見出し画像

日本の組織にも今必要な「カルチャー・トランスフォーメーション」を成功に導くために。


現在、『CHROパートナー』として、実際に組織の中に入ることで、伴走型での組織開発や戦略人事の支援を複数社に提供差し上げているなかで、最近、そのうちの2社の企業様の強いニーズで、私は『カルチャー・トランスフォーメーション』の推進役も担っています。
 
1社は日系企業様で、もう1社は外資系企業様です。
前者は「旧態依然の企業文化からの脱却」を、後者は「グローバルのトップダウンでのカルチャーの徹底と、日本法人らしさが創るボトムアップでの組織風土、それぞれの融合」を求めています。
 
後者のケースでは、私が以前、グローバル規模の外資系企業の日本法人HR責任者として、2社で実際に、トップダウンとボトムアップの融合で推進責任の役割を果たしていた実体験から、そのお客様の中に実際に入り、支援しています。これにより、お客様に対して有益なサポートができていることは非常に意義深いと感じています。

前者の日系企業様のケースでは、現状課題とニーズを、『対話』を通して把握しながら、その企業様に合うように上手く適用させながら伴走しています。
 

これらのニーズが、様々な企業様より同時進行で増え始めている背景を考察してみることは、日本の今と未来の組織・人事を考えるうえで、価値があることかと思います。よって、今回、その背景と、『カルチャー・トランスフォーメーション』に必要な要素は何なのか?   長年のグローバル企業でのHR責任者としての実体験から、簡単に概要をまとめてみました。 



1. カルチャー・トランスフォーメーションとは?

『カルチャー・トランスフォーメーション』は、その名の通り「変革」のひとつとして、組織の価値観や仕事の進め方、社員の行動などを変革するプロセスです。これは、日本においても、多くの企業が進むべきテーマであり、グローバル企業では特に組織の一体性を高め、変化に柔軟に対応できるよう推進されています。
 
各企業が、時代の急激な変化に柔軟かつ俊敏に適応しながら自らを変革させ、良き失敗やリスクを恐れずに挑戦し、学習を生み出し続け、仲間と協働して壁や困難を乗り越え、今までとは異なる新たな価値を共創し続けていくことのできる状態...  私はそのような意識を持ち “企業のカルチャーを変革” させていくことに対して、伴走をしています。
  

2. グローバル企業で推進されやすい背景

グローバル企業では、異なる文化や価値観、様々なバックグラウンドを持つ多様な社員が共創しやすいカルチャーが求められます。このため、企業が大切にするフィロソフィーをベースに、グローバルからのトップダウンで一貫性のある企業カルチャーの構築がしやすい環境が整っている傾向です。
 
また、日本に支社を置く外資系企業においても、本国が推進するグローバルな企業カルチャーとの融合が進み、日本法人においてもトランスフォーメーションが比較的スムーズに進行しやすいです。ただ、外資系企業とは言え、日本法人に所属する社員のマジョリティは通常、日本国籍の方であることが多い故、日本ならではの『組織風土』との融合は大きなチャレンジになることもあります。
  


3. 日系企業での推進が難しい背景

一方で、日本企業ではこの取り組みが進まないケースが多く見受けられます。伝統や慣習の影響、情報の非透明性、縦割りの組織構造の硬直性などが挙げられます。しかし、急速な市場変化や国際競争の激化といった要因から、日本企業もこのテーマに真剣に向き合う必要性が高まっていると言えるでしょう。
  


4. 企業カルチャー vs. 組織風土

よく、『企業カルチャー』『組織風土』を混同してお話されている方が多いように見受けられますが、いくつかのグローバル企業でHR責任者をしてきた私には、それらには重なる部分がありながらも、明確な違いがあります。

『企業カルチャー』は、その企業の伝統と歴史、フィロソフィー・創業者の想い、大切にする価値観、Code(行動規範)など、組織の基本的なアイデンティティを示す概念で、尊重され続けるようなものだと私は考えています。
 
一方、『組織風土』は、組織内の雰囲気や職場の状態を指し、日常業務におけるメンバーの感じ方、組織内での人間関係から醸成されるもの、相互間コミュニケーションや対話の質など、組織の一時的な状態や社内の空気感・温度感のようなものだと私は考えています。

『組織風土』は、英語では “Organizational Climate” と言われることからも分かる通り、「組織の気候」なのです。この『組織風土』は、組織内のパフォーマンスやメンバーの満足度に大きな影響を与えます。
 
『組織風土』の特徴として、相互間のサポートや協力に溢れていたり、社員間でのレコグニション(称賛)が自ずとなされている場合は、社員は "働きがい" があり、仕事に意味付けができており、やる気とエネルギーを持って "オーナーシップ(自律性)" を発揮して仕事に取り組む傾向が間違いなく高くなります。

よって、『カルチャー・トランスフォーメーション』においては、会社が何を大切にしているのかといった『企業カルチャー』を皆で再認識し、浸透していくような取り組みやコミュニケーションを図りながらベクトルを同じ方角に向けるようにしていきます。そのうえで、現在地での『組織風土』において、どこにRoot Cause(根っこの課題=根本原因)があるかを特定・分析し、そこに対して具体的に改善策を取っていくことが重要だと、私は実体験から考えています。
  


5. 変革の4つのフェーズ

『カルチャー・トランスフォーメーション』を推進するうえで、以下の4つのフェーズを念頭に置くと良いでしょう。
 
第1フェーズ: 『理解』
<あるべき姿> 社員が事実を論理的に理解している
<課題> Why(目的・背景)に関する情報不足
⇒ <組織内の壁> 情報の壁
<打ち手> 透明性あるコミュニケーション
 
第2フェーズ: 『共感』
<あるべき姿> 社員が感情面で受け入れている
<課題> 面従腹背による相互間の信頼不足
⇒ <組織内の壁> 感情の壁
<打ち手> ストーリーテリングな対話
 
第3フェーズ: 『主体化』
<あるべき姿> 社員が役割と責任を自覚している
<課題> 他人事だという意識
⇒ <組織内の壁> 視界の壁
<打ち手> "個のWill" と "組織のパーパス" の紐付け
 
第4フェーズ: 『行動化』
<あるべき姿> 社員が現場で変革行動を実践している
<課題> 慣習や旧態依然の体制・プロセス・行動
⇒ <組織内の壁> 意欲の壁
<打ち手> ボトムアップでの小さな成功体験の定着
  


6. 変革に必要なリーダーシップ

『CHROパートナー』として、『カルチャー・トランスフォーメーション』の推進役を担い、伴走支援するなかで、トップや組織リーダーの方々のリーダーシップも見逃すことができません。よって、『CHROパートナー』の役割のひとつとして、"エグゼクティブ・コーチング” を、組織リーダーという「個」に対しても、同時進行で提供差し上げています。
 
"エグゼクティブ・コーチング” を通して、変革に必要とされるリーダーシップのなかでも、「個」の状態や持ち味に合わせながら、主に次のような特徴に気づきを与え、行動変容へと導くことを伴走しています。
 
Approachable: 心理的安全性の醸成
Passionate: 信念を持った情熱
Courageous: 正しいことを実行する誠実さと勇敢さ
Emphatic: 相手への共感と他者への配慮と敬意
Great Listener: 他者の声に真摯に耳を傾ける姿勢
Trusted: 組織に共通するバリューの体現

 
 

7. 意識した方が良い配慮・注意点

『カルチャー・トランスフォーメーション』というと、会社全体や組織横断的に広範囲に一気に推進するイメージをお持ちの方も多いかもしれません。ただ、4章でも述べたように、現在地の『組織風土』を決して見逃してはいけません。
 
その観点で、5章の  "変革の4つのフェーズ” も念頭に置き、且つ、6章の "リーダーシップ”の変革を進めながらも、私は必ず、「個」と「チーム」という単位を重要視しています。

「個」との1on1での「対話」と、「チーム」という少数単位での「対話」を通して、"小さな変革” を丁寧に伴走していくことが大切だと、長年の実体験から理解しています。
 
まずは、「個」と「小さなチーム」で、"small & quick-win(短期的解決・小さな勝利)” を着実に『実感』いただくことが、『理解 ⇒ 共感 ⇒ 主体化 ⇒ 行動化』 の変革の4つのフェーズにつなげやすくなります。その「小さな成功の『実感』」を、徐々に、組織横断的に、そして、組織全体に拡散していくと良いでしょう。それが、"Empower” される "変革の力” だと思います。組織全体の拡散の際には、"small & quick-win(短期的解決・小さな勝利)” と "mid-long term solutions(中長期解決)” の双方観点で推進していくようにしています
 
 

以上が、実体験に伴う『カルチャー・トランスフォーメーション』に関する簡単な概要です。実際には、これらをベースに、各企業の状態を把握するために実際に中に入り、『対話』を重視しながらの伴走で、各企業ニーズに沿うよう、カスタマイズしたスタイルで推進をしています。
 
キーとなるのは、間違いなく『対話』です。
参考のひとつになるようでしたら、嬉しく思います。

今回共有したことを活かし、より成果を上げていくためには、常に新しい知識や手法にチャレンジすることが大切です。ぜひ他の「HRストーリー」記事も読んでいただき、ご自身のアイデアを広げてみてください。

今後も、実体験の共有の発信をすることで、皆さまの前進の後押しにつながるよう、微力ながら貢献できればと思います。どうぞ、お楽しみに!
 

この記事が参加している募集

外資系17年(HRトップ 7年)とプライム市場上場企業 Global CHRO(最高人事責任者)経験の私が「誰もが独自性を強みとして持ち、新しい無限の可能性を秘めている」を自身のコーチング哲学に、2023年3月 起業をしました。サポートくださる方々と一緒に日本を元気にしたいです!