バス停に座って
やっぱり 街での過ごし方がわからない
友人からいくつかカフェを紹介されていたが、学生街に並ぶ古本屋を巡った。地下鉄やバスに乗る、なんて発想がしばらく思いつかず、というのも故郷にはなかったから、歩いて歩いて足がつった
ずっと本選んでた、1ヶ月分の自炊代くらい買った、読みたい本が多すぎて時間と頭が足りないや
さすがにこれ以上本は買えないので
バス停に座ってみることにした
いろんな人が乗ったり降りたり
パトカーが通ったり
雨が降ったりやんだり
僕はカフェよりこっちのが落ち着く
そのうち空いたバスが来れば乗って
京都駅まで帰ろう、うんそうしよう。
彼女に「起きたらいつでも電話して」とLINEをいれた。まだ向こうは早朝のようだった
いくつかの路線を走るバスを一周分見たし、すいているバスが来たので僕はそれに乗ることにした。とはいえ空いてる席は優先席しかなく、少し躊躇したが、けれど一日中歩き回ったぼくの両足はもうぱんぱんで、立っていることはできないから、ここに座るべきだと納得して、腰掛けた。
座りながら、多和田葉子の「かかとをなくして」を読んだ。ふと目を上げると先ほどまで街だったのにもう都市の中を走っていて、気づくと周りには立っている乗客でいっぱいだった。
誰か座りたそうな人がいれば譲ろうかと思ったが、高校生か大学生くらいの、それも気持ちまで若い類いの人たちばかりだったので安心して座り続けられた。
京都駅に着くと、乗客は一斉に立ち上がり、交通カードを持って出口へ進んでいった。ぴっ、ぴっ、ぴっ、ぴっ、みなレジを通される商品のようだった。思ったより多くの人が乗っていたことに気づき、僕があの村で出会った人の数より多くの人がこのバスに乗っていたことに悪い興奮を感じた。僕は立つタイミングを失い、その列の最後尾に並ぼうとしたが、ワンテンポ遅れた。僕だけポケットに用意していた230円分の小銭をジャラジャラと音を立てていれた。なぜか10円分足りず、あたふたしながらいろんなポケットをあさって、やっとこさ見つけた10円を入れた。あんなにスマートにピッピッと出ていった人に、別に憧れてなかったはずなのに、変に自分が恥ずかしかった。
駅に着くと急に尿意を催して、トイレへ。女子トイレの方からは外まで列が並んでいた。こんなにお洒落着をしている彼女らはみな膀胱に尿を蓄えて焦っているのだ、と何故か趣味の悪い妄想をしてしまい、また悪い興奮を感じた。こんどはさっきより気分が悪かった。
スマホを開いたら彼女から不在着信が入っていた。起きたようだ、僕は駅に着いてからLINEを入れればよかったと思いながら、電話を掛け直すことにした。
おわり
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