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『ふしぎ駄菓子屋銭天堂18』(廣嶋玲子・jyajya)(毎日読書メモ(464))

昨年9月に刊行された銭天堂シリーズ最新刊、廣嶋玲子・jyajya『ふしぎ駄菓子屋銭天堂18』(偕成社)、図書館で順番が回ってきたので早速読んだ。
平和な巻。敵役の六条教授が潜伏中で、目に見えるちょっかいを出してこないので(でも別に打倒紅子をあきらめた訳ではないらしい、という伏線は一応引いてある)、今回は、銭天堂の中で、駄菓子の製作に従事してくれている金のまねき猫たちに、自分一人でお菓子を作って売り歩いていた行商時代の思い出話をする、という趣向で、閑話休題の巻だね、という風情。

以前の巻でも、親が紅子から買った駄菓子の効果が子どもの代まで持続している話などがあったし、親どころか祖父が紅子から買った商品の恩恵を孫が受けているエピソードもあり、紅子は何年前から駄菓子屋をやっていたんだよ、という感じだったが、六条教授が調べた文献では(16巻参照)室町時代に既に紅子は跋扈していたらしい、ということまでわかっていて、この巻で紅子がまねき猫さんたちに語る昔話も、「妖刀糖」が戦国時代、「舌鼓」が江戸時代初期、「写し柿」が江戸時代中期、「夢あめ」が大正時代、「育て手」が昭和の中ごろ、「景気ケーキ」がバブル時代のエピソード、そしてその後、紅子が黒猫の墨丸と出会って定住を決意し、迷い家不動産で、人に見つかりにくい場所に建つ家を斡旋してもらって銭天堂を開業するまでの思い出話。
ゆるいけど破綻のない時代考証、昔も今も人の欲望はきりがなく、紅子の注意も聞かず、魅惑の菓子をむさぼり食べた人はひどいしっぺ返しにあうし、自分のためというよりはむしろ誰かのためにお菓子を入手した人は、賢明にふるまい、それなりの幸福を手に入れている。「写し柿」の力で人気役者の似顔絵をうまく描けるようになった娘が、その役者に寄り添う自分を絵に描きこんでしまったら、自分が絵の中に引き込まれてしまって出てこられなっくなった、というバッドエンドはいかにも銭天堂らしいホラー結末だが、あとのお客さまたちは、お菓子の効果がなくなっても、それでささやかな幸福を得ている。
陽だまりのような、ほっこり巻。ストーリーが展開しない番外編的だけれど、これはこれで楽しい。また来月くらいに新刊が出ると思うけれど、六条教授はどんな反撃を?? 刮目して待て!、ってところでしょうか。

過去の感想:1巻 2巻 3巻 4巻 5巻 6巻 7巻 8巻 9巻 10巻 11巻 12巻 13巻 14巻 15巻 16巻 17巻

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