見出し画像

東京カフェ紀行 3軒目


暑い、暑すぎる。

せっかくの休日も、暑さで起きてしまう。
もう少し寝ていたいのに。


ミーンミーンなんていう爽やかなセミの鳴き声なんてもう何年も聞いていない。ジリジリシャンシャンと鳴き、暑さを何倍増しにもするセミの鳴き声ばかりだ。


子供の頃の記憶では、クーラーなんて滅多に点けず、扇風機だけで夏を過ごせていた。そんな何十年も昔ではなく、ほんの十数年前の話だ。


びっくりするほど毎年暑くなり、それでもあいかわらず生活するためには外に出なくちゃいけないし、電気代も上げられて、そろそろ生きていけないかもなんて思ってしまう。

人間がすぐ環境に順応できるわけもなく、今日もまた、汗で髪も顔もドロドロになっている。


少しでも涼を取れるよう、ざる蕎麦でも食べようと蕎麦屋に行ったものの、店内が寒すぎて結局は温かい蕎麦を食べる始末。美味しいのは美味しかったけれど、寒すぎる空調は汗が冷えて風邪を引きそう。



「ありがとうございましたー」

扉を開け外に出ると

「あっつ」

灼熱地獄。日傘必須のこの時間帯。さっき食べた蕎麦のお陰もあって、良くも悪くも冷えた身体があっという間に温まって、汗が吹き出してくる。

日傘を差し、ハンドタオルで汗を拭いながら路地を歩いていると、コーヒーと書かれた旗が見えた。

アイスコーヒーでも飲もうとその旗に誘われて長屋を進んでいくと、その奥にはいかにも隠れ家的なカフェが。看板にはクリームソーダやコーヒーフロートなんかが並んでいる。

うん、良いね。

扉を開け、中に入ると日差しの入る中庭がよく見える小さなお店だった。常連だろうか、客はカウンターに座るひとりのみだった。

メニューを開いてみると、様々な名前のコーヒーやスイーツ。その中でも私が1番惹かれたのは…

「コーヒーグラニテ、ください」


透明のグラスに入ったそれは、なんというか、コーヒーのかき氷みたいな、シャーベットみたいな。ザクザクとした氷の上に、バニラアイスが乗っている。

食べてみると、シンプルなコーヒーの苦みがガツンとくる。冷たくて、沁みる。

食べ勧めていくと、なんだか甘くなってきて、普段はブラックコーヒー派の私も思わず頬が緩む。甘くて、幸せ。

バニラアイスを少しずつ崩してミルク感を楽しんでいくと、底の方からコーヒーゼリーが顔を見せた。ぷるんと、しっかり目のゼリーが食感もあって美味しい。

コーヒーゼリー、コーヒーシャーベット、アイスクリーム。

シンプルな見た目以上に贅沢なデザート。

うん、これはもっと、食べたい。


暑い日のソフトクリーム、アイスクリーム、かき氷もいいけれど、そこにグラニテという選択肢を加えてみるのもいいかも。

アイスコーヒーを凍らしてかき氷機で削ってみようかな。あ、ポイントはお砂糖をしっかり入れることみたい。

冷たくて甘い幸せなデザート。ぜひ、出会えたらお試しください。


爽やかな気分で外に出ると、まだまだ太陽は高い。

暑い、けれど、素敵なものと出会えたのでなんだか足取りも軽く、スキップしてしまいそう。

いつもは通らない道でも通って、少し遠回りして帰ろうかな。




前回のお話


完結済長編小説


ゆっくり連載中の小説


SNSもフォローしてください!

インスタグラム


ツイッター…じゃなくてX


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集