毎日読書メモ(21)『その姿の消し方』(堀江敏幸)
堀江敏幸『その姿の消し方』(新潮社、現在は新潮文庫)。
堀江敏幸の本を読むのは本当に愉しい。幸せです。
骨董市でめぐりあう、古い絵はがき、そこに書き付けられた詩。フランス語の詩を平仄あわせて日本語に訳す作者。 美しい装丁の本からフランスの田舎町の市場の様子、人々の呼吸を感じ、同じ人の書いた絵はがきを数十年のスパンで1枚また1枚と発見し、背後の物語を探る。その過程で出会ったいとしい人々。 フランス留学の間の下世話な滞在費のエピソードなど挟んで、現実に引き戻されても、無名の詩人の書き付けたことばが行間で光っている。
(2016年5月)