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SANAAの《ルーヴル・ランス美術館》

今回はパリから電車に乗って1時間10分 フランス北部のランスに建つルーヴルランス美術館について記録する。

ルーヴルランス美術館はあのルーヴル美術館の分館で、設計は妹島和世氏と西沢立衛氏の建築事務所、SANAAが手がけた。
両氏が組む日本を代表する建築家ユニットSANNAが選ばれた事は、我々日本人にとっても大変誇らしい事である。
ちなみに西沢立衛氏は先日記録した豊島美術館の設計者でもある。

https://blog.his-j.com/.s/paris/2013/03/11494643535.html

展示作品の仕組み
通常美術館は独自の所蔵品を持つのだが、ルーヴルランス美術館では所蔵品は持たず、ルーヴル美術館の幅広いジャンルから選ばれた名画や傑作、未公開作品250点が展示され、5年に一度入れ替えがある。ある意味ルーヴル美術館の収蔵庫となっているのだ。最近このような手法をとる美術館が増えてきているらしい。

館内については透明感のある光に包まれた空間で、ボッティチェッリやゴヤなどの名作が時代順に見られる。

制作年順に並ぶ作品
この美術館の面白い点は、文明・文化を超えた様々な作品が製作年順に一同に展示されているところ。紀元前3500年の作品から1850年までの作品が順番に並び、美術史を辿るように作品鑑賞することができる。

地下の収蔵庫エリアを公開している

"Coulisses du musée"
(美術館の舞台裏)と名のついた地下の収蔵庫エリアを公開しているところも非常に面白い。このような美術館は中々ないのではないだろうか。

何故ランスに建設したか
ルーヴルランス美術館を建設しようと決まり、敷地選定の方針として、

美術館へのアクセスが不便な人々、また、美術館に行く習慣のない、文化になじみが薄い新しい観客に出会うこと

が目的だった。

この見地に立って考えたところ、歴史、経済、社会的な理由で文化から遠ざかった状況にあったのがランスの人々との事。

ランスはヨーロッパの交通の要所でありながら、戦争と炭鉱の廃止によりながらく荒廃した町だった。

市街地に適当な空地もあり、地域政治の伝統を再生・活性化する美術館を建設するには適当と最終的に判断されたようだ。

建物の形状に関しても、壁をなるべく取り除きできるだけ多くの作品を一緒に展示したいというコンセプトで5つの建物から織りなす建築とし、各棟を独立させ、それぞれを展示室としている。全て天井が低くまたアルミパネルの外壁となっている点が、今までの環境にも馴染み、非常にシンプルかつ軽やかで新しい建築となっている。そこが非常に良かったと感じる。

わざわざランスまで訪れる観光客を満足させるに相応しい建築だったことは、今後の地域活性化の資源となることだろう。

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