恩田陸『夜明けの花園』(毎日読書メモ(537))
恩田陸続く。
今年の1月に刊行された『夜明けの花園』(講談社)、水野理瀬シリーズ最新刊だが、2022年に雑誌に発表された「絵のない絵本」(学園を出たあとの理瀬が、ヨーロッパ方面のリゾート地で思いがけない事件に巻き込まれる)
2023年に雑誌発表された「月蝕」(学園を出る直前の聖が思い出話と暗殺への不安を並行して語る、過去のおさらい的物語)、書下ろしの「丘をゆく船」(聖のひとり語りにも出てきた、黎二と麗子の、心を通わせるきっかけとなるエピソード)を後半に置き、前半の「水晶の夜、翡翠の朝」(ヨハンを主役に、学園をパニックに陥れる「笑いカワセミ」事件の顛末を語る)は、『朝日のようにさわやかに』(新潮文庫)所収、「麦の海に浮かぶ檻」(校長のモノローグで、大昔の学園で消えていった、鼎と要とタマラの悲劇的な物語を思い出す)は、恩田陸自身が他の作家の短編と合わせて編んだアンソロジー『謎の館へようこそ 黒』(講談社タイガ)所収、「睡蓮」(学園に来る前に理瀬が祖母や兄たちとの暮らしの途中で経験した茫漠とした不安)は『図書室の海』(新潮文庫)所収。
3年前に『薔薇の中の蛇』(あ、もう講談社文庫になっている)が刊行されたときに、treeという読書サイトに、三宅香帆さんが丁寧な理瀬シリーズガイドを書いてくれていて、当時自分の感想文をまとめたときに(ここ)とても参考になったのだが、『夜明けの花園』刊行にあたって、アップデートされたページがこちら。
恩田陸の「水野理瀬」シリーズ
『三月は深き紅の淵を』(1997年、短編)
『麦の海に沈む果実』(2000年、長編)
『黒と茶の幻想』(2001年、長編上下巻)憂里について、学園とは関係のない同級生たちが語るので、理瀬シリーズとしては傍系
『黄昏の百合の骨』(2004年、長編)
『薔薇のなかの蛇』(2021年、長編)
そこに、麦の海の中にある謎めいた学園に流れ着いた学生たちのエピソードが『夜明けの花園』で一気に仲間入り。誰が「ゆりかご」、誰が「養成所」、誰が「墓場」、誰が「療養所」…。校長のお茶会は誰にとっての何なのか。様々な時代の、様々な子どもたちのエピソードが、全貌の見えない学園の歴史に、少しずつ彩りを加えていく。暗い彩りが多いけれど。
今回も、カバーだけでなく各章に北見隆のイラストレーションが使われ、世界観が統一された感じ。
また、少しずつ理瀬シリーズ(外伝でも)を少しずつ発表してくれると嬉しいなあ。
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