英語のこぼれ話③人称代名詞
みなさん、こんにちは。
英文法学び直しCafeへようこそ。
前回、前々回と、
英語の人称代名詞について学びましたね。
いろんな種類や格変化があって、
「覚えきれないよー!(もう英語ムリ……!)」
と、しんどくなっている方も
いらっしゃることでしょう。
そこで今回は、
英語以外の言語に目を向けて、
「あれ?実は英語って、
意外とシンプルじゃない?」
と感じられるような話を
お届けしたいと思います。
好きな飲み物を片手に、
気楽に読んでいただければ嬉しいです。
なぜ、英語の人称代名詞は覚えにくいの?
まず、日本語を母語とする私たちにとって、
英語の人称代名詞がなぜ覚えにくいのか、
そのことについて考えてみたいと思います。
最も大きな原因は、
日本語と英語の構造が違うことです。
1.助詞で格を表す日本語
日本語は「膠着語(こうちゃくご)」といって、
名詞に「が」や「は」、「の」、「に」などの
助詞(じょし)をくっつけることで
その名詞の「格(かく)」を表します。
たとえば、
「私」という代名詞で考えてみましょう。
「が」や「は」という助詞を付ければ、
主格になります。
「の」という助詞を付ければ、
所有格になります。
「を」や「に」という助詞をつければ、
目的格になります。
「私は」、「私の」、「私を」の使い分けを、
私たちは当たり前のようにできています。
どんな助詞が後ろについても、
「私」という名詞の形は変わらないんですね。
そして、
助詞の前にどんな名詞が来ても、
助詞の形も変わらないんです。
助詞で格を表す日本語に慣れているので、
そうでない言語を学ぶときに
難しいと感じてしまうのです。
2.助詞がない英語
一方、
英語は「屈折語(くっせつご)」と言って、
助詞がありません。
助詞がない代わりに、
名詞を含む語の形を変えることで格を表す
言語なんですね。
これは英語だけではなく、
フランス語やドイツ語などの
インド・ヨーロッパ語族(ごぞく)の言語は
大体そうです。
格変化の表し方が、
日本語とは全くちがうんです。
文中での語の役割や
語と語の関係性の表し方が
日本語と英語では全くちがうから、
頭が混乱するんですね。
では、
英語の人称代名詞は
本当に難しいんでしょうか?
ドイツ語や日本語と比較してみましょう。
ドイツ語との比較
1.ドイツ語の人称代名詞は
1~4格に変化する
まず、この表を見てください。
これは、
ドイツ語の人称代名詞の格変化の表です。
ドイツ語の格変化は、
「1格(主格)」、「2格(属格)」、
「3格(与格)」、「4格(対格)」の
4パターンがあります。
この表の左端を、
縦(たて)に読んでみてください。
「 ich(イッヒ=私は)」
「 meiner(マイナー=私の)」
「 mir(ミア=私に)」
「 mich(ミッヒ=私を)」
という風に、
4つの格に変化していますね。
英語は
「 I(私は)」
「 my(私の)」
「 me(私を、私に)」の
3つの格しかありませんよね。
これだけでも、英語の方がシンプルです。
2.後ろの名詞が男性か女性か中性かで
語尾が変わる
さらに!
ドイツ語は、
名詞も「男性」、「女性」、「中性」の3種類に
分かれるので、
人称代名詞の語尾が変わります。
(人称代名詞というより、
所有形容詞といったりします。
言語によって文法用語も少しずつちがうのが
興味深いですね。)
たとえば、
「私の兄弟は」をドイツ語でいうと
「 meiner Bruder(マイナー ブルーダー)」
と、「 mein 」に「 er 」が付きます。
しかし、
「私の姉妹は」の場合は
「 meine Schwester(マイネ シュヴェスター)」
と、「 mein 」に「 e 」が付くんです。
英語なら、
「 my brother 」、「 my sister 」のように、
「 my 」という形は変わらないですよね。
3.「名詞の性+1~4格」で語尾が変わる!
さらにドイツ語では
名詞の性の区別に加えて、
人称代名詞は
「1~4格」の4つの格に変化します。
「私の兄弟」を例にあげると、
1格「 meiner Bruder(私の兄弟は)」
2格「 meines Bruders(私の兄弟の)」
3格「 meinem Bruder(私の兄弟に)」
4格「 meinen Bruder(私の兄弟を)」
という風に、
語尾が4種類に変化します。
(2格の時は、男性名詞の語尾に
「 s 」が付きます。)
「私の姉妹」の場合は、
語尾の形がちがいます。
1格「meine Schwester(私の姉妹は)」
2格「 meiner Schwester(私の姉妹の)」
3格「 meiner Schwester (私の姉妹に)」
4格「 meine Schwester (私の姉妹を)」
どうでしょう?
うしろに男性名詞が来るか
女性名詞が来るかで
語尾が細かく変化するのは、
覚えるのが大変そうですね。
ドイツ語には中性名詞もあるので、
語尾の種類がさらに増えます。
フランス語やイタリア語も、
うしろの名詞が男性か女性かによって
人称代名詞の形が変わるので、
英語より覚える内容が多いです。
英語なら、
全て「 my brother 」「 my sister 」で済むので
シンプルだと思いませんか?
4.ドイツ語には2種類の「あなた」がある!
そして、
ドイツ語の「あなた」には2種類あるんです。
親しい人に使う
「 du (ドゥー)」と、
親しくない人や目上の人に使う
「 Sie(ズィー)」。
心の距離感によって、使い分けます。
「 you 」1つで済む英語は、
シンプルで覚えやすいですよね。
日本語との比較
次に、
私たちの母語である日本語を見てみましょう。
「私」、「あなた」、
「彼」、「彼女」、「それ」……。
一見、シンプルに見えます。
しかし、「私」を意味する語が
たくさんあると思いませんか?
「あたし」、「僕」、「オレ」、
「わたくし」、「拙者(せっしゃ)」
などなど、いろんな言い方がありますよね。
それから、
「あなた」を意味する語も、たくさんあります。
「君」、「あんた」、「あなた様」、
「お前」、「汝(なんじ)」などなど。
「彼」や「彼女」を意味する語も、
「あの人」、「あいつ」、「奴」など
たくさんありますね。
漢字・ひらがな・カタカナの使い分けも
含めると、
数多くの人称代名詞があります。
相手との関係性や場面、自分の性別、
性格などによって、
私たちは自然に
人称代名詞を使い分けています。
これは、
日本語を学ぶ外国人にとって
覚えるのが大変だと聞きます。
まず、
人間関係を上下でとらえる日本文化を
理解しなければなりません。
他にも、
日本語を学ぶ外国人が苦労することがあります。
それは、
「日本語の文には主語や目的語がない」ことです。
第3回や第4回でお話ししましたが、
日本語では「好きだよ。」と言うだけで、
「私はあなたのことが好きだよ。」
という意味だと伝わります。
この、「主語や目的語が省略された文」を
理解するのが難しいと
日本語を学ぶ外国人からよく聞きます。
特に、英語のように
「主語と目的語をはっきり言う」言語を
母語とする人々は、
「誰が誰を好きなの?」と、
混乱するようです。
私たちが英語を学ぶ際に苦労するように、
外国人が日本語を学ぶ際にも
苦労があるんですよね。
どの言語が簡単で、どの言語が難しいかは、
一概には言えません。
学びたい言語が自分の母語と似ていれば
「簡単」と感じるし、
自分の母語と似ていなければ
「難しい」と感じるんです。
英語の人称代名詞は、意外とシンプル!
まとめになりますが、
英語の人称代名詞は意外とシンプルです。
覚えるまでは大変ですが、
覚えてしまえば簡単です。
もっと複雑な人称代名詞を持つ言語は、
ドイツ語に限らずたくさんあります。
ですから、
心折れそうになってもあきらめずに
1つずつ覚えていきましょう。
昨日より今日、今日より明日。
1つでも多く覚えられたら、
それでいいんです。
忘れたら、また覚えればいいだけ。
忘れたと思っていた単語も、
実はあなたの心の引き出しに
ちゃんとしまわれていて、
ある時ふと
思い出したりするものです。
だから、大丈夫です。
語学は、がんばった分
着実に上達します。
努力は決して裏切りません。
これからも、一緒にがんばりましょう!
ドイツ語のすすめ
今回、英語と比較するために
あえてドイツ語の難しさを強調しましたが、
ドイツ語にはドイツ語の良さがあります。
英語より文法のルールは多いですが、
英語より「例外」が少ないので、
ルールを覚えてしまえば
簡単に使いこなせるようになります。
ドイツ語を学ぶと、
クラシック音楽や文学、哲学、医学など
様々な分野への理解も深まりますよ。
もし興味を持たれましたら、
英語と並行して学んでみては
いかがでしょうか。
いかがでしたか?
今回は、
いつもより長くなってしまいました。
次回は、
英語の五文型①について解説します。
また読んでいただけたら嬉しいです。
みなさんのスキやフォローが
私の励みになっています。
最後まで読んでくださって、
ありがとうございました。
英文法学び直しCafe