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【美術展】源氏物語@東京富士美術館

朝方積雪があったが、電車も止まらなかったので平日、開館と同時に行ってきた。JR八王子駅からバスで15分ほどで到着。自宅からえっちらおっちら行った感があるが着いてみれば存外近い?

東京富士美術館 道路を挟んで隣は創価大学

展示室内は撮影禁止だったが、入口にあった「復元装束による打出の再現展示」は撮影可。

打出(うちいで)

打出(うちいで)とは、御簾(みす)の下から装束の出し、寝殿造の空間を演出するしつらいのこと。
この時代の深窓の令嬢は文字通り部屋の奥深くにいらして、殿方には顔なんてみせなかった。見せたら最後「結婚!」くらいの重い意味があった。

打出の袖口や裾に金工細工
梅に鶯
裳(も)

ウエディングドレスのロングトレーンのような白く長い装束は「裳(も)」。裳は、女房にとって儀礼的な衣服で、目上の人の前では決して省略することができなかった。裳を身に着けることは女性にとって成人の証でもあった。

大河ドラマの影響で今年は「源氏物語」に関する企画物が多いと思うが、その中でも充実のラインナップを誇る展覧会ではないだろうか。
源氏物語全五十四帖のそれぞれの場面を余すことなく絵画や工芸で見せてくれた。

印象深かったのは、
第五帖「若紫」源氏が後の紫の上である少女を垣間見る姿。高貴なお方ののぞき見には、当時、そんな方法しかないと分かっていても背中に哀愁を感じる。
第七帖「紅葉賀」友人の頭中将と青海波を舞う
第九帖「葵」光源氏の正妻・葵の上と六条御息所の車争い。そりゃあもう大変だった様子がよく描かれている。

屏風絵も数多く展示されていて、大きさと煌びやかさが圧巻。
その中でも
第二十八帖「野分」を題材とした
「垣間見」林晧幹(こうかん) 1922年(大正11年)岡山県立美術館蔵
の屏風絵は描かれた時代も現在に近く色彩も鮮やか。描かれた場面が”娘として育てている玉鬘にそれ以上の気持ちを表す光源氏と、源氏の息子の夕霧がそれを不審に思う”一瞬の均衡の揺らぎ。

切なかったのが、
「焔(下絵)」上村松園 1918年(大正7年) 松伯美術館蔵
東宮の妃という高貴で且つ才媛でもあった六条御息所の生霊の画。

本作の「焔」 画は東京国立博物館蔵の借り物。

本作の方がまだ可愛げがある。展示されていた下絵の方は上村松園にしては明らかに異質な作品、とのこと。この画を描いたころ上村は”スラムプが来て、どうにも切り抜けられない苦しみ”を抱えたいたそうな。むべなるかな。

楽しかったのは、
「源氏帚木(ははきぎ)」安田靫彦(ゆきひこ) 1956年(昭和31年) 二階堂美術館蔵
私が「源氏物語」を読んでその面白さに引き込まれたのはこの場面から。あの当時も現代も、男も女も思うことは変わらない!と。
”五月雨の夜、光源氏の宿直所(とのいどころ)に頭中将たちが集い、女性談義”。最近の「光る君へ」でも同じような場面があったが、ここをモチーフにしているに違いない。
安田靫彦の絵では光源氏の直衣(のうし)の胸元がぐっとはだけて見える白い装束がランニング!のように見える( *´艸`)。

これだけで企画物としてやって欲しいくらい、もっとじっくり見たかったのが、
「潤一郎新訳 源氏物語 愛蔵本挿絵原画」奥村土牛他 1955年(昭和30年) 中央公論新社蔵
谷崎潤一郎の訳本の挿画全56図。奥村土牛や小倉遊亀は大好きな画家なので彼らの画というだけでも目を引く。

ショップでは今回の企画の絵葉書も売られていたが、こちらの方を復活して売って欲しかったのが、
『源氏物語絵葉書』梶田半古 1905年(明治38年) 東京富士美術館蔵
青海波を踊る「紅葉賀」、光源氏の懊悩の元となった猫の場面「若菜上」、美しい上に、場面の情景の捉え方が素晴らしい。

図録 3,500円(税込)

図録もほぼ迷う事なく、購入。
いやぁ、楽しかった♪

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