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国際:脱炭素と重要鉱物資源 - IEA重要鉱物報告書2024から
国際エネルギー機関/IEA(於:パリ)が、脱炭素/ネットゼロにおける重要鉱物資源の安定的供給の重要性に関する年次報告書「Global Critical Minerals Outlook 2024」を公表、その概要と感想をサクッとまとめてみた。
記事要約
一部の鉱物資源を除き、バッテリー製造に必要なリチウムやニッケルなどを中心に多くのCRMの国際取引価格が大きく低下。
価格低下は、供給の伸びが需要の伸びを上回ったため&Downstream Sector(Battery cells, cathodes)におけるストック増。
クリーンエネルギー技術の廉価化には一役買うが、鉱物資源への投資が鈍化してしまう懸念有で要注視。いずれにせよ鉱物リサイクルは益々重要に。
1. そもそも重要鉱物資源とは?
脱炭素化/カーボンニュートラルで不可欠な重要鉱物資源/。電動自動車(EV)のバッテリーや各種モーターの他、風力、太陽光、地熱等の再エネ発電設備やそこで使われる蓄電池などいろんなところで必要になる。重要鉱物資源/というとリチウム、コバルト、ニッケル当たりがぱっと頭に浮かんでくる。が、どうも世界共通の定義はないため、ここでは欧州連合/EUのリストを参照。
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IEAは2024年5月、「Global Critical Minerals Outlook 2024」を発行。そして同月28日にウェビナーを開催。
2. 脱炭素/ネットゼロにおける重要鉱物資源
まず興味深いのが各CRMの価格低下。下記の図が示す通り、一部の鉱物資源を除き、バッテリー製造に必要なリチウムやニッケルなどを中心に多くのCRMの国際取引価格が大きく低下、結果として、コロナ危機以前の価格水準に戻った。
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こちらはウェビナーから。こっちの方が見やすい。
![](https://assets.st-note.com/img/1716901522155-m7Iv4mPHzE.png?width=1200)
CRM価格低下によりEVなどに使用されるバッテリー・パックの価格も大きく低下。
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(IEA報告書, 2024, p. 26)
なお、CRM価格は低下してはいるが、CRMの需要自体は引き続き伸びていることが下記の図からわかる。この継続的な需要増の背景には、エネルギー転換に不可欠な太陽光、風力、EV、水素電解装置等のClean energy deploymentの伸びがある。中国の牽引もあり、2023年も大きく伸びた形。
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(IEA報告書, 2024, p. 35)
価格低下は、供給の伸びが需要の伸びを上回ったため&Downstream Sector(Battery cells, cathodes)におけるストック増。それがわかるのが下記の図。
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(IEA報告書, 2024, p. 36)
そして鉱物によっては、BatteryのGraphiteのように安定供給に不安がある鉱物も有り。
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前年版でも言及のあったCRM供給における地政学的リスク。各マテリアルの生産における地域的偏りが激しいことが下記の図からわかる。
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(IEA報告書, 2024, p. 41)
ただ、Asset ownershipの観点から見ると、だいぶ図柄が変わり、USや欧州の会社のプレゼンスが見えてくる。
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(IEA報告書, 2024, p. 43)
他、将来的なシナリオ等を提示しているが、割愛。
3. 思ったこと
2023年版のIEA年次報告書の概要は下記からアクセス可。
CRM価格低下、というかコロナ禍以前の価格水準への回帰は興味深いが、この流れが今後どう続くか要注視。
それ以上に、わかっている事ではあるが、重要鉱物資源採掘&加工の地政学的リスクがヤバすぎる気がする。こうなると結局EU含め各国政府はリサイクル頑張ろうという話になり、各種製品を設計する段階からRecyclabilityを考えていこう、製品廃棄時はリサイクルを確実に使用、製品製造に当たってリサイクル材を使おうという話/規制につながっていき、結局製品の製造コストが上がり、販売価格も上がる、そして大局的な流れを知らない/関心のない一般市民は、政府の政策のせいでモノが高くなり生活がどんどん苦しくなる=>社会不満=>。。。といういう連鎖につながっていく。
しかし、主要な報告書を発行するたびにウェビナーを開催してくれるのは大変助かる。無論報告書を真面目に読めばいいのだが、そんな時間がない人はウェビナー聞けば大まかな流れがわかるからだ。
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