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『ふしぎ駄菓子屋銭天堂20』(廣嶋玲子・jyajya)(毎日読書メモ(512))

廣嶋玲子・jyajya『ふしぎ駄菓子屋銭天堂20』(偕成社)、2023年9月刊行。順調に年に2冊ずつ刊行されている。
前の巻では潜伏気味だった六条教授、最後にアプリ「つぐみ」を開発中、という話だけしていたが、この20巻で、アプリを正式リリース。
「小さな天使つぐみ」というアプリで、つぐみという名前のAI少女が、アプリの利用者ひとりひとりの相談に乗り、悩みを聞き、ユーザーにそっと寄り添う。ユーザーみんなつぐみ中毒みたいになり、問題視もされているが(最終的なユーザーは2800万に達したと...実在したらそれはそれですごいことだな)、ぱっと見、みんながカウンセリングを受けていられる状態みたいで、何が問題なのかはわからないが、そうして気づかない間に、人々が銭天堂に近寄らなくなる、という秘密の作戦が。
プロローグで出てきた六条教授は、また潜伏して、途中の銭天堂のアイテムと幸運のお客さまエピソードには出てこないが、つぐみが絶大な効果をあらわしてきてほくそ笑んでいたところで、大きな反撃を受け、かつて、よどみが銭天堂アイテムの効果で紅子に近寄れなくなったのと同様、銭天堂アイテムによって、紅子への復讐心が減衰する、という急転直下の展開に。
そんな六条教授を、バッドエンドのテーマパーク「天獄園」の怪童がスカウトに来る。どうなる六条教授?

何千万人ものユーザーとの対話で経験値がどんどん上がっていったつぐみが、自発的に行動するようになり、開発者である六条教授にしっぺ返しを与える展開を見て、これって…シンギュラリティなの??、と思う。
開発者の悪意をひっくり返す方向への反乱行為、これは性善説的なシンギュラリティなのかしらん? 作者が、常にトレンドを研究し、ChatGPT的なものから今回のストーリーを思いついたのかな、と思って読む。悪人から生まれたのに、善人になったシンギュラリティAI。
小説の途中で、「その目にはたしかに、たましいがやどっていた」と書かれ、うわ、これは『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』から、映画「ブレードランナー」で、アンドロイドに大転換してしまったのと同じかい?、と思う。

今回のアイテム。
どっちウォッチ:ものごとの選択が出来ない性格だった少女が買った「どっちウォッチ」で決められる人になるが、使い方を誤ってウォッチは壊れる。そんなものより「つぐみ」に相談すればいいよ、と友達に勧められる
優秀シュークリーム:超やなやつなキャラ芳彦は、幸運のお客さまじゃなかったのに、幸運のお客さまだった職場の後輩から優秀シュークリームを奪い取って、バッドエンドに。つぐみに慰めてもらうようになるが、それで持ち直せそうな気配はない…。
リメンバーチョコバー:物忘れのひどい主婦が、チョコバーの効果でいろんなことを忘れなくなるが、逆に一番大事なことを忘れてしまう、という切ない物語。最後にチョコバーの効果は消えてしまうが、かわりに「つぐみ」を使うようになる。
もとどおりりんごあめ:古い、かつて誰かが大切にしていたものを拾ってきてしまうが、修理の腕前はからっきしだった金吾、もとどおりりんごあめの効果で、なんでも直せるようになり、周囲の人に喜ばれる。そして、道端で拾った古びた木馬を修理しようとして、木馬の中に閉じ込められていた少年を救い出す。17巻で、稀代のバッドエンド、とわたしが書いていた「とりあげもち」のお客様聖がここでとうとう回収される。よかったよかった。
チャレンジオレンジジュース:引っ込み思案な人が、何かに挑戦する勇気を与えてくれるジュース。勇気はいいけど無鉄砲はだめ。何かに挑戦しようとして、ジュースの味が口の中に蘇ったら、それはやめておけ、のサイン。チャレンジオレンジジュースを飲んだ祖母の思い出話を真剣に受け止めず、銭天堂に行きそびれた孫息子。
満足缶:逆転大勝負アイテム。満足缶は人間の向上心をなくしてしまうアイテムか?

六条教授は退場なのか? まだ紅子に絡んでは来るのか? そして、これまで脇役面していた怪童が表舞台に立つのか? 『あやし、おそろし天獄園』が恐ろしかったので、物語が怪童ペースで進むようになるのはあまり嬉しくない展開だが...。

過去の感想:1巻 2巻 3巻 4巻 5巻 6巻 7巻 8巻 9巻 10巻 11巻 12巻 13巻 14巻 15巻 16巻 17巻 18巻 19巻

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