体毛を模倣したセンサーで風を正確にとらえる
私たちは、髪の毛以外の体毛を余分なものと考えがちですが、実際体毛は皮膚への感覚をより敏感なものにするとも言われています。
そんな動物の体毛をセンサーにしてやると、想像以上に高性能なウェアラブルセンサーができるかも!というのが今回紹介する研究です。
体毛センサー
参考文献より引用
私たちは体毛が風によって動くことで皮膚にある微小なセンサーが電気信号に変換して脳に伝えます。
簡単なように見えて、このセンサーを人工的に作るのは非常に難しいんです。なぜなら、毛の太さは人種は部位などによっても異なりますが、0.05~0.08 mm程度といわれています。
体毛センサーを作ろうと思えば、まずはそれぐらい小さなサイズのセンサーを実現しなければならないわけです。
今回、開発された体毛センサーは目に見えないぐらい細いシリコンのナノワイヤーをセンサーとして使います。これは体毛よりももっと細い600nmで、私たちの髪の毛の100分の1程度の細さです。
当然、ワイヤーだけ作ってもセンサにはなりません。そのためワイヤーを取り付けるための基板を用意する必要があります。そこで、この研究ではPET やPDMS といった比較的使いやすい材料を使って実現しています。(PET というのはペットボトルに使われている材料ですね)
シリコンナノファイバーで風を探知
それではどうやってシリコンナノファイバーが風を探知するのでしょうか? ?
ファイバーに風が当たると、それに伴い若干たわみます。ファイバーがたわむと ピエゾ抵抗効果が起こり、シリコンナノファイバーの抵抗値が変わります。
参考文献より引用
ピエゾ抵抗効果とは、圧抵抗効果とも呼ばれ金属や半導体に機械的なひずみ(たわみ)が生じたときに電気抵抗が変化する効果です。そのため、今回はいくつか処理を行ったシリコンナノファイバーを使ったわけです。
この人工的に作られた体毛センターは、風を感知する能力に優れているため、腕に張りつけた場合、腕に感じる空気の流れをデータとして取得することができます。
わかりやすい例だとアスリートの体にこのセンサーを張り付けることで、アスリートがどんな空気抵抗を受けているのか明らかになります。
また、目の不自由な人が安全に生活できるように警告するようなセンサーにも用いられるようですね。
最後に
今回は動物の体毛を模倣したセンサーについて紹介しました。
除毛だ脱毛だとと話題になっている昨今ですが、私たちの体毛は想像以上に高性能なセンサーであることは間違いではありません。
服を着ているため使われなくなった進化の過程で手にいれた高性能のセンサーを、見た目のためだけにお金を払って手放すというのは何とも言えない感情になりますね。
将来的には、見栄えのために不必要な体毛を全て除去して、その代わりにウェアラブルセンサーを身に着ける人類が目に浮かびますね。
何も悪いことはないんです。生物の進化と社会的価値観は常に変化していきます。そう考えると、自然科学は私たちの人間生活に密接にかかわっているとも言えますね。
参考文献
Compact Biomimetic Hair Sensors Based on Single Silicon Nanowires for Ultrafast and Highly-Sensitive Airflow Detection
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