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毎日読書メモ(135)『彼女の家計簿』(原田ひ香)

原田ひ香『彼女の家計簿』(光文社、現在は光文社文庫)を読む。前から気になっていた原田ひ香、初めて読んだ。

女の決断に対する男の無力、女の反発が描かれ、驚く位男の影のない小説。3人の主要な女性の人生の中で、男は何だったのだろう、と、消しゴムで消されたような存在感に若干の違和感を抱きつつ、凝った小説構造に没入する。谷中で活動するNPOが、活動場所を提供してくれた天涯孤独の女性が残した家計簿を、女性の親族に送ったところから、物語が動く。戦中から戦後にかけての家計簿の中に書きつけられた日記から浮かび上がる、理路整然とした物語は何故途中で断ち切られることとなったのか。主人公里里と、実母との断絶、家計簿の書き手である加寿の生涯についての謎、NPOの代表を務める恵理が抱える過去の秘密。三つの謎が緩やかに混じり合い、自立という言葉の意味を考えながら読み終える。

谷中の街並みを歩いているような気持で、登場人物たちの心情を思う。生きるということは難しく、いとおしい。


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