これからの記録デバイス
前回、記録デバイスの歴史をざっくりと振り返りながら、現在使われているハードディスクとフラッシュメモリの紹介をしました。
今回は、未来の記録デバイスについて紹介していきます。
前回のラストで、普段私たちが使っているハードディスクとフラッシュメモリでは、これからのデータ社会でデータを保存しきれないという問題が出てくるという話をしました。
こういう場合、科学の世界では全く新しい原理原則で動くものが登場して世界を一新してしまいます。
ここでは、そんな次世代の記録デバイスとして重要視されているものを紹介していきたいと思います。
単電子デバイスストレージ
電子一つ一つを操る新しいデバイスとして単電子デバイスと呼ばれるものが期待されています。こちらもスケール感の問題です。
どういうことかというと、一般的にフラッシュメモリーでは一度に大量の電子を貯めるor貯めないでデータの01を決めています。
もしこれが一つ一つの原子を操れるようになったらどうでしょう。
単純にもっと小さなデバイスができるような気もします。
それだけではなくて電子を貯めておいた場所に一体いくつの電子を貯めるかによってデータの意味を変えることができます。つまり0 or 1ではなくて、0 or 1 or 2 or 3となると、一気にデータ量を増やすことができます。
簡単にいうと、1つのビット(ボックス)に2つのデータを入れるか4つのデータを入れるか変えることができるわけです。ビットが2つあれば、01であれば4通り、0123であれば16通りの情報を入れることができるわけですね。
たった2ビットでもこんなに違う
スキルミオンを使ったデバイス
かなり聞きなれない言葉だと思いますが、磁気スキルミオンというスピンに関する物理現象があります。(わからない言葉のオンパレードですね)
ハードディスクではかなり大量のスピンの向きを変化させることでデータの01を記録していましたが、このスキルミオンを使うともう少しスケールダウンさせることができるようです。
スキルミオンとはスピンが渦を巻いた状態のことを表しています。その渦がまるで粒子のように振る舞うことから準粒子の一つとして捉えられています。ちょっとどころかかなりわかりにくいですね
語弊がありますが雰囲気としては、磁石の性質によってできた小さな粒のようなものと思えばよいと思います。とにかく小さくなるのでうれしいということです。
この粒のようなスキルミオンの有無をデータの01とすることでより高精度な磁気記録デバイスを作ってやろうという試みです。
このスキルミオンのスケールは数十ナノメートル~数百ナノメートルと言われているので現在のハードディスクよりももう一回り小さく作れそうですね。
最近では、1~2nm ぐらいのサイズのスキルミオンも発見されたことからさらに期待が高まっています。
ここはちょっと難しいのでとにかくビットが小さくてデータがいっぱい入るということがわかればOKです。
DNAストレージ
自然界にある物質で最もデータをたくさん所蔵しているものの一つとして知られているのが DNA です。 私たちの体の設計図を遺伝情報として蓄えており、それを読み出すことで私たちの体が作られています。
この DNA を使うことで、新たなデータの記録デバイスにしようという試みがあります。
DNA は生ものなので過酷な環境下では耐えることができません。しかしながら適切な環境を用意してやれば億年単位で保存することも可能になるでしょう。
実際、氷の中から発見された生き物のDNAを読むことも可能であることが知られています。それに、今使われているハードディスクもフラッシュメモリも半永久的に使えるわけではありません。
それと比べるとDNAも非常に有用な手段の一つなのではないでしょうか。ちなみに DNA のスケール感はとっても小さいので、桁違いのデータを保存することが可能になります。
というのも、先ほどの0 or 1の議論に戻りますが、DNAはA,T,C,Gの4つの塩基を持っているので、効率的にデータを保存することができます。
しかも、最近ではさらに4つの人工塩基が開発されています。単純計算で、2ビットで4通りだった保存が、64通りになります。すさまじい世界ですね!
DNAストレージに関してはGigazine祭りになってしまいましたね…
それなら、全部DNAでよくないか?と思ってしまいますが、まだまだ値段が高くて実用化には向きません。私もDNAを扱ってるのでわかりますが、普通に買うと見えないぐらい少量で数万円します。
最後に
今回はこれまで一般に使用されている記録デバイスから次世代に期待されている記録デバイスまで紹介してみました。
10年後、20年後にはここで紹介した新デバイスが私たちの手元に届くようになるかもしれませんね。