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若いビジネスマンの心の持ち方―純粋さを具えて壁を作らず

就職するときは、どうしても「こっちのほうが給料は高い」と見てしまいがちです。それを押しのけ、仕事の本質を見ることができるか。うちの途中入社組には、「一回はお母さんが望む就職をしたけど、やりがいを感じなかったから転職しました」といってくれる人もいる。そういう人は強いです。
 

今の若い人たちはみんなが金銭的な優位性を求めている……というふうには私は思っていません。だから、「本当にそれができるの!?」と思えるくらい理想をもっている人もいることは承知だし、むしろ入り口はそれくらい純粋なほうがいいとも思っています。

(中略)

企業にとって、社員の適材適所は永遠の課題です。そこでは、人間が人間を見立てるという経営側の力量が問われます。「自分がやりたいことができない。やりたくない仕事をやらされている」という悩みを抱えている人は、顔を見ればすぐにわかります。「ちょっとくすぶっているな」と思ったら、私はその子を呼び出してマンツーマンで、食事をしながら話を聞き出します。

甘ったれの部分があればバシっといいますし、課題がハッキリ見えたら寄り添うだけにする場合もある。別に答をいわなくてもいいのです。悩みらしきものは、わかってもらえただけで終わることが多いのです。だから、話が終わったときには誰もが晴れやかな表情になっているものです。

いろいろな悩みがあっても「現場が楽しい」といっているなら、たぶんそれは人間関係に起因することだろうし、そういうのはよくある問題です。「先輩も悪気はないと思う。きみのために一生懸命いってくれているんだよ」とフォローしておけば大丈夫。こういう人は、本気でやり切ったら伸びるので心配いらないのです。

(中略)

これからを生きる若い皆さんに伝えたいことの1つに、

「心について学んでおくといいよ」ということがあります。

生きていれば誰にでも「憎たらしい」と思う相手はいるものです。それは親かもしれないし、先生かもしれないし、上司や先輩、友だち、あるいはライバルかもしれません。

自分のことを理解してくれなかったり、やることなすことに反対したりする相手を「敵」だと認識してしまうのは、若いうちにはよくあることです。

その感情が起きてしまうのは仕方がないことなのだけれど、
実はそれは自分の心の状態がつくった「壁」なのです。

これはやがて消えます。

つまり、本当はそんなに憎むことなんてないにもかかわらず、自分で心の中に壁をつくっているだけなのです。壁がある以上、相手だって踏み込んで入ってこられないから、どうしても距離を置かれてしまう。

自分の心の中に「憎い」とか「敵」という壁がある限り、相手との関係も変わらないし、現実もよくなってはいきません。

本当は、あなたのためになるように誰かが何かをいってきたり、あなたの役に立とうとしたりしているだけかもしれない。本当は誰も憎くなどないのです。もっと心をオープンにしたほうがいい。

そうすることに慣れてくると、何があっても、また誰かが何かをいってきても動じなくなる。いろいろなことが起こっても、すべてを自分の力に変えられるようになってくるのです。およそネガティブな感情というものは、自分自身が心につくっている壁みたいなものだと思ってください。

若いころは、内と外を区別しないと安定しないように思うこともあると思いますが、それはむしろ逆です。自分に反対する人を敵だと思いこむのではなく、心を開くようにする。それができれば壁をつくることもなくなってだいぶ楽になれるはずです。

ー高濱正伸( Takahama Masanobu )

高濱先生 ④ 250

株式会社こうゆう 花まる学習会代表
1959年生まれ。東京大学農学部卒。1993年、「メシが食える大人に育てる」という理念のもとに、思考力育成や野外体験を主軸とする学習塾
「花まる学習会」を設立。また、家庭での子育てが子どもの「生きる力」の鍵を握ることから、保護者向けの講演会を数多く行う。
著書に『小3までに育てたい算数脳』(小社刊)ほか多数。

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