【825回】「フランス革命の志士たち」
安達正勝といえば、「物語フランス革命」(中公新書)だろう。
この本との出会いが、フランス革命に興味を持つきっかけとなった。
フランス革命を学び直すためにもう一度「物語フランス革命」を読もうとしたところ、本棚から「フランス革命の志士たち」が出てきた。同じ著者による、別の角度から書かれたフランス革命の本。前書はフランス革命の通史であり、本書はより革命に向き合った人物に焦点を当てた一冊と言えよう。
以下、感想。
ルイ16世、マリーアントワネットに注目するのは、ギロチンに王族が消えていくその悲劇性が理由ではないか。
ゆえに、王族ではなく、革命を進めた人物の生涯に光を当てた本書は、貴重なのかもしれない。
ロベスピエールが恐怖政治をどんどん進めて、多くの人をギロチンにかけ、最後には自身もギロチンへ。その程度の知識しかなかったのだ。
ロベスピエール死後のバラスによる統治政府や、ナポレオン登場の経緯は、全く知らなかった。
ああ、統治政府ってのあったのね、ナポレオン皇帝になったのね、と淡々と事象を言葉で覚えていただけ。
本書では、ラ・ファイエット、シェイエス、ミラボー、ダントン、マラー、ロベスピエール、タリアン、バラス、フーシェ、タレーラン、ナポレオンの人生が描かれる。
死刑に反対していたロベスピエール。
もとはイタリア人のナポレオン。
この2人が特に印象深いかな。ナポレオンはもっと知りたくなった。また、佐藤賢一の「フランス革命」や「ナポレオン」といった小説を読む下地になったかも。
終盤、「革命家とは何か」を書いている。著者の熱意が漏れてこそばゆい。革命とは、命をかけるものなのだな。
命をかけて、何かの問題に飛び込む。
そんな生き方をしたいかどうか?
例えば、処刑台の前に来て「自分はよく生きた」と死ぬ覚悟を持って励んできた人達。そんなふうに、世の中の問題に当たるだろうか?教育の問題ひとつ取っても。
しかし、このような死と隣り合わせで世の中の問題に向き合う人は、かなり限定されているはずだ。
この日本の社会では、皆無だろう。
処刑はされなくとも、命は自然と減っていくのだ。だから、明日死ぬか、50年後死ぬか、人それぞれの違いがあるだけで、「自分は十分に生きた。がんばった。」と思えるかどうかなのだ。
人それぞれが持ち場で、革命を起こそうとし、その積み重ねが、今の世の中につながっている。そう思うと、自分の持ち場で何かほんのひとつでも、新しい仕事ができたら、もう心の中で、ダントン、ロベスピエール、ナポレオンが拍手してくれているようなものなのだろうね。