03:ブランディングの基礎〜ブランドポジショニング戦略
こんにちは、株式会社enhanced(enhanced Inc.)のブランドエンハンサー、Hiromi Maeoです。前回は「ブランドアイデンティティの構築」について説明しました。今回は、効果的なブランド戦略の要となる「ブランドポジショニング戦略」について詳しく説明します。
ブランドポジショニングとは
ブランドポジショニングとは、ターゲットとなる顧客の心の中で、自社ブランドが競合他社と差別化されて独自の位置を確立するプロセスのことです。これに関して、アル・ライズとジャック・トラウトは、「既に顧客の心の中にある認識に働きかけて再構成」することが重要だとされています。
この考え方は、1969年にトラウトが発表した論文「Positioning is a game people play in today's me-too marketplace」に端を発しており、その後の両者の著書「Positioning: The Battle for Your Mind」(1981)で詳細に展開されました。この考え方は、現在のような情報があふれる社会において、顧客の心の中に明確な位置を占めることの重要性を強調しています。
ブランドポジショニングの重要性
効果的なブランドポジショニングのためには以下の点が重要となります:
差別化:競合他社との明確な違いを示し、選ばれる理由を提供する
価値の提案:顧客にとってのブランド独自の価値を明確に伝える
意思決定の指針:マーケティング戦略全体の方向性を決定する(ブランドポジショニングが明確であれば、製品開発から広告まで一貫した方向性を保てるため)
一貫性の確保:ブランドコミュニケーションすべての基盤となる一貫性
ブランドポジショニングの戦略
1. 市場分析
顧客分析:顧客のニーズや欲求、行動パターンを理解する。例えば、顧客調査、フォーカスグループ、ソーシャルメディア分析などを通じて深く理解する。
競合分析:主要な競合他社のブランドポジショニングを把握する。競合他社の強みや弱み、市場シェア、ブランドイメージなどを分析する。
自社分析:自社の強みや弱み、独自の価値を明確にする。(SWOT分析やコアコンピタンス分析など)
2. ターゲット顧客の選定
最も価値を提供でき、かつ収益性の高い顧客セグメントを選定する。デモグラフィック(年齢、性別、収入など)やサイコグラフィック(ライフスタイル、価値観など)、行動的(購買頻度、ブランドロイヤルティなど)をセグメンテーションの基準にする。
3. 差別化要因の特定
製品特性やサービス品質、ブランドイメージなどといった競合他社と差別化できる要因を特定する。
4. ポジショニングステートメントの作成
以下の要素を含むポジショニングステートメントを作成する:
ターゲット顧客
競合フレーム
独自の価値提案
主要な差別化要因
例:「ブランド名」は、「ターゲット顧客」に対して、「競合フレーム」の中で、「独自の価値提案」ができる唯一のブランドです。なぜなら、「主要な差別化要因」だからです。」
5. ポジショニングマップの作成
重要な2軸(例:価格と品質)を設定し、競合他社と自社のポジションをマッピングして視覚化することで、市場における自社の位置づけを明確化する。
6. コミュニケーション戦略の立案
ブランドポジショニングを効果的に伝えるためのメッセージとチャネルを策定する。例えば、広告やPR、ソーシャルメディア、イベントなどといった様々なコミュニケーションチャネルの活用も含む。
7. 一貫性の確保
すべてのマーケティング活動がブランドポジショニングと一致していることを目指す。製品開発や価格設定、流通チャネル、プロモーション活動などといったマーケティングミックスの全要素を含む。
成功事例:Volvoのブランドポジショニング
Volvoは「安全性」を中心としたブランドポジショニングで成功を収めています。
長年にわたり安全性を強調した一貫性のあるマーケティングを展開しており、「安全な車=Volvo」というブランドポジショニングを確立しています。例えば、1959年に発明した3点式シートベルトの特許を無償で公開したことは、安全性へのコミットメントを示す象徴的な出来事の一つです。
Volvoは、この一貫したブランドポジショニングにより、安全性を重視する顧客層からの強い支持を獲得しています。
まとめ
効果的なブランドポジショニングは、顧客の心の中で独自の位置を確立し、競合他社との差別化を図る上で極めて重要な要素です。市場分析やターゲット顧客の選定、差別化要因の特定、一貫したコミュニケーションは、強力なブランドポジショニングを構築することにつながります。
ブランドポジショニングは一度決めればいいというものではありません。市場環境の変化に応じて適宜見直ながら調整していく必要があります。ポジショニングは、テクノロジーの進化や消費者の価値観の変化といったさまざまな要因に合わせて、微調整・再定義することが重要です。
次回は「ブランドエクイティの理解と構築」について詳しく説明する予定です。
お楽しみに!
弊社のブランディングデザイン事例は、以下のリンクからご覧いただけます。ブランドアイデンティティがどのように視覚的に表現され、デザインに落とし込まれているか、ブランディングの視覚的側面に興味のある方にとって、参考になる事例が多数ございます。
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