クリエイターの母親業 #02 自営業(フリーランス)が“保活”を乗り越えるためにやった2つのこと
わたしには姉がいます。ジュエリーデザインや空間デコレーションといったクリエイティブな活動を生業にしており、東京で独立して会社を経営しています。姉は会社の代表でもあり1人のクリエイターでもあるため、出産の直後から病室に素材を持ち込み制作をするほどの忙しさに追われながら保活に挑みました。
今の時代、自宅兼アトリエを構え、手仕事で生計を立てる女性も増えています。しかし「好きなことの延長線上」に見えるクリエイティブな生業は、どうしても家事や子育てと並行できることだと軽視されがちです。
「片手間に遊んでいるわけじゃない。人生も生活もかかっているんだ!」…そんな想いで保活に挑まれるクリエイティブなプレママさん&ママさんにとって何かの参考になればと思い、今回は姉の実体験を姉の目線で綴ります。
1.これまでの人生を諦めなければならないのか不安だった
自営業(&フリーランス)のクリエイターは、自分自身がプレイヤーであり経営者。活動が直接売り上げに影響するため、日々プレッシャーとの戦いです。
保活において自営業は、タイムカードで管理して勤務時間の証明を発行するフルタイムの外勤と比較すると同様の点数を得ることが難しいと言われています。クリエイターの場合は特に、作業しながらでも子守りできるのでは?と思われてしまいがちです。
しかし、子供が成長し1歳頃には立って歩き始めることを考えると、倒してしまったり口に入れると危険なものが数多くある制作環境で、つきっきりで面倒を見ながら手先に集中することはできません。果たしてこの先まともに経営できる?制作を続けていける?…という不安は拭い切れず、産後の疲労もたたり、とうとう体調を崩してしまいました。
このままではいけない、自分なりに精一杯動いて理解してもらえるよう努力してみようと思い立ち、今回の保活に挑みました。
2.見ないと伝わらないものは写真で見せる
はじめは仕組みをよく知らずに申請書を会社員として作成し提出したのですが、役所から「会社代表だと自営扱いになるので、自営の場合の書類に書き直してください」と言われ再提出することになりました。恥ずかしながら、フリーランスと同じ扱いになることをこの時初めて知ったのです。
アルバイトで入っているスタッフや社員の雇用契約書にも、あらかじめシッティングの作業を勤務内容に組み込む形で”シッティングの日”を設け、キッズラインなどの外部のシッターさんも加えて月12日以上&4万円以上の給与支払いの実態はしっかりあったのですが、自分の会社の社員にシッティングをお願いしたとしても、残念ながら自治体の定めた規定では点数に反映されません。
そのため「会社の片隅でスタッフに子供を見てもらう」のではなく、「自宅とは別に借りている工房で作業をする間、基本的に自宅(=本店)で娘を見てもらう」かたちを取り、その根拠として、危険物等の液体や工具を撮影し、追加資料を用意することにしました。
制作環境が、ゆったり子供の世話ができるような場所ではないことを知ってもらうためです。
↑実際に提出した写真資料
自営の申請書に書き直した後、会社の業務がどのような流れで毎日行われているのか(1週間分のスケジュールを記入する申請書類)を詳細に書き込み、業務は部屋にこもる作業だけでなく百貨店などリアル店舗での販売もあるため、お店との契約書も用意しました。
3.想いを直接伝える
取引先との契約書や、生産数が分かる発注書、工房内を撮影した資料などは直接役所の保育課に持参しました。「私の仕事は少し特殊なため、ご説明をさせて下さい」と頼むと、担当の方がしっかりと話を聞いて下さいました。「説明いただいても、点数は変わらないかもしれませんよ」と念押しされましたが、それでも「きちんと説明したかったんです」と食い下がりました。
その結果、事情を考慮していただけたかは明言できませんが、無事に内定をいただく運びとなりました。運良く、内定先は第一希望の保育園でした。
会社を設立してから、自分の生業に対する想いを相手に理解してもらうために、まずは自分から働きかけていくことの重要さを改めて実感しています。特に、今回の保活を通してその姿勢のあり方を求められたように思いました。
4.説明する努力の大切さ
以上が、姉の目線での保活体験でした。わたし自身は外勤フルタイムですが、姉の保活内容を知った時に決して人ごとではないと感じました。と同時に、同じ悩みを抱えて不安を感じているクリエイターのプレママさん&ママさんは多いのではないかと思い、今回の記事執筆に至っています。
※前回の保活体験記事(#01はこちら)を書いてから早くも半年が経過してしまいました…!
クリエイティブな活動を大人になっても継続できる人は一握りです。そして、クリエイティブな人の周りには自然とクリエイティブな人が集まって来ます。そういった人たちに囲まれた環境だと忘れてしまいそうになりますが、クリエイティブなことを生業にしている人の制作環境や実態を、そうでない人にはイメージできません。趣味として触れられる範囲でしか、その世界を知るきっかけがないからです。「好きなことを自由にやってていいね」と思われてしまうのも仕方がない気がします。実態を理解してもらうためには、知ってもらえる材料を用意することが一番の近道です。
保活は満点ボーダー同点で並ぶ家庭が多く、その後は優先事項と各家庭の事情を考慮して選考されます。その時に、決められた書類以外に事情を汲み取ってもらえる材料は多いに越したことはありません!この体験記が、少しでも悔いのない保活をするために自営業(フリーランス)クリエイターが準備できることの参考になれば幸いです。
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