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読み手の世界を変える歌―上坂あゆ美・岡本真帆『歌集副読本』

国語の講師をしていたとき、短歌や俳句が苦手でした。

【猪突猛進なゴリラ】、この言葉が私の性格をいちばん的確に表しています。そして、文章への対し方も性格のそのまま、コトバを額面通りに受け取り、一直線に理解していくスタイルなのです。

なので、短歌や俳句などの短詩形の文学は、そんな私にとっては「情報の少ない詩形」でしかなかったのでした。

描かれた情景をそのまま呑み込んで「そっかぁ」って思う。

だから、どう説明していいか分からなくて、何を解説すればいいかをうまく整理できなくて、ものすごく苦手だったんです。

でも、考えてみたら、短歌は130年ほどの歴史を持ちますし、俳句に至っては江戸時代…成立から考えれば、中世から連綿と続く文化なわけです。それが、そんな単純な理解ー情報の少ない詩形ーで終わるはずがない。

かといって、どう読めば、そんな豊饒な世界を垣間見ることができるのかなんて、皆目分からず(滝汗)。

そんなとき出会ったのが、コチラの本でした。

■『歌集副読本』について

実は、これ正確な書名ではないです(汗)
あまりにもタイトルが長いので、勝手に短くして書いてました。

■歌集副読本『老人ホームで死ぬほどモテたい』と『水上バス浅草行き』を読む
■上坂あゆ美 岡本真帆 著
■ナナロク社
■1200円+tax

歌集副読本とは、歌集を味わい尽くすための助けとなる読みもののこと。本書では昨春、第一歌集を刊行した二人の歌人が互いの歌の魅力に迫ります。歌集を傍らに読前読後でお楽しみください。

コチラの本は、上坂あゆ美さんと岡本真帆さんそれぞれの第一歌集をお互いが読んで解いていく「歌集副読本」です。

昨春、第一歌集を出したこと、同年代であること、何より若き歌人であること。そんなふうに共通点の多いお二人が、お互いの歌集をどう読んでいくのか。それだけでも興味津々。

また、私自身もお二人の歌集を読み、あれこれぶっ刺されているので(笑)、余計に楽しみが増します。
ちなみに、そのぶっ刺されたさまをざくざくと書いた書評がコチラ。

■上坂あゆ美『老人ホームで死ぬほどモテたい』

■岡本真帆『水上バス浅草行き』

本書『歌集副読本』を読めば、私の短歌や俳句への薄い理解も少しはマシになるのではないか? そんな期待も込めて読み始めました。そして、その期待は見事に達成されたのです。

■いい歌の持つ「加害性」

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