんは描き心地もなめらか。繊細で美しい発色が魅力です。

※写真は今回のセット内容とは別色です。

木製ボディーは東京の葛飾・荒川で伝統ある町工場で。太めの四角ボディーに絶妙な角の丸みは、手にしっくりなじみます。机の上で転がらないのも、実際に創作をするときにうれしいポイント。

ぜひ、この色えんぴつでクリムトの世界を楽しんでくださいね。

クリムトの世界に魅了される色えんぴつ
 20/500 COLORED PENCILS

1セット ¥4,000(+10% ¥4,400)
※500セット限定
※パブリックドメイン作品をもとに商品化しています

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【コラム】クリムト作品のディテール

色えんぴつのご紹介は以上ですが、もう少しだけ、クリムト作品の魅力をご紹介させてください。作品をズームアップして、細部やマチエール(質感表現)を見てみれば、きっと創作意欲もふくらみそうです。

グスタフ・クリムト《マルガレーテ・ストンボロー=ウィトゲンシュタインの肖像》(部分)
1905年, ノイエ・ピナコテーク


個人的な話をはさんで恐縮ですが、私が美術好きになったのはクリムトがきっかけでした。高校生の頃、図書室のいつもと違う書架で大きくて重い本――世界美術全集をたまたま開いたその日、クリムトの輝く金色に心を奪われました。西洋美術史を専攻し、ウィーンやドイツの美術館をめぐり、クリムトに関する卒論を這う這うの体で提出し……そんなわけでクリムトには思い入れがあります。こちらはミュンヘンで撮影した写真です。

上の写真は、クリムトが上流社会の人々を描いた肖像画のひとつ。一部には金箔も使われています。装飾的で平面的な文様の上に、肖像的・立体的な人物が浮かび上がるように描かれています。

グスタフ・クリムト《マルガレーテ・ストンボロー=ウィトゲンシュタインの肖像》(部分)1905年, ノイエ・ピナコテーク

ドレス部分を拡大すると、繊細な色合いで幾重にも重ねられた描き込み。一枚の絵に、さまざまな筆のタッチやストロークを観察することができます。

グスタフ・クリムト 《パラス・アテナ》 1898年, ウィーン・ミュージアム

威厳に満ちた女神アテネの姿を描いた作品。作品名を打ち出した金属の額縁は、彫金士の弟・ゲオルクが手掛けたもの。グスタフ兄弟の共作です。
アテネの兜、保守的な伝統主義たちに挑戦的に舌を出すかのようなゴルゴンの胸当て、拒絶と戦闘の意志を感じる黄金の長槍などをよく見ると、微妙に異なるゴールドが使われています。

今回の色えんぴつセットには、3色のゴールド系カラーと3色のシルバー系カラー、めずらしいメタリックカラーの色えんぴつがぜいたくに6本含まれています。絶妙な金色の違いを、ぜひ手もとで試して実感してみてください。

グスタフ・クリムト《生と死》(部分)、1908-1911年,レオポルトミュージアム

こちらは晩年期の代表作《生と死》を拡大したもの。色面は強く塗りこめられていますが、肌も一色のベタ塗りではなく、たくさんの色が使われてやわらかい肌のぬくもりが表現されていることがわかります。輪郭線にブルーグリーンを使ったり、影に淡いブルーを使ったり。ディテールをじっくり観察するだけでも楽しめます。

グスタフ・クリムト《アッタ―湖畔》1900年, レオポルド美術館

アッタ―湖畔での風景画については、岸辺から離れたボートの上から、オペラグラスで覗いて見えた建築物を平面的に描いたり、描きかけの場所にイーゼルを置いたまま木の葉で隠して帰ってきた、というようなエピソードもあります。

人物画が有名なクリムトですが、35歳頃から描いている風景画が本当に素晴らしいので、最後にぜひ一枚ご鑑賞ください。クリムトとエミーリエは、毎年アッタ―湖畔でしあわせな夏の休暇を過ごしました。早起きして森を散歩し、湖でヨットを走らせ、そして、まばゆい夏の光にきらめく水面や木立のざわめきを、美しく静謐に描きあげています。ずっと見ていたくなる青のグラデーションです。

言葉ではなく、作品で語ったクリムト。雄弁なタッチを見ているだけで、むくむくと創造力を刺激されます。あなたも色えんぴつで思うままに色を表現してみませんか。

20/500 COLORED PENCILS 第二弾
和樂webとのコラボで生まれたHOKUSAI色えんぴつ

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