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もっと早く教えてほしかった、お酒の飲み方
お酒を飲むようになって早10年。二日酔いに苦しんだり、脂肪が増えてきたり、無理ができていたのは20代までで、30代になると体の衰えを感じるようになってきた。皆さんはお酒を楽しめているだろうか?
先日、たまたま下記の本を借りた。
酒飲みなら知っておいた方がいい内容、というか、義務教育でドーパミンの仕組みと一緒に教えた方がいいと思うレベル。体に優しいお酒の飲み方を覚えておきたいのでまとめてみる。
1:適量を守れば”メリット”がある
「お酒を飲むと風邪をひきにくい」と聞いたことはないだろうか。まだ因果関係は特定できていないようだが、どうやら飲酒にはウイルス感染に効果がある可能性があるらしい。逆に細菌には感染しやすくなっている可能性もあるようだ。
お酒は百薬の長ではない。よく聞かれるこの言葉は誤用だが、お酒にはアルコール以外にも様々な成分が入っており、あくまで適量を摂取できれば体にメリットもある。
1日あたりの適量と言われる純アルコール摂取量は「20g」とされている。
純アルコール摂取量20gの目安
・ビール:ロング缶1本
・日本酒:1合
・ワイン:2杯弱(200ml)
・ウイスキー:ダブル1杯(60ml)
・缶チューハイ:1缶(350ml)
休肝日を作れば翌日ビールのロング缶が2本飲める、とも言えるかも知れないが、毎日酒を飲んでいるような奴が休肝日を作ると、翌日我慢ができずに大量に飲んでしまうものだ。それなら1週間の摂取量で管理できれば良いので、アル中気味の酒飲みは「毎日適量」を目指すのがオススメだ。
「ダイエットしているなら蒸留酒」はまるで常識のようになっているが、実はビール、ワイン、日本酒は蒸留酒よりカロリーが低い。確かに糖質は蒸留酒より醸造酒の方が含まれるが、ダイエットをしたいならお酒より食べ物を気をつけるべきなのだ。なんとビールが一番カロリーが低く、ジンはかなりカロリーが高い。そして体に良いとされる赤ワインは他の醸造酒よりは糖質が低い。
ビール、日本酒、赤ワインの良いところを見てみよう。
【ビールのいいところ】
・悪玉コレステロールを減らし、内臓脂肪を減らす
・腸内細菌の餌になって善玉コレステロールを増やす
・腸内細菌のバランスを整える(整腸効果)
・新陳代謝を活発にさせ、疲労を回復させる
・骨粗しょう症や更年期障害の予防、アンチエイジングに効果あり
・ポリフェノール(イソα酸)で認知機能向上(アルツハイマーの進行抑制)
→腸を元気にすると脳も元気になる(脳腸相関)
メリットを得るためには「非加熱・無濾過」のビールがオススメ
【日本酒のいいところ】
・アミノ酸が多い
・疲労回復、筋肉・肝機能・免疫機能の改善強化
・血圧上昇を抑制
・学習や記憶力の改善(認知症予防)
・動脈硬化や心筋梗塞の予防
・美容効果
・冷えやむくみ、肩こりにも良い血行促進
→ 生活習慣病や老化予防になる
アミノ酸が多いのは本醸造酒ではなく「純米酒」
【赤ワインのいいところ】
・抗酸化作用のポリフェノールが多い
・血圧や血糖値の上昇を防ぐ
・コレステロールを減らす
・視力低下や眼精疲労の改善
・免疫機能の活性化
・脳の機能改善(認知症・アルツハイマーの予防)
→ 長生きに貢献(フレンチパラドックス)
蒸留酒についても見ていこう。
焼酎にはホワイトリカーと呼ばれる「甲類焼酎」とアナログな単式蒸留法の「乙類焼酎」、この二つをブレンドした「甲乙混和焼酎」がある。乙類焼酎の材料は様々で、好みの焼酎を探してみるのも楽しい。例えば泡盛はタイ米を原料に黒麹を使っている。乙類焼酎は血栓を溶かして血液をサラサラにするが、香りを嗅ぐだけでも効果があるらしい。
ウイスキーの香りにもストレスを抑制する効果や自律神経を整えてリラックスする効果がある。熟成年数が長ければ長いほどその効果が高くなる。
ウイスキー独特の「樽ポリフェノール」は抗酸化作用(アンチエイジング)があり、美白効果を期待できる。
2:お酒に強いか弱いかは遺伝子で決まる
お酒を飲むとまずアルコールが胃で20%吸収され、残りの大半のアルコールが小腸で吸収される。そして血液に乗って脳や心臓、肝臓に運ばれる。一部のアルコールは尿や汗、呼気として排出される。
血液に乗ったアルコールは肝臓に運ばれた時にアセトアルデヒドに分解される。アセトアルデヒドも血液に乗って体を巡り、顔が赤くなったり、心拍数が上昇したり、頭痛を起こしたり、気持ち悪くなって吐いたりする。そしてまた肝臓に戻ってきて分解され、無害の酢酸になる。
アルコールが血液に乗って脳に入るとまず前頭葉が麻痺する。陽気になり、気が大きくなって普段なら言えないようなことも言ってしまったり、多幸感に包まれる。前頭葉の麻痺によって「扁桃体ハイジャック」が起きやすくなる。(感情のコントロールができず、泣き出したり怒ったりする)
さらに大脳皮質の麻痺で痛覚などの感覚器官が鈍くなり、小脳が麻痺すると千鳥足になったり呂律が回らなくなったり言語があやふやになったりする。
さらに海馬が麻痺すると同じ話を何度もしたり、記憶を無くしたりする。海馬は脳の内部にあるのでここまで麻痺が進行すると相当量のアルコールが入っていると考えていい。
脳が疲れていると「酔い」が回りやすいため、安全に酔いたいときは疲れている時は避けるべきだ。
お酒を飲むとなぜ眠くなるのだろうか。いろんな要因があるが、まずアルコールはGABAと同じ受容体にくっつくため鎮静効果がある。また、意識の維持を担っている脳幹網様体が麻痺して眠くなる場合もある。
お酒に弱い人はアセトアルデヒドの「フラッシング反応」によっても眠くなる。アセトアルデヒドは寝つきは良くても睡眠の質を下げるため、眠れるようにお酒を飲むのは良くないと言える。
アルコールへの強さやどんな病気になりやすいかは遺伝子で決まる。
NN型:お酒に強く、顔も赤くならない(日本人の約56%)
■ Aタイプ
アルコール→アセトアルデヒドへの分解が遅く、アセトアルデヒド→酢酸への分解が速い。アルコール依存症に最もなりやすい。
■ Bタイプ
アルコール→アセトアルデヒドとアセトアルデヒド→酢酸の分解のどちらも早く、最もお酒に強い体質。
ND型:そこそこ飲めるが顔が赤くなる(日本人の約40%)
■ Cタイプ
アルコール→アセトアルデヒドとアセトアルデヒド→酢酸への分解のどちらも遅い。酔いやすくお酒好きになりやすいが二日酔いになりやすく、食道がんなどの飲酒関連疾患のリスクが一番高い。
■ Dタイプ
アルコール→アセトアルデヒドの分解が早く、アセトアルデヒド→酢酸の分解が遅い。顔がすぐ赤くなり、二日酔いになりやすい。慣れると多少飲めるようになるが健康問題のリスクがある。
DD型:少しのお酒で真っ赤になる(日本人の約4%)
※アルコール消毒で赤くなるほどアルコールに弱い
■ Eタイプ
アセトアルデヒドの分解ができない。
自分はそれぞれどの遺伝子を持っているのかは検査キットで簡単に分析してもらうことができるので、気になる人は調べてみよう。
お酒をよく飲むと通常の代謝経路ではない経路でも代謝されるようになるが、あくまでも補助機能のため、通常代謝経路が強い人と比べてアルコールによる健康リスクが跳ね上がる。
また体の大きい人は血液量も多く、肝臓も大きいため、体の小さい人(体重が軽い人)よりアルコールの分解が早いとされる。医学的にも1時間で処理できるアルコール量は「体重1kgあたり0.1g」とされている。
当たり前だが、年をとると代謝能力も低下する。若い時より体内の水分量が減っているので血中アルコール濃度が高くなり、酔いが回りやすくなる。
二日酔いになりやすくなる心理的な要因もある。
・飲酒に対して罪悪感を持っている
・神経症的な不安を持っている
・怒りやすい
・酔っている時に落ち込みやすい
・ネガティブな出来事があった
・生理中である
つまり、「楽しくお酒を飲めていない時」に二日酔いになりやすいと言える。添加物のせいの時もあるので、自分の体質でどういうときに気分が悪くなりやすいかは把握しておくのがよい。
3:お酒に関連した健康診断の数値
酒飲みを毎回不安にさせたり安心させたりする健康診断の数値から、お酒に関連したものを見てみる。
-- 「肝臓系」の数値
【 ALT(GPT)】
肝臓の細胞が壊れた時に出る酵素。食べ過ぎや脂質の取りすぎで数値が増える。
【 AST(GOT)】
同じく肝臓の細胞が壊れた時に出てくる酵素だが、心臓や筋肉からも出る。この数値だけ高いときは肝臓以外の病気の可能性あり。ALTよりASTの方が高いとアルコールによる脂肪肝の可能性。
【 γ-GTP 】
肝臓の細胞の中で作られ、解毒作用に関係あり。特にアルコールに敏感に反応するので、お酒を飲むとまずγ-GTPが上がる。男性に比べ、女性の方が低い傾向がある。体質にもよるが、γ-GTPが100を超えたら飲みすぎ。
【 アルブミン 】
主に肝臓で作られるたんぱく質。血液や水分の調整、筋肉をつくる。これが少ないと低栄養状態。この数値が低くなると肝臓が相当にヤバイ。
-- 「脂質代謝系」の数値
【 LDL 】
肝臓でつくられたコレステロールを全身に運ぶ役割。これが増えると動脈硬化となるので悪玉コレステロール。
【 HDL 】
増えすぎたコレステロールを回収して肝臓に戻す役割。善玉コレステロール。赤ワインはこれを増やす。
【 中性脂肪(トリグリセリド)】
血液中の脂肪。エネルギーを全身に送ったり、脂肪細胞にためたりする。内臓にたまれば内臓脂肪、肝臓にたまれば脂肪肝となる。脂肪分や糖分、お酒の飲みすぎで上がる。もともとお酒に弱かったけど鍛えて飲めるようになった人は上がりやすい。
遺伝的に高めの人、低めの人がいるので、平均値に惑わされず、前回の数値と比べて異常がないかを見るのがよい。
4:体に良い”おつまみ”
お酒を飲むと血糖値が下がる(アルコール性低血糖)ため、お酒を飲むときは必ず食事とセットにする。
-- お酒を飲む前に食べておいた方がいいもの
【 油や脂肪 】
長く胃にとどまり、アルコールの吸収を穏やかにする。また、胃の幽門を閉めて小腸にアルコールが一気に行かないようにする。ちょこっとの唐揚げでもよい。
★オススメ:魚のカルパッチョ、ナッツ
【 タンパク質 】
アルコールと胃の粘膜の接触を緩和する。
★オススメ:牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品
【 キャベジン(ビタミンU)】
胃酸の分泌を抑制し、胃の粘膜を修復する。
★オススメ:キャベツ(脂っこい食べ物の消化も促進してくれる)
【 ネバネバ成分 】
胃の粘膜を保護する。
★オススメ:山芋、里芋、オクラ、モロヘイヤ、なめこ、もずく、めかぶ
【 ウコン(ターメリック)】
肝臓の解毒作用を高める。
【(商品名だけど)ヘパリーゼ 】
悪酔いや二日酔いを防ぐ。
【 五苓散(漢方)】
体の水分バランスを整える。体の余分な水分を排出するときにアセトアルデヒドも出してくれる。二日酔いに効果的。
-- おつまみベスト3
1位:ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツ、菜の花、ケール、ルッコラなどのアブラナ科
・肝臓の解毒作用、分解作用を高める。
2位:イカ、タコ、貝類
・タウリンが豊富で中性脂肪やコレステロールを減らし、肝臓の細胞を活性化し、胆汁酸の分泌を高める。
3位:豚の赤身(ヒレ)や豆類(枝豆/豆腐/納豆などの大豆)、玄米やライ麦
・アセトアルデヒドを分解するときにビタミンB1が大量に消費されるため、ビタミンB1が多く含まれる食材。
・にんにくにもビタミンB1が含まれ、料理に入るとビタミンB1の吸収を促進する。ぬか漬けもおすすめ。
他にオススメのおつまみは青魚(鯖缶)やくるみ、カカオチョコレートで、脳機能を回復させ、アルコールのダメージを軽減する。
逆にやめた方がいいのはフライドポテト、ポテトサラダなどのじゃがいも系。美味しいため、酔った脳では理性を失って食べ過ぎてしまう。
アルコールを抜くのに実はトマトがよい。
アルコール20gのお酒が体から抜けるまでに、男性は4時間、女性や高齢者は5時間かかると言われている。トマトジュースとお酒を同時にとると、血中アルコール濃度が上がりづらく、アルコールが体から抜けるのも早かった。「レッドアイ」や「ブラッディメアリー」などのトマトジュースを使ったカクテルもオススメ。もちろん「トマトハイ」や、トマトジュースをチェイサーとして飲むのもよい。おつまみでトマトを食べるのも◎。
5:気を付けたいお酒の飲み方
まず、飲酒前、飲酒後のサウナや筋トレは良くないので控えるのがベターだ。(入浴後のビールは許してほしい)
当たり前かもしれないが、アルコールをゆっくりとれば肝臓に負担をかけない。そのため、熱燗やホットワインでちびちび飲むのがオススメだ。
寝ているときはアルコールやアセトアルデヒドの分解が進みづらくなるため、飲んだ後はすぐに寝ずに、少しでも長く起きていた方が二日酔いしにくい。
なんでもいいから水分を多くとるのも当たり前だが気を付けたい。
二日酔いのときは低血糖状態のため、食欲がなくても消化に良いうどんやおかゆを食べたほうがよい。
二日酔い対策としてはよく言われるように、アセトアルデヒドの分解を助けるシジミ汁もよい。二日酔いの症状の一つに「不安感」があるが、不安感が強くなる人は魚、特にマグロがよいとされる。
最近はお酒を嗜む人は少ない傾向にある。飲み会が減り、人と飲むときにしか飲まない人は、とんと飲む機会がないようだ。
それでもお酒に依存している大人も依然としている。合法麻薬であることは間違いないが、これがないと社会人生活を送れない人間もいる。
そんな人が楽しくお酒を飲んでいけるように、是非世の中に「ブロッコリーの総菜」が増えてほしいと切に願う。