軟骨を使った電池が世界を変える
最近の科学は進んでいるのでスマホの電池の残りを気にして生活する人はそう多くはいないと思います。
しかし、世の中電気はなくてはならない存在。それだけ電池業界も研究が活発に行われています。
今回紹介するのは、生き物の関節の成分である軟骨を使った電池の研究です。この軟骨電池は非常に柔らかくいろいろな用途が期待されているそうです。
それでは見ていきましょう
軟骨を使う電池
軟骨を使うといっても動物からとってくるというわけではないようですね。
(サメは全身軟骨でできた軟骨魚類というそうです)
この新しい軟骨電池は、動物の軟骨成分と同じようなアラミドナノファイバーというものを用いることで、電池の性能を上げようという考えです。
軟骨というと何となく想像つくかと思いますが、比較的柔らかい物質です。薄いフィルムにしてやると、しなやかな材料として利用することができます。
参考文献より引用
今回はこの軟骨成分を鉛蓄電池の電解質に使います。電解質というのはイオンを通過させる役割を持ちます。電池の内部でイオンが移動することによって電気が生まれるというイメージです。
この軟骨成分は鉛蓄電池がショート(短絡)するのを防ぐことができ、なおかつ性能をそれなりに保ったまま、蓄電池として使われます。
いわゆる軟骨電池は柔らかいため、研究ではドローンのボディの一部に着けることで、その飛行時間を延ばしといいます。
参考文献より引用
ここまで読んでざっくりと書いてみたんですが、調べてみるとおそらく同じ論文をもとにした記事があるんですね。
プロのライターが書いているのであれば、上記の記事の方が良いでしょう。
素人では勝ち目がありませんよね(たぶんね)。
ということで、上記の記事にも書いてないディープな話をしていきましょう
軟骨成分の予期せぬ誤算
実際、軟骨模倣成分を増やすとどうしてもポリエチレンオキサイドという有機成分の量が少なくなってしまい。イオンの伝わりやすさ(電気の伝わりやすさ)が低下すると、予想していました。つまり柔らかくしようとすると性能が悪くなってしまうと…
ところが、軟骨模倣成分を増やすとなぜだが電池の性能が上がったようです。これは嬉しい誤算です。
その謎を調べてみると、どうやら軟骨模倣成分を混ぜることによってポリエチレンオキサイドの結晶化が阻害されたため、予期せぬ性能向上が見られたようです。
軟骨模倣成分のナノファイバーの隙間が非常に小さく、軟骨ファイバーのネットワークに絡まる形でポリエチレンオキサイドが結晶化するため、通常50000 nm(50 μm)なるところが50~70 nm程度までしか成長しなかったようです。
参考文献より引用
組成の違いで性質が変わるというのは、化学的な理解として直観的に理解しやすいです。一方、直観とは外れたところに物理的な要因による特性(結晶サイズ)などが重要になってくるというのが面白い点ですね。
最後に
今回は軟骨成分を模倣した柔らかい固体電池が開発されたという研究を紹介しました。
すでにタイムリーなウェブサイトが数年前に記事にしていたということなので、ここでは本編に含まれていない軟骨模倣成分による予期せぬ性能改善の話についても紹介しました。
これは一般にSupporting Informationと呼ばれる、論文の予備資料に書かれていた内容です。
ちなみにSupporting Informationは誰でもフリーアクセスできることが多いです。私の場合は大学のアカウントで論文をとっているので、本編も読めますが、意外と予備資料にも充実した内容が書かれていることが多いんですよね。
参考文献
Biomimetic Solid-State Zn2+ Electrolyte for Corrugated Structural Batteries