【806回】阿部恭子「高学歴難民」
「東大、京大、阪大、名大、北大、九州大…なんて頭いいんだろう」
20世紀末、高校生だった僕にとっては、手の届かない狭き門。
ああ、有名大学に進んだ人たちには、エリートコースが約束されているんだな。
僕には縁のない世界だな。
時は流れ、「高学歴」の人たちが社会の中で苦しむ本が登場した。
エリートだから、世の中を進みやすいはずでは?いや、そんなことはない。
勉強は得意でも、社会に出て、会社で働く生活が苦手な人。
高学歴にプライドを持ち、まわりを見下してしまう人。
阿部恭子「高学歴難民」と姫野桂「ルポ高学歴発達障害」の2冊を一気に読んだ。
今回は、阿部恭子「高学歴難民」の感想を書く。
「高学歴難民」は大きく分けて5つのケースと最終章で高学歴難民が孤立する構造について述べられている。
5つのケースとはすなわち、「犯罪者になった高学歴難民」「博士課程難民」「法曹(法科大学院)難民」「海外留学帰国難民」「難民を支える家族の告白」である。
難民の苦しい生き様を読むのは、手の指を噛みしめるほど力が入ってしまう。
特に、親の期待。親の強制。世間体があるから、とまわりからどう見られるかを求められる姿勢!
そして、僕自身の中にも大学名で人の見方を変える姿勢がある。
「あ、あなた北大なんだ。」と言いつつ心の中では「スゲー」と思っている。
相手についている過去によって、相手の見方を判断するのは、もったいない。
目の前のその人を見ていたい。
そう再確認する。
苦しみではなく、今を生きる自分にとっても、希望につながる話も知りたい。
タクシー運転手になった「上田信彦」さんのエピソード。
帰国子女難民で紆余曲折しつつも行動し続け人生の目標を見つけた「江崎奈央」さんのエピソードを2,3回読んだ。
上田さんは、自分にあう仕事を見つけてワクワクして過ごしている。
江崎さんは借金をすべて返済、幸せは自分で掴み取るものなんだと前向きに生きている。
苦しいけれど、希望があった。
希望はどのようについてきたか。
著者の言葉を借りると
「資格もある。勉強もしてきた。それなのに、どうして俺には自分が求める仕事が当たらないのか」という発想がいかに、愚かしいか。恥ずかしい。
職場で、最善を尽くす。
生きやすさにつながるかもしれない。