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毎日読書メモ(51)『双頭の船』(池澤夏樹)

池澤夏樹『双頭の船』(新潮文庫)。東日本大震災からの救済をモチーフにした、池澤夏樹のそれまでのイメージとはちょっと違った印象の大作だった。

青年が旅立ったときはただの小さいフェリーだった船は、震災の地で謎の拡張をとげていく。多くの人が、動物がゆきかい、船は人々を救済する大きなコミュニティになっていく。受容し、ゆるして、再生する人々。いとうせいこう『想像ラジオ』なども思い起こさせられる、ポスト大震災文学のひとつのかたち。(2016年2月)

池澤夏樹は現在朝日新聞で『また会う日まで』を連載中。作者の父福永武彦が実名で出てくる、武彦の伯父で海軍軍人かつ天文学者かつキリスト教徒である秋吉利雄の生涯を本人のモノローグで綴る、事実に即した伝記小説。物語は淡々と進むが、キリスト教を信仰することと軍人であることはどのように彼の中で両立するのか、ということを考えさせられる。また、戦前のエリートというのがどういう人だったのか、といったことも。

池澤夏樹の小説では『マシアス・ギリの失脚』、『すばらしい新世界』、『氷山の南』などが好きだったな。池澤夏樹についてはまた改めて考えてみたい。

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