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03. 冷え性と生理痛の32才女性

はじめに:
「中医学タメシテミル」の次の相談者はCさんです。Cさん、ご自分の体調を正直に書いてご相談くださり、ありがとうございました。しんまいの中医薬膳師ですが、中医学の考え方と雰囲気にふれていただくために、相談内容を読み、仮説だらけですが自分なりに解釈し、対処法を説明させていただきます。

今回のご相談

基本データ

女性 32歳 Cさん 
体格:やせ気味。身長165cm、体重50~51キロ、平熱36.3度
アレルギー:花粉症
既往症:大きな病気にはかかっていない
服用中の薬:生理痛のため低用量ピルのヤースフレックス
飲酒:週2から3回 喫煙:しない
食生活:規則的、間食はしない
運動習慣:週一回ジムにいく
性格や精神状態:神経質・悩みやすい・憂鬱感がある・静か

気になる症状

最も気になる症状
冷え性と生理痛
:ひどい冷え性。クーラーに弱い。寒い時期に体調悪化。全身(特に手足)の冷えが気になる。ひどい生理痛。PMS(月経前野不調)あり。出血量は多め。おりものが多い(黄色)。
いつから?:「生理痛は薬が必要になったのは23歳くらいから。冷え性も大学生のときくらいから?」
どういう時に和らぐ?:「今は低容量ピルをのんでいるので生理痛の頻度は減って楽です。ただ体質は変わっていないので相談させていただきました。」
どういう時に悪化する?:「冷え性は年齢が上がるとともにどんどん辛くなってきた気がします。」

次に気になる症状
鼻水、あざ:「冬は外に出ただけですぐ鼻水が出て止まりません。また血の巡りが悪いからか腕に薄いあざのような箇所が少しあります(押すと消えるようなもの)。これも気になったのは大学の頃くらいから。」

その他
症状「ひどい・よくある」に記入あり:
爪が割れやすい。爪がもろい。髪が抜ける。白髪。耳が遠い。むくみがある。汗をかきにくい。身の置き所がない。性欲減退。血圧低め。喉から始まる風邪をよくひく。胃の冷え。冷たい飲み物が好き。便秘で困っている。残便感。日中すぐ眠くなる。

症状「まあそうだ」に記入あり:耳が遠い。身体のこり(首・肩・腰)。尿は遠い。一回の尿量は多め。尿が濃い。寝汗をかく。のぼせる。あざができやすい。目の下がピクピク痙攣する。立ちくらみ。乗り物酔い。ゲップがでる。口臭が強い。口の中が酸っぱい。口の中が粘る。生つばがでる。口内炎ができやすい。便秘。下痢。細い便。硬く乾燥した便。便秘と下痢の繰り返し。お腹の張り。ストレスで下痢。目が疲れる。いやな夢をみる。

問題なし:
すぐに眠れる。喉、胸、呼吸の不調や、ふるえ・身体の痛みはなし。

性格や精神状態

Cさんは「性格や精神状態」にマークが多く「肝」の状態の参考にしたので抜粋します。
程度(ひどい・よくある):神経質・悩みやすい・憂鬱感がある・静か
程度(まあそうだ):苦労性・不安感がある・イライラ・我慢することが多い・過敏・おおらか・わけもなく悲しくなる・よく泣く・悲観的・感情の高揚が激しい
程度(とくに該当しない):怒りやすい・驚きやすい・活発・楽観的・切れやすい・被害妄想がある・幻覚がある・幻聴がある


弁証

今回はわたしには難しいのですが、Cさんの相談シートからは「腎」「肝」「脾」が不調、と感じました。

中医学では五臓という概念があります。五臓とは、私たちの体を生かして動かしていくための働きや機能を、肝・心・脾・肺・腎(かん・しん・ひ・はい・じん)の5つに分けて呼んだものです。

そのうちの腎と脾と肝には次のような働きがあります。

腎の役割:
成長や発育、生殖をうながす。生命活動を維持する。水(すい)を代謝し、不要物は尿として排泄する。体や臓器を温める。外部の新鮮な空気を取り込む。
腎が不調だと:
腰痛に悩まされる。足腰が弱くなる。筋肉や骨が衰える。勢力が減退する。勢力が減退する。不妊につながる。足がむくみ下半身が冷える。のどや口が渇く。尿量が増えたり減ったりする。

脾の役割:
飲食物から得た栄養から、気血水(きけつすい)を作る。飲食物からつくった水の吸収と運搬を行う。飲食物から作った気や血を体の上部(肺や心など)荷送り、全身に巡らせる。内臓の下垂を防ぐ。血が血管から漏れでないようにする。
脾が不調だと:
ふとったりやせたりする。食後に眠くなる。顔がむくむ。下痢や軟便になる。疲れやすく、気力が出ない。あざができやすくなる。

肝の働き:
血(けつ)を貯めて浄化する。血の量を調節し、体の各所に分配する。ストレスに対処する。メンタルを安定させる。消化器系を正常に保つ。気を全身に巡らせる。
肝が不調だと:
目や爪にトラブルが出る。足がつる。情緒不安定になる。食欲不振・胃痛がおきる。体がこわばる。頭痛やめまいが起きる。

漢方的おうち検診(櫻井大典)

Cさんの体に起きているのは、以下のようなことかなと思います。

腎陽虚

腎が冷えることです。「腎」は、体や臓器を温める役割を持っているので、腎が弱って冷えると、ひどい冷え性になります。また腎は成長生殖に関する役割をになっているので、婦人科のトラブルも「腎」に関係します。腎の気をパワーアップし、栄養を補い、腎をあたためると改善します。

脾陽虚

脾が冷えることです。脾気虚よりひどい状態です。これも冷え性の原因になり、特に手足が冷えます。脾にパワーを与え(補気)、脾を健康にするのが近道です。また、Cさんは消化そのものの調子が悪いようです。「胃の冷えがある。冷たい飲み物が好き。便秘で困っている。残便感あり。細い便。硬く乾燥した便。便秘・下痢の繰り返し。食後に眠くなる。」等にマークがはいっていました。脾胃(消化器系)を冷やさず、消化にやさしい食事を意識しましょう。

腎と脾の冷えが緩和すると、全身の冷え性もよくなるので「寒い外に出ると鼻水が止まらない」という症状も少なくなると思います。もしその鼻水が透明な鼻水ならば感染症ではないので、おそらく体の冷えすぎでしょう。部屋で薄着ですごしていませんか。

肝陰虚

Cさんは中医学でいう「肝」にもトラブルがあるように思いました。ここでは「肝陰虚」であると仮定します。

肝陰虚とは、栄養不足で「肝」に本来蓄えておくべき量の「血(けつ)」がしっかり貯えられていない(=肝血虚)上に、津液(血以外の体液)まで不足した状態になった状態です。肝陰虚があると、肝が熱をおびてしまう、という現象までおきます。この肝の熱は、「肝熱口酸」という「証」にもつながったりします。Cさんの「口が酸っぱい」という症状は、それかもしれません。あるいは胃の不調であることも考えられます。

Cさんの目の下がぴくぴく痙攣するというのも、もし頻繁であれば、肝の弱りが原因かもしれません。「肝」は筋膜や筋と関連しているので、不調になると筋が痙攣を起こすことがあるからです。(睡眠不足や強いストレスが原因のこともあります)

また別の視点で「肝」と関係が深い「血」について考えると「血余はどうなってるかな?」とおもいます。中国には「血余」という言葉があります。血が余ったものが髪の毛や爪になるんだよ、母になる準備にも必要だよ、血が充実していれば更年期も楽だよ、等の話があります。(参考:『血余のはなし』誠心堂薬局) 許可を得て掲載しています)

Cさんは、お若いにも関わらず「爪が割れやすい。爪がもろい。髪が抜ける。白髪」などの項目に対して、程度大としてチェックされていました。「肝」に栄養が行き渡っておらず、肝の貯えの「血」の量が足りていないのかもしれません。(西洋医学的に、血管中の血液が「貧血」でなくても、肝の「血(けつ)」が足りないことはありえます。)

女性はとくに「肝」に十分に「血」の貯えがあって、のびやかに肝の気がめぐっていないと、老化が早まったり、更年期障害などがきつくなります。Cさんはレバーが苦手、とかいていらっしゃいましたが、レバー以外に食べてほしい食材も多くあります。

その他

腕に薄いあざのような箇所が少しあります(押すと消えるようなもの)。」とかかれていましたが、これらも脾の不調が関係している可能性があります。「こすると消えるようなあざが常に腕にある」というように読めたのできになりました。形成外科などのお医者様にも相談してくださいね。


対処法

上にかいた腎と肝の様子を放置せず、毎日すこしでも緩和させていけば、将来のべつの不調や、病気から身を守ることができます。

対処法 その1:食べる

■「自分だけの薬膳」をつくりあげる:
食事は大事です。調理例とおすすめの食材をかきます。

■調理例:
野菜も肉魚豆製品もいれられる腎によいレシピとしては「具だくさんの味噌汁」「長崎ちゃんぽん風スープ」「ボルシチ」「ポトフ」「おでん」(自分で魚介・肉類を足す)「具沢山の鍋物」「酢豚」「中華炒め(いろいろ)」があります。

具材たち
(+豆乳、鶏ガラスープの素、塩コショウ)一人分
↓↓↓
長崎ちゃんぽん風スープ(麺なし)一人分 焦げたけど

■おすすめの食材:
抜粋してかきます。たくさんあるので、「補腎」等のキーワードで、さらにネットや本で調べてみてくださいね。

腎の栄養を補う(補腎)腎
【効果】
冷え性・生理痛の緩和
【食材】:キャベツ、にら、ピーマン、三つ葉、らっきょう、オレンジ、みかんのすじ(きつらく)、レモンの皮、かじきまぐろ

体を温める(温裏・助陽) 肝・腎
【効果】冷え性・外で鼻水が止まらない
【食材】
にら、赤貝、えび、まぐろ、まながつお、ムール貝、羊肉、クローブ、シナモン、八角、ウイスキー

脾を健康にする健脾・補中)脾
【効果】消化機能が整う
【食材】穀物・雑穀全般、イモ類・豆類・きのこ・肉さかな・発酵食品。
例:うるち米、黒米、はとむぎ、各種雑穀、さつまいも、じゃがいも、里芋、山芋・長芋、大豆、いんげん豆、タピオカ、大豆、豆乳、納豆、枝豆、えのきだけ、おくら、かぼちゃ、カリフラワー、小松菜、さやいんげん、しそ、そら豆、なす、人参、ブロッコリー、マッシュルーム、大豆もやし、れんこん、アボカド、干し柿、りんご、栗、あじ、いか、いわし、うに、鮭、サバ、舌平目、鯛、たら、ヒラメ、ぶり、鴨肉、牛肉、豚のレバー、鶉の卵、卵黄、黒砂糖、氷砂糖、はちみつ、味噌、みりん、など

肝の陰血を養う(養肝)肝

【効果】肝の陰血を補い、肝の機能を正常にする(潤い・血)
【食材】しいたけ、カシス、すもも、ブルーベリー、プルーン(生)、黒ごま、あんきも、うなぎ、貝柱(干)、さば、ししゃも、すずき、たちうお、ほたて、ムール貝、きじ肉、レバー(牛・鶏・豚)烏骨鶏の卵、ローヤルゼリー

肝の津液の不足を補う滋陰・生津)
【効果】不足した体液(水分)を作り、熱っぽさをさます
【食材】青梗菜、トマト、カシス、梅、すもも、プルーン、もも、あわび、いか、うに、貝柱(干)、かじきまぐろ、はまぐり、ぶり、帆立、マテ貝、チーズ

※これらの食材x食材をキーワードにして日頃からレシピを検索すると、自分の好みにあった料理が出てくると思います。

対処法 その2:動かす

絶大な効果があるのに軽視されがちなのが「動かすこと」です。Cさんは週一回ジムにいくとのことなので、とても良いことです!

ただ、身体は毎日新陳代謝で入れ替わっているので、毎日5分でも、自分の「証」のことを意識しながら、身体をうごかしたり、マッサージをしたりすると良いでしょう。

  • ストレッチやヨガ:「冷え性」「生理痛」「温活」「腸活」x「ヨガ」などのキーワードで、ネットで自分にあっている動画を探します。

  • リンパのマッサージ:これは、TVをみながら、あるいはお風呂でもできますね。同じくキーワードで自分がピンとくるような動画を探します。

  • 散歩:毎日近所の散歩をつづけてみたら、おどろくほど改善したという話もよくあります。たとえば昼食後や夕食後でも。

  • ラジオ体操・テレビ体操:毎日その時間にテレビをつけるなど。あるいは、覚えてさえいれば、脳内で音楽を流していつでも実行できるかも。

  • 乾布摩擦:「乾布摩擦」x「腸」などのキーワードでネットで好きな方法を検索してください。参考:『服を着たままでOK!乾布摩擦で健康&美を目指そう!』(ふとん・寝具の西川)

  • その他:寝ながらできるヨガやストレッチもありますね!「寝たままできるヨガ」「寝たままストレッチ」などで動画を検索してみてください。

対処法 その3:やすむ

入浴・睡眠・リラックスタイムにしっかりと時間を割くことも重要です。腎陽虚は温めることが大事なので、38~40度のお湯でゆっくりと入浴するといいようです。睡眠もしっかりと。

対処法 その4:くすり

血や気を充実させるには1ヶ月は食の改善をつづけることが効果的です。ですが、薬も気になるようでしたら、自分で薬局で「冷え性」の言葉で漢方薬を探さないでください。異なる「証」にむけた薬にあたってしまうからです。専門家のいる漢方薬局や東洋医学の専門家がいる病院で相談してみてください。

Cさんは、脾(胃腸)の状態が充実していないので、いきなり「陽虚」に対応する薬ではなく、おそらくはじめは「冷えを意識して、益気補血、健脾養心」を求めるといいと思います。例として帰脾湯(きひとう)、加味帰脾湯(かみきひとう)、当帰補血湯(とうきほけつとう)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などがあります。専門の薬局にご相談ください。

よくばらずに一つだけ毎日続ける

まずは一つだけでも確実にできそうなことを決めて、1週間、1ヶ月…と毎日やってみてください。30日あれば、新陳代謝で身体のほとんどの部分は入れ替わりますから、不調な状態も、薄皮が剥がれるごとく、うっすらと改善されてくると思います。


最後に

お礼

Cさん、とても辛い体調について教えて下さり、ありがとうございました。体は毎日、毎分、毎秒、入れ替わっています。Cさんの「証」に変化を与えるには、Cさん自身が司令塔となり、生活を徐々に変えていくのが効果的です。今までの生活を全否定する必要はないので、興味のあるところから少しずつ変えていってみてください。将来「良かった」と思える時が来ると思います。この記事のどこかしらが何かのヒントとなり、体調が改善されて行くことを祈っています。

(この記事はまた加筆・修正していくので時々チェックしてください)

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参考文献

『食養生の知恵 薬膳食典 食物性味表』日本中医食用学会編著・日本中医学院監修 日本中医食用学会
『実用 中医薬膳学』 辰巳洋・著 東洋学術出版社
『中医臨床のための方剤学』神戸中医学研究会・編著 東洋学術出版社
『漢方的おうち検診』櫻井大典・著 学研
『「赤本」の世界 民間療法のバイブル』 山崎光夫・著 

ウェブ『服を着たままでOK!乾布摩擦で健康&美を目指そう!』(ふとん・寝具の西川)
ウェブ『血余のはなし』(誠心堂薬局)

※ほか、日本中医学院の教科書とノート

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