美浜えり✍

美浜えり✍

最近の記事

  • 固定された記事

色なき風と月の雲 1

「長与(ながよ)、喫煙所に吸い殻溜まってたから片付けといてー」 高校を卒業し、この会社のイベントスタッフとして働き始めてからはや3年。 この現場には私よりも若いスタッフはおろか、女性スタッフもいない。そのため、私は新人と同じように雑用を押し付けられる。 一応、某有名男性アイドルのコンサート現場なので、気軽に若者を入れるわけにはいかないらしい。 特に熱狂的なファンは若い女性が多い。アイドルを狙ったストーカーや、本当に恋をしている所謂〈リアコ〉などを近づけないようにし、ト

    • 短編小説│夢か現か

      ゴゴゴゴゴ 謎の音がする。 玄関横の窓から覗くと遠くが暗くなっていて、雨でも降っているのかな。 そう思って洗濯物を取り込もうと反対側のベランダの方へ向かう ピカッと光った 雷にしては眩しい ふと光った方をみると、道路の下が青い光を放っている あ、こっちに来る そう思って見ていると、ボーーーーーンという音とともに、マンホールがあったであろう場所から光が飛び出してくる。 やばい そう思っても何もできず、あっという間に爆風がこちらまで来た。 目の前が、全て青色

      • 生理用品レポ 1個目

        生物学的に女性なら殆どの人がほとんど経験するであろう、生理。月経ともいうあれ。 色んな商品が出ていますよね。使い捨ての生理用ナプキンがいちはんオーソドックスというかメジャーだと思いますが。 今回から新企画として、私、美浜えりが使ってみた生理用品を正直レポ。正直レビュー! 第一回は、〈ソフィシンクロフィット〉 説明を見ると いつものナプキンに吸収力をプラス さっと挟めばお風呂上がりにも トイレに流せる 要約するとこんなかんじ。 ものは試しと言うことで、とりあえ

        • 芸能人妻、デビューします! 4 再び

          「紘子(ひろこ)さん、すみません」 イタリア土産を持って義実家に行くと、義母の紘子さんがお茶を淹れてくれた。 「すみませんじゃなくて、ありがとうがいいなぁ」 「はいはい、母さんありがとう。もういいから、座って」 口数の少ない義父も相変わらず喋らないが、元気そうで何より。娘の紀和(きわ)は義父に一番懐いており、義父の膝の上でニコニコしている。 「これ、お土産です」 「あら、マロングラッセ。すごく大きいのね」 「そうなんですよ。試食したら美味しくて。たくさん買ってきたので

        • 固定された記事

        色なき風と月の雲 1

          芸能人妻、デビューします!3 はじめて

          夫が個人事務所を設立した当初、私もマネージャーのような形で現場に何度か足を運ばせてもらっていた。 アイドル英稔紀(はなふさなるき)のファンはやはり女性が多く、女性誌での撮影や取材が多かった。 その中に、私が中高生の頃に読んでいたティーン誌もあり、隣のスタジオではまだ中高生だと思われるモデル達がワイワイ楽しそうに撮影していた。当時紙面で見ていた世界が実際に広がっていて、感慨深かった。そして少し懐かしかったりもした。 撮影現場を見学していると、あの頃憧れていたモデルのMaiさ

          芸能人妻、デビューします!3 はじめて

          芸能人妻、デビューします! 1

          アイドルを仕事としている夫の英稔紀(はなふさなるき)と結婚し、5年が経った。 ─ 当時デビューして5年目を迎えていた、夫が所属するグループstilla(スティッラ)は、メンバーそれぞれドラマや映画、バラエティなど、メディアで引っ張りだこの大人気アイドルだった。 突然の結婚に反対しない人はいないわけで、メンバーや事務所の偉い人たちにも止められた。しかし私達はそれを押しきって入籍した。 当初は極秘結婚、ということにしたかったのだが、街行く人達誰もが全員パパラッチのよう

          芸能人妻、デビューします! 1

          芸能人妻、デビューします!出会い篇

          ~出会い篇~ 結婚して5年、夫とは離婚を考えている。 出会いは7年前。学生時代のアルバイト先であるカフェにそのまま就職した私は、当時23歳だった。   裏口の鍵を開け、サクッと着替えてブラウンのエプロンを身につける。腰紐をキュッと締めると、7時。 私の朝は始まる。 「聖和(せな)さん、おはよーございます」 エスプレッソマシンの電源を点け、朝一のドリップコーヒーを淹れてテイスティングをしているとバイトたちが出勤してくる。 「おはよう」 とだけ返し、またひと口コー

          芸能人妻、デビューします!出会い篇

          生理にまつわるアレコレ【女性キャストによる座談会】

          美浜「こんにちは、美浜えり(みはまえり)です。今回は物語の中から女性の登場人物の皆さまにお越しいただきました。題材は〝生理〟です。それぞれ違った悩み等があると思うので、話を聞いていきたいと思います。よろしくお願いします」 「「「よろしくお願いします」」」 美浜 「それでは皆さん、軽く自己紹介をお願いします」 紗楽 「長与紗楽(ながよさら)です。『色なき風と月の雲』に登場しています。職業は女優とモデルです。芸名は美崎サラ(みさきさら)でやってます」 碧 「こんにち

          生理にまつわるアレコレ【女性キャストによる座談会】

          #上司ガチャに失敗したので辞めたい

          理想の会社、理想の同期、理想の先輩、理想の上司─ そんなもの、存在しないのがこの世の中である。 製菓学校を卒業し、皆が働きたいお店を掲げて就活しているなか、そんなものが一切無かった私は結局、地元のケーキ屋さんに就職した。 今どきはやりのキラキラしたお店ではなく、素朴で老若男女に長く愛されるお店。しかも、この地域で何店舗か展開している地元密着のお店だ。 それぞれの店舗は昔ながらのケーキをベースに、少しアレンジを加えて個性を出している。 入社式なんてものはなく、事前に社

          #上司ガチャに失敗したので辞めたい

          3度目の初恋

          20代、30代があっと言う間に終わり、 僕は40代に突入した。 学生時代から長く付き合っていた彼女とは、28歳の時に結婚した。しかし同棲もしてから結婚したのにもかかわらず、結婚してから1年で別れた。 結婚しても何も変わらない、そのまま穏やかに過ごしていければそれでいいと思っていたのに、彼女は違ったようだ。  僕はしばらく2人での生活を楽しみたかったのだが、子ども好きな彼女は早く欲しかったようだ。 結婚前に意見をすり合わせておけばよかった。 「私は早いうちに子どもを産み

          ありがとうの強要ってキモイ │端役の徒然 7

          ありがとう その言葉って、強要されて言うものではないですよね? 言われると嬉しいのは確かだけれど。 そしてその〈ありがとう〉を言われたからってへりくだって 「いえいえ」 とかって言う必要も無いと思う。 「ちょっと、これってまだ在庫ある?」 開店直後のこの時間、開店待ちをしていた客の対応と入荷してきた商品を陳列するのに大忙し。 話しかけてこないでほしい。店内はそう広くないので、自分で探してほしい。 少しイライラしながら仕事をしていると、タメ口で話しかけられた。

          ありがとうの強要ってキモイ │端役の徒然 7

          ハルジオン

          みなさんは、ラブレターを貰ったことはありますか。 今、私の手もとには 《好きです。お付き合いしたいです。OKならクリスマスデート行きませんか》 そう書かれたラブレターがある。 それは仲の良い男友達から渡されたもので、宛先は私ではない。 ─ごめん、最低だ 男友達だと思っていた。そのラブレターを受け取るまでは。 彼は服装や持ち物は大人びていて、中学生らしくない。 でも年相応に可愛らしくて。男子らしい少し汚い字だけれど一生懸命書いているのが伝わってきた。 運良く封

          オリジナル小説│端役の徒然 6 無

          ハロウィンが終わると世の中は一気にクリスマス一色に染まる。うちの店も例外ではない。 10月31日の営業終了時刻が近づくと毎年いるのが、 「まだハロウィンの仮装グッズありますか」 と訪ねてくる客だ。 結構多いのだが、例に漏れず仮装グッズは早々に売り切れる。31日当日に残っているのは、インテリアなど置物ばかりだ。 営業終了後すぐにハロウィンのオバケやカボチャなどの飾りはバックヤードにしまい込まれ、すぐ出せるように仕分けしておいたクリスマスグッズを入り口付近に並べる。 す

          オリジナル小説│端役の徒然 6 無

          オリジナル小説│端役の徒然 5 推しと街

          久しぶりに旅をした。 日々に疲れ、仕事のことを忘れたかった。 仕事終わりそのまま電車に飛び乗り、予め買っておいた自由席の切符を改札に通す。 数年ぶりに乗る新幹線は、ガラガラだったあの頃と比べると、だいぶ乗客が戻ってきているような気がする。 都会の駅に停まる度、徐々に座席が埋まってくる。目的地に到着する前には、殆ど空席がなかった。 唯一と言っていいほど、遠い田舎から乗る利点は自由席に座れること、かな。 何年も、恋い焦がれたこの大都市に降り立つと、もう夜もふけた頃なのに

          オリジナル小説│端役の徒然 5 推しと街

          東京カフェ紀行 4軒目

          朝、余裕があればモーニングに行きたい。 いつもと違う場所で目覚めた朝、ベッドの上でゴロゴロしながらスマホで[モーニング]と検索する。 大手チェーンやどこでも食べられるお店を除外しながら、目ぼしいお店をピックアップした。 今いる場所から歩いてすぐだ。 ぱぱっと身支度をし外に出ると、想像以上に明るくて目を細める。 「まぶしい…」 店に着き、自動ドアをくぐると驚いた。まるで高級ホテルのような内装。シャンデリアまである。 来るお店を間違えたかな、と店の名前を確認するも、

          東京カフェ紀行 4軒目

          オリジナル小説│端役の徒然 4 夏の音

          皆さんは何を見て、何を聞いて、夏を感じますか? 私は、子どもの植木鉢を持ち帰るお母さんと、子どもの声。 私の頃は自分で持ち帰っていた気がするのだが、今時の小学生はそうなのだろうか。 よく分からない。 「ひーろ、ひろくん」 バタバタと子どもが店内を走り回る音、おもちゃを買ってもらえなくて泣き叫ぶ音、我が子の名前を呼びまくる音… この時期は、いつにもまして色んな音で溢れかえる。 セミの鳴き声もそうだし、なんならここ数年で急激に増えたハンディファンの音も。 「元気だなぁ」

          オリジナル小説│端役の徒然 4 夏の音