見出し画像

坂本龍一と福岡伸一の対談記『音楽と生命』を読んで

下北沢の古書ビビビで、また良い本に出会ってしまった。坂本龍一さんと福岡伸一さんの対談記『音楽と生命』である。

福岡さんは大学の時の教授で、講義がとても面白かった。いつも最前列で講義に参加していたし、著書もいくつか読んだ。私たちが学生時代に散々学んだ「条件が揃えば同じ結果が出る」という論理に異を唱え、生物は無限の変化が作用し合って現在に至ったと考えている。

福岡先生の好きなところは、生物学者という科学者でありながら、哲学や音楽、アートなどを含めた幅広い視野から、学問を教えてくれたところだ。
そんな福岡先生と音楽家・坂本龍一さんは長年の交流があり、分野は違えど共通した志を持っていたのだと、この本を読んで知るのである。

坂本龍一さんはYMO当初、コンピュータを取り入れた電子音楽で一世を風靡し、その後は繊細な映画音楽で世界に名を馳せた。その山頂で新たに登りたいと思う山を見つける。それが、限りなく自然に近い音楽だ。演奏方法が決められた楽器、定められた音階、頒布される複製物。これらを否定し、そして否定しきれない矛盾と闘いながら、二度と再現できない一回限りの音楽を大事にしたいと思っている。
生物学においても、同じようなことが言える。生命は一回限りだ。有限であるから輝くのである。

それぞれの分野でプロフェッショナルである二人の対談は博識高く、素人でも理解しやすくまとめられていた。一気に読み終えた今、以前より頭が良くなった気がして嬉しい。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?