解決すべき問題はどこにでも転がっている
初回では、問題解決力がいかに今後さらに個人の能力として必要となるかを説明しました。そして問題解決力をピラミッドの頂点としてそれを支える様々な個人の能力と資質について簡単にまとめました。
第2回は「問題を見つけるコツ」についてお話しします。解決すべき問題はどこにでも転がっているのです。逆に考えると、問題とはわかっているものの放置されているか、問題視されていないかのどちらかです。私は、問題視されていないけれど、よく観察したりちょっと考れば「解決すべき問題」がたくさんあると思っています。
問題を見つけるコツは4つです。順に見ていきましょう。
当たり前だ、仕方ない、常識だ、と考えることをやめること。
常にもっと便利な方法はないか、などと考える癖をつけることです。つまり何事につけても「問題意識」を持つ癖をつけることです。
こうしていると通勤途上だけでも色々と見えてきます。例えば、駅前にたくさん停まっているタクシー。利用者の立場からすれば便利ですが、よく考えると無駄です。日本の大都市圏のタクシーは、客を乗せて走っている時間的割合(稼働率)が異常に低い。だから料金が異常に高い。だから利用客が少ない。だから値段を上げなければならない、という悪循環なのではないだろうか?と考えるのが問題解決への第一歩です。
ゴミの分別収集はどうでしょうか?良いことだと思って皆やっていると思います。市民としての義務ですね。それがいわゆる「当たり前」になっています。しかしちょっと考えみてください。面倒くさくはないですか?だったら便利になる方法を考えてもいいのではないでしょうか。曜日ごとに違うゴミを出すから、ゴミ収集場所がほぼ常時必要です。これは生活の質という大きな視点から見ればマイナス要因です。こうして問題意識を持つことによって、市民は分別せずにゴミを出す代わりに、分別する機械を開発するとか、あるいは分別する作業に従事する労働者を雇うなど、いろいろ方法が考えられます。機械の開発ならば産業振興にもなるでしょうし、投資の促進にもなるでしょう。こうやって当たり前を疑うことが、問題解決への第一歩なのです。
子どものような好奇心を自分の中から引き出すこと。
好奇心は、無知を認める素直な心と表裏一体です。子どもは知らないことが当たり前だから、大人をつかまえては「なんで?どうして?」としつこく聞きますよね?大人は自尊心がそれを妨げるのです。「聞くは一時の恥」でしかないのです。私は、新入社員の若い人が持っている経験や知識で、私が全く体験したことのないものがあることを素直に認めるように心がけています。どうやって有益な情報をネットで探すかとか、それをどうやって手軽に整理し見つけやすくするのか、などたくさんのことを若い人たちから学ぶことができます。
もう一つは、常に自分の周りと世の中全体に対して自分のアンテナの感度を上げておくことです。そのためには、なんでも観察すること。ぼーっと見るのではなく興味を持って物を見、理解することです。私は歩いていて自分の眼の前に現れるもの全てに対して「あれは何だろう?何でそうなっているのかな?」などと常に考える癖があります。
何にでも感度を上げておくためには、広く浅くニュースを読むことが役に立ちます。あくまでも広く浅くです。タイトルだけ見て中身が大体わかればいいのです。タイトルだけで興味を引かれたら読んでみる。要点がわかればそれでいいのです。テレビやラジオのニュースはダメです。自分のペースで取捨選択できないからです。
こうしていると、興味のあるものが時々引っかかってきます。それが点と点としてつながり、やがて線となり、自分の興味の方向性となってきます。そして大切なことは、「とりあえず最初の一歩を踏み出す」こと。なんでもまずやってみることです。そして興味を持った分野については深く掘り下げることです。そのためには、もちろん読書は大切な要素です。
常にメモを取ること。
人はちょっと閃いたこと(ここでは「問題意識」)をすぐにメモしないと忘れるものです。私はランニング中にいろんなことを考えます。癖ですね。その時にいろんなアイデアが閃いては消え、バラバラな考えが浮かんでは沈みます。ランニング中は瞑想状態のようなものだと思っています。だからその中で、これだ!と思ったアイデアは、その瞬間にボイス入力でテキストのメモとして残しておきます。メモを取れば忘れてもいいのです。だからまた違うことを考えられる。私が関わったほとんどのプロジェクトのアイディア(つまり解決すべき問題)も解決策も、その多くがランニング中に思いついたものです。
カスタマー視点で見ること。
商品を作る、サービスを提供するなどについて、何が問題かを探そうとするときどうしても陥りがちなのが、「作る側の理屈」から抜け出せないことです。
私は以前、アマチュア・オーケストラで指揮者をやっていました。そのうちの一つのオーケストラは初心者の演奏者が大半でしたから、あまり質の高い演奏はできない。それでも年に2回のコンサートには出演者の知り合いを中心にそれなりのお客さんに来てもらっていました。しかしポスターを見た一般の人が多少は来てくれても固定ファン層にはならなかった。私は毎回のコンサートの前後にロビーに出てお客さんと話すことを通して、彼らが何を楽しみにして来てくれているのか、演奏をどう感じたのか、などが手に取るようにわかりました。そこで気づいたのが、音楽そのものが重要なのではなく、コンサート会場で過ごす2時間あまりの間にどのように心地よい体験を提供できるかが重要なのだということでした。プロでもない初心者集団がいくら頑張ってもいい音楽ができるものではない。もちろん音楽そのものは練習を積むわけですが。。。だから私はお客さんとのコミュニケーションを重視しました。お互いに人として知り合う、そして音楽をより楽しんでもらうために、ステージ上でいろんなお話しをする、ということでした。これでリピーターが増え、常に満席のコンサートができるようになったのでした。詳しくは私のブログ[2]を参照ください。
まとめ
解決すべき問題はどこにでも転がっています。それらの問題を見つけるコツは、1) 当たり前だ、仕方ない、常識だ、と考えることをやめること、2) 子どものような好奇心を自分の中から引き出すこと、3) 常にメモを取ること、そして 4) カスタマー視点で見ることです
今回は問題を見つけるコツに絞りましたが、もちろんこの次のステップはこれらを解決すべき問題、解決できそうな問題としてきちんと定義し直すことが必要になってきますが、それはまた別枠でお話しします。
Reference
[1] Kashdan, T.B., What Are the Five Dimensions of Curiosity?, Psychology Today, Jan 2, 2018
[2] Iwata, T., 演奏会とは何か?〜マーケティングの観点から, 学生オーケストラへの提言
Header Image by epsos.de
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