【概要】 近畿大学水産研究所
日本の漁業の養殖技術の発進基地
〈目次〉
1.研究について
2.教育について
3.養殖業界への貢献
4.国際交流
5.トピック
(1)クロマグロの完全養殖に成功
(2)ニホンウナギの完全養殖に成功
1.研究について
近畿大学水産研究所では、実際に魚類を飼育しながら栄養学、育種学、形態学、生理・生化学、魚病学などの基礎的研究に加えて、種苗(養殖用稚魚)生産、交雑、選抜、バイオテクノロジー、代替タンパク源などの応用面にもわたる総合的な研究活動を行っています。
継続的に、これらの養殖学を追及している点は、他に類をみない当研究所最大の特徴といえます。
2.教育について
近畿大学水産研究所は、農学部水産学科の前・後期博士課程の大学院生および学部生の研究論文作成を指導しています。
配属された学生は、水産研究所に滞在し、当研究所が保有する養殖・種苗生産現場での実習ならびに教員・技術スタッフとのディスカッションやゼミナールを通じて得る自らの力で、実験生物を飼育・管理して各々の研究テーマを遂行します。
近畿大学水産研究所には、充実した研究設備のもとで、学生とスタッフがともに最高レベルの研究ができる環境があります。
3.養殖業界への貢献
近畿大学は、建学の精神に「実学教育」「人格の陶冶」を掲げ、社会の役に立つ研究、そして社会を支える高い志をもった人材の育成を進めてきました。
水産分野においても、研究達成をゴールとするのではなく、養殖業界において実装されるよう研究に取り組み、また水産分野を中心に各業界を牽引する人材育成に取り組んできました。
1970年、和歌山県白浜町に「白浜水産養殖科学センター」(現在は「水産養殖種苗センター」)を設立、2003年には大学発のベンチャー企業「株式会社アーマリン近大」を設立し、研究成果を安定的に生産・供給する体制を構築しました。
現在、教育・研究は水産研究所が、研究成果とりわけ養殖用稚魚の生産・供給は水産養殖種苗センターとアーマリン近大がそれぞれ担っています。
養殖業界で発生した課題は、水産研究所にフィードバックされ、研究に取り組むサイクルが構築されています。
株式会社アーマリン近大は「近大卒の魚と紀州の恵み 近畿大学水産研究所」などの養殖魚専門料理店も経営しており、消費者の声も生産や研究の場にフィードバックされています。
4.国際交流
近畿大学水産研究所では、1989年以降、タイのチュラロンコン大学をはじめ、学術協定を締結しているマレーシアのサバ大学、韓国の全南大学校との間で、研究員や学生を相互に派遣して研修活動を行うなど、国際交流にも積極的に取り組んできました。
また、文部科学省から、2003年には21世紀COEプログラム「クロマグロ等の魚類養殖産業支援型研究拠点」、2008年にはグローバルCOEプログラム「クロマグロ等の養殖科学の国際教育研究拠点」に連続して選定されました。
5.トピック
(1)クロマグロの完全養殖に成功
1995、1996年に採卵した320万粒の卵から育てて生き残った20尾(推定70~120 kg)が2002年に産卵しました。卵から親魚に育つまでの生残率は0.0006%と極めて低く、奇跡のような成果でした。
32年間粘り強く挑戦し続けた成果でした。また、ふ化した仔魚を飼育、育成し、2004年に世界で初めて完全養殖クロマグロ2年魚(約20 kg)の出荷に成功しました。
(2)ニホンウナギの完全養殖に成功
2023年7月6日、ニホンウナギの人工種苗から養成した親魚より仔魚を得ることに成功し、完全養殖を達成しました。
ウナギの完全養殖については、2010年に国立研究開発法人水産研究・教育機構が成功していますが、大学としては初の成果となります。
まずは、養殖用種苗として利用可能になるシラスウナギ(稚魚)までの育成を第一目標としています。今後、仔魚用飼料の改良に取り組むなどして、育成技術の安定化に向けた研究を続ける予定です。
以上