『ふしぎ駄菓子屋銭天堂9』(廣嶋玲子・jyajya)(毎日読書メモ(366))
廣嶋玲子・jyajya『ふしぎ駄菓子屋銭天堂9』(偕成社)、8巻と続けて読む。続けて読むと、前のストーリーを忘れちゃう前にすっと続くのだが、こういう読み方はちょっと邪道な気も。子どもの読書は、もっともっと待ち焦がれて、前の巻を繰り返し反芻して、待望の新刊を舐めるように味わって読むのが本当は正しい読み方だと思う。駆け足が勿体ないのが子どもの本。
勝手に対決してきた、たたりめ堂のよどみを辛くも粉砕し、始末がついたところで旅に出た、紅子と相棒の猫の墨丸。銭天堂の留守は金の招き猫たちに任せ、気のむくままの旅の空。このシチュエーションは開放的で読んでいて結構気持ちがいい。袖振り合うも他生の縁、本日のお宝のお金を持っている幸運のお客さまを選ぶことなく、たまたま知り合った人に、その人に合いそうなアイテムをプレゼントする顛末が6つ。
わたしは乗り物酔いのひどい子どもだったので、最初の新幹線で隣り合わせた、乗り物酔いのひどい女子大生のエピソードは他人事でない気持ちで読む。貰った「酔わんようかん」が羨ましい! でも、乗り物酔いと酒の酔いのダブル対策は出来ない、というオチで苦笑い。
温泉宿のエピソードで、かつて紅子から買ったまんじゅうの効果が何十年も続くこと、もうそのまんじゅうは作っていないので、同じものを孫が食べることは出来ないが、食べた祖父が持っていた効果を紅子の力で孫に移してあげるところ、ややご都合主義的なハッピーエンド。
カメラに貼ると、人の映り込みがなくなる「うつらんシール」。
旅先のエピソードの中で唯一、徹頭徹尾悪者キャラだった小学生のバッドエンド、「底なしイーカ」。
無人島で鯛を吊り上げるのを手伝ってくれた男が紅子のトランクの中に見つけた「カモメアメ」の切ない結末。
お土産を買いに入った和菓子店で贈った「アイディアあんこ」は、逆説的にその店を救ったというエピソード。
どの物語も、人間の小さな欲望と、人頼みにしなかった人が最終的に幸せになるということを色々な側面から描いている。
巻末のおまけは墨丸の絵日記。二度目の登場だが、可愛くて心和む。
読んでいて気ままな旅に出たくなる、旅情誘う一冊だった。
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