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『ふしぎ駄菓子屋銭天堂17』(廣嶋玲子・jyajya)(毎日読書メモ(439))

廣嶋玲子・jyajya『ふしぎ駄菓子屋銭天堂』(偕成社)今年の4月に刊行された17巻読了。ここ10巻くらい、図書館で予約すると即日届いていたが、新しい方から2番目の本(かつ最新刊は先々月出たばかり)なので、予約が結構いっぱい入っていてしばらく待った。
16巻の終わりで、紅子の商品デジタルトの効果で手痛い被害を受けた六条教授、態勢立て直しにちょっと時間がかかっているが、ただ黙って耐えている訳ではなく、強力な手下を使って、紅子への反撃をちゃくちゃくと進めている。いや、進めようとしているが、何故かうまくいかない。紅子はもう六条教授の息の根を止めたも同然と思って油断している筈なのに、何故、というのがこの巻の大筋だが、最後に種明かしをしてくれたのは久々の登場の怪童(よどみ側の怪人)。もう、紅子に手出しは出来ないよどみだが、怪童は一応ニュートラルな立場、ということで、銭天堂の商品を摂取した六条教授にもアプローチは出来るらしい。引きさきイカ効果で、たたりめ堂の商品を使った人は銭天堂の商品を使った人と接触することも出来なくなってしまっているという、引きさきイカの効果のすごさをここで改めて感じさせてくれる。
六条教授に起死回生の手はあるのか? なくていいけどさー。

毎巻毎巻、銭天堂のお菓子が魅力的過ぎて、お菓子に付いている説明書きをきちんと読まない幸運のお客さまたちの愚かさに呆れてきたが、強い意思を持って、お菓子を食べちゃう前に説明書きを読むだけの賢明さを持てるかも、その人の運なのか、と今更ながらに思う。

「とりあげもち」を使って、一旦年下の従弟にあげた木馬を取り返してきた聖は、これまでの銭天堂エピソードの中でも屈指のバッドエンドを迎えている(これっていつか回収エピソードがあるのだろうか。あまりにも可哀想すぎる)(しかも現在行方不明中)。次の「ルールキャラメル」は、珍しく、ちゃんと説明書きを読み、銭天堂の商品から最大の効果を得られたエピソード。まぁこんな心温まるエピシードばかりだと逆に本として面白くないってことになっちゃうか。「断捨離だんご」も、結構なバッドエンド。幸運のお客さまじゃなくて不幸のお客さまになっちゃったが、それは物語の最初から見えていた展開だった。全然幸運そうじゃない。「おおらか落花生」は、説明書きを読まず、副作用が出てしまった物語だが、幸運のお客さまは幸せになっている、救いのある物語。この巻は緩急が激しい。「いた板チョコ」は、やはり説明書きを読まずに副作用的効果が出てしまい、人助けは出来たが自分は生命を落としそうになるという教訓話。お客さまは自ら板チョコの効果を放棄して、元の状態に戻るが、最後に少しだけ救いが。そして「スカウトまんじゅう」は、六条教授の手下となっている蔵木が銭天堂で買って、栄光と挫折を経験することとなった(きっかけが別のお客さまが銭天堂で買った「星柿」だったというのが皮肉、というか、魔法に魔法を掛け合わせると負の効果が出てしまうものなのかもしれない)お菓子だったが、この商品の強力な効果が、六条教授に利用されてしまうことになるという導入。そして、最後に怪童による謎解きがあって、次巻に続く。ひとつひとつのお菓子の造形も独特だが、それらをかけあわせ、紅子と対抗勢力の闘いに持っていく構成力もさえわたっている。
まぁ、あまりにこねくり回しすぎて、ちょっとわかりにくい気もするんだけど、想定される読者層(小学校中学年から)が、ワクワクしながら読み、何回も繰り返し読むのであれば、結構腑に落ちるってことかな。
折り込みで「魅惑のふしぎ駄菓子を一挙ご紹介!」という1枚紙の一覧表が付録に入っている。色んな商品があったねー、と懐かしく眺める。
18巻は予約してもしばらく回ってきそうにないので、しばらくのお別れ。また会いましょう。


過去の感想:1巻 2巻 3巻 4巻 5巻 6巻 7巻 8巻 9巻 10巻 11巻 12巻 13巻 14巻 15巻 16巻


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