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へんちくりん人に遭遇した話し。【ユーモアエッセイ】
「へんちくりん人」は確実に存在する。
私は馬鹿にするでもなく、鼻をへし折ってしまおうと企んでいるわけでもない。
そしてその方が地球に生まれた存在価値切符が用意され、懸命に生きていることも理解している。
「人」を否定する権利は誰にも無いのはごもっともであるのだ。
何が言いたいのかというと、、、
とは言っても、とは言ってもだ。
地球に色んな人がいると分かっていても「へんちくりん人」に遭遇してしまうと、私も「へんちくりん人」の仲間入りとなってしまいそうになる。
そんなことがあったのだ。
私は近所のスーパーへ、母と妹と、そこに愛犬のカニンヘンダックスを連れて買い物へ行ったとき、外のベンチで、へんちくりん人に遭遇した。
ボサボサの長い黒髪を垂らした、60代くらいの目つきの鋭い女だった。
夏なのに幾十にも長袖を重ね着し、両手には指先が出る軍手のようなものをはめている。
カラフルなショルダーバッグを何個もベンチに置く女は、一人で三人掛けベンチを占領し、少し毛の汚れた白い小型犬を連れていた。
一瞬、目と目が合い、ブルッと違和感を覚えるようなオーラを女は纏っていたが、私は気に止めない。それが正解だと思って。
さらに犬同士の相性が悪いと困る。
女の犬は大人く座っていたが、こちらの犬をしげしげと言わんばかりに凝視する始末。
ここで吠え合いにでもなったら面倒であるという懸念が、私を冷静にさせようとした。
私と妹と愛犬は、母の買い物が済むまで、女から少し離れたスペースで、でも女からバッチリと見える位置で、他愛もない立ち話をしていた。
リードに繋がれた愛犬は、有り難いことに、女の犬に興味を示さず、買い物に来た人々の往来をを尻尾振りながら眺めている。
事件はここからだ。
「あら、可愛いね~」
と、片腕に包帯を巻いた、一人の年配女性がウチのダックスを褒めてくれた。
きっと他人の犬だけが褒められたのが気に食わなかったのだろう。
女は突然その女性に向かって、
「なに!骨折したの!?えー!!骨折したんだって!!ハッハッハッ~!!骨折だって!!骨折ッ~!!バカだね~!!バカだ!!」
と、キンキンとする気味悪い大声で言い出した。
二人は知り合いなのか?と思ったが、被害者の女性の様子を伺うと、そうではないらしい。
「骨折だっておかしいね~!!ああおかしい!!ざまぁだね!!ば~か!!」
と、大口開けて汚い言葉を発する女に、周囲からも警戒の視線が飛ぶ。
私がふと女を見ると、高笑いするそのを目は、笑っていなかった。
完全にへんちくりんのヤバイ人だと感づいた私たちは、その場を離れることした。
その際、女は信じられない凶悪な行為に及んだのだ。
ウチの犬めがけ、今しがた買ったであろう柄の長いホウキの先を突き出してきた。
バンバンと床を強く叩き威嚇もする。
そしてまたフェンシングのように勢いよく突っつこうとする。
リード引いて逃れたが、危うく愛犬が怪我するところだった。明らかな傷害行為である。
ホウキ片手の女の顔はイカれており、目は狂気でギラギラしていた。
当然、周囲の人々もサーっと散りに散った。
私は、腸が苛立ちと恐怖で煮えくり返っていた。
普段は何かにかけて緊急するくせに、こんな時ばかりもう一人の私が出る。正義の味方ピンクレンジャーだ。
ピンクタイツで文句の一つでも言いに行こうとしたが、そこで「へんちくりん人」の仲間入りしてはならぬと思い改め、きびすを返した。
しかし黙って去るのも癪に触るピンクレンジャー。
だから去り際に、綺麗に一発お見舞いしてやった。
女がホウキで床をバンバン続ける行為に対し
「見て見てすごい長いホウキじゃないアレ♪てか、折れちゃうそう~」
と言って指差し、へっちゃらな雰囲気をめいっぱい放ち、女とは正反対に、ほほほ~んと、爽快で愉快な笑みを見返してやったのだ。
女はえらく悔しがった。
ホウキを引っ込め、殺意がこもった鋭い視線を私に向けてきたのがその心情を物語っていた。
私は、女の「へんちくりん人」エリアに入りそうになったつま先を引き、即興にフンッと流し目で蹴っ飛ばすことに成功。
矛盾があるが、ピンクレンジャーは、決して鼻をへし折ったつもりはない。
あ、本当の事件になってしまっては後の祭りだから「へんちくりん人」には、私のような行動を取らないで無視するのが一番。どうか注意して欲しい。
それにしても、あんな殺意丸出しの目をした人間を、私は初めて見た気がする。
白い犬は大事に飼われているのだろうか?少々心配になるほどだ。
それから数ヶ月が経ち、一般道の交差点で再びアの女を見た。
沢山のショルダーバッグを体中に掛け、長い髪を振り乱しながら、猛スピードで自転車を漕いでいる姿であった。
犬は大丈夫だろうか。
最後までお読みいただきありがとうございました★
また来てね!
~おまけ~
スーパーで女は見なくなった。
スーパー側でもちょっとした問題になっていたのかもしれない。
あんなに誰と構わず威嚇して大声を出されたら営業妨害である。
怖くて近づけないのだから。
しかし注意されたところで素直に従うような人にも見えなかった。
犬に本気で攻撃してくるなぞ、怖い。怖すぎる。酷すぎる。
私はアの女のことを祈るしかできない。
事件を起こさず、彼女と犬が平和でありますように。と。
「祈り」は強いです。
そして感謝です。
ネタ提供をありがとう。
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